集団的自衛権:懸念される自衛隊の「ブラックボックス化」
毎日新聞 2014年06月27日 19時47分(最終更新 06月27日 19時58分)
集団的自衛権の行使を容認する閣議決定の議論が大詰めを迎え、足並みをそろえるように特定秘密保護法の施行の準備が進む。憲法9条を空文化する閣議決定と秘密保護法施行が一緒になると、何が起こりうるのか。迫りつつある「自衛隊のブラックボックス化」の危険を探った。
◇イラク派遣差し止め訴訟 政府は「墨塗り」資料提出
自衛隊のイラク派遣から10年。「人道支援」という政府の説明とは大きく異なる派遣実態が明らかになってきた。
「ある書類」をご覧いただきたい。1枚は墨塗り、1枚は墨塗りが取り払われている。そこで明らかになっているのは「自衛隊が憲法違反をしていた事実」である。
最初から説明しよう。2003年3月、大量破壊兵器の査察受け入れを拒否していたイラクに対し、米国は英国などと開戦に踏み切った。ロシアや中国の反対を押し切る形だったが、小泉純一郎政権(当時)は米国を支持し、同年7月にイラク復興特別措置法(イラク特措法)を成立させた。「非戦闘地域」で「人道支援」を行うため、5年間で陸海空の隊員延べ1万人がイラクに派遣された。
<10・23(月) 米陸軍51 米海軍4 米空軍1 米軍属5 人数61>。書類に書かれた数字は、06年10月23〜29日に、クウェートのアリアルサレム空軍基地からイラクの首都バグダッドに航空自衛隊が空輸した米兵の数を示す「週間空輸実績」だ。
当時「自衛隊のイラク派遣は憲法違反」として派遣差し止めを求める訴訟が各地で起こされていた。05年以降、防衛省は、訴訟団に対し5回にわたって「墨塗り」の文書を出し続けた。だが、民主党への政権交代後の09年9月に全面開示された。それによると、06年7月から08年12月までに空輸した2万6384人のうち、米軍が1万7650人と3分の2も占めていた。