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「パーソナルデータ利活用に関する制度改正大綱」の主要論点

2014.07.01

「パーソナルデータの利活用に関する制度改正大綱」(以下パーソナルデータ大綱)がまとまった。6月24日にIT総合戦略本部で決定され、現在はすでにパブリックコメントにかけられている。

昨年6月に閣議決定された「世界最先端IT国家創造宣言」(いわゆる新IT戦略)で示された具体的な取組の中で、正しく筆頭に掲げられた「パーソナルデータの利用促進」を受け、内閣官房IT総合戦略室の下に「パーソナルデータに関する検討会」(宇賀克也座長=現在)が昨秋には設置され、昨年末には制度見直し方針がまとまった。

我が国における法制度整備としては、異例ともいえる迅速さ、内容の濃さ、そして原則として公開での議論によって進められてきた。特に、法制度の専門家と技術の専門家が、それぞれ具体的なケースを対象に、可能な限り議論の明瞭化を目指してきた試みは、世界的に見ても評価に値するものといえるだろう。

今後はパブリックコメントの集約、法案の作成という事務方のプロセスを経て、来年の通常国会に法改正案を提出する予定である。

全体の論点は多く、また議論も広範かつ複雑なため、簡単にまとめることは難しい。ここでは、いくつかの主要論点についての、現時点における整理を試みてみたい。

ビッグデータ大綱?パーソナルデータ大綱?

本件については、すでに新聞・テレビ等でも広く取り上げられており、Webメディアでもあちこちで扱われていることから、すでに見聞きしている方も多いだろう。しかしその名称は、ビッグデータ大綱と呼ばれたり、パーソナルデータ大綱と呼ばれたり、どうにも落ち着かない。

本稿では以下「パーソナルデータ大綱」として扱うが、とはいえ表現が揺れてしまうのも仕方がない、という事情も理解できる。そもそも今回の検討は、前述の通り、新IT戦略の中では「ビッグデータの利用を促進する」という目的と位置づけの中で、スタートしている。経緯を考えれば、ビッグデータ大綱と通称されるのも、自然な流れではある。

また、ビッグデータとパーソナルデータを、おぼろげなイメージで把握している場合、「両者は事実上同じものではないか」とも考えられるだろう。そういう意味では、より世間一般に普及している「ビッグデータ」という名称の方が相応しい、と考える向きが存在するのも、むべなるかな。

もちろん精緻に定義するのであれば、ビッグデータには、センサー技術を活用したInternet of Things(モノのインターネット)などによって収集されるデータも含まれる。この場合、当然ながら対象は人間とは限らないし、だとするとパーソナルデータとは峻別されるべきだろう。

ただ実際には、ヒトとモノのデータは、それぞれ混ざった状態で扱われることが少なくない。また、両者を混ぜ合わせることによって、パーソナルデータがより明確に個人情報に近づいていく可能性があることは、そもそも一連の検討の中でも明らかになっている。

表現の揺れという一見回りくどい話を最初に触れたのは、今回の対象であるパーソナルデータが、ことほどさように「変幻自在な代物」である、という理解が必要だからだ。そして変幻自在の対象に網をかけることの難しさが、一連の検討とその成果からも、うかがい知れる。


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クロサカタツヤ(くろさか・たつや)
株式会社企(くわだて)代表。慶應義塾大学・大学院(政策・メディア研究科)在学中からインターネットビジネスの企画設計を手がける。三菱総合研究所にて情報通信事業のコンサルティング、次世代技術推進、国内外の政策調査・推進プロジェクトに従事。2007年1月に独立し、戦略立案・事業設計を中心としたコンサルティングや、経営戦略・資本政策・ M&Aなどのアドバイス、また政府系プロジェクトの支援等を提供している。

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