国税庁は1日、相続税や贈与税の計算基準となる2014年分の路線価(1月1日時点)を公表した。全国平均は前年より0・7%下落したものの、下げ幅は縮小。金融緩和で投資資金が集まる都心で再開発が続くなど、リーマン・ショック前の2008年以来6年ぶりに東京、大阪、愛知がそろって上昇した。東日本大震災後、住宅需要が高まる福島でも22年ぶりに上昇に転じた。

 上昇は前年の2県から8都府県に増え、首都圏の神奈川、千葉、埼玉にも広がった。上げ幅トップは、昨年に続いて震災の復興事業が続く宮城の2・4%、次いで東京の1・8%。20年に五輪が開催される東京では、会場となる湾岸エリアでマンションの建設が相次ぎ、地価上昇につながっている。横ばいの沖縄と下落の38道府県もすべて下げ幅が小さくなり、底入れ感が全国に広がっている。

 福島は、バブル経済が終わった1992年以来となる0・8%の上昇。いわき、福島両市などでは、東京電力福島第一原発の周辺からの避難者や復興に携わる人々への住宅供給が追いついていない。原発周辺の土地は評価が難しいとして、今年も路線価は「ゼロ」とされた。

 都道府県庁所在都市の最高路線価では、上昇が前年の7から18に増えた。上げ幅トップは、駅前開発が続く名古屋の10・0%。商業地の需要が高い札幌(3・9%)や福岡(2・4%)、来春に北陸新幹線の開業を控える金沢(5・9%)も上昇した。下落は前年の32から21に減り、下げ幅は鳥取の7・7%が最も大きかった。路線価日本一は、29年連続で東京・銀座の文具店「鳩居(きゅうきょ)堂」前で1平方メートルあたり2360万円。前年より9・7%上昇した。

 みずほ信託銀行は「大都市の中心商業地が地価回復をリードしているが、全国的に一気に上昇に転じるほどの勢いはまだ感じられない」と分析している。

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 近畿6府県を所管する大阪国税局によると、昨年は0・8%の下落だった大阪が上昇に転じた要因は、再開発エリアの活況だ。税務署ごとの最高路線価の上昇率では、今春本格オープンした「あべのハルカス」と昨年開業したJR大阪駅北側の「グランフロント大阪」周辺がそれぞれ全国2位と3位に。都心部ではマンション需要も堅調だ。一方、6府県の平均は0・4%下落だった。(水沢健一、釆沢嘉高)

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 静岡を含む東海4県では愛知県が1・2%上がり、2年連続で上昇したものの、路線価の平均は0・2%下がった。愛知県の上昇率は宮城県、東京都に次いで3番目に大きかった。静岡、岐阜、三重の3県はいずれも下がり、下落率は静岡県が1・1%、岐阜県が1・8%、三重県が1・9%だった。

 都道府県庁の所在地のうち、最高路線価の上昇率が全国1位の10%だった名古屋市中村区名駅1丁目の名駅通りは、1平方メートルあたり660万円。東海4県の路線価では10年連続のトップで、3年連続で上昇した。

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 九州・山口の8県の路線価は前年より下がったものの、下落幅はいずれも縮小した。沖縄県は、現在の評価方法になった2010年以降初めて、下落から横ばいに持ち直した。日本政策投資銀行九州支店の青木崇企画調査課長は「昨年からの大幅な金融緩和で、投資対象となる不動産への期待感が高まり、下落に歯止めをかけている」とみる。

 福岡市内では、博多区博多駅前2丁目の駅前通りが九州新幹線が全線開通した11年から4年連続で上がった。今年は254万円で、10・4%増。上げ幅は08年のリーマン・ショック後では初の10%超となった。市内で最高路線価の中央区天神2丁目の渡辺通りも、横ばいから3年ぶりに上昇に転じ、2・4%増の475万円だった。

 県庁所在地の最高路線価ではほかに、那覇市久茂地3丁目の国際通りが58万円で5・5%の上昇。上昇率は全国7番目の高さだった。鹿児島市東千石町の天文館電車通りは2年連続の横ばい。ほか6県では下落が続いた。北九州市の最高地点は小倉北区京町3丁目の平和通りで、前年比3・8%減の50万円。下落幅が0・1ポイント広がった。

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 〈路線価〉 全国の主な道路に面した土地1平方メートルあたりの評価額(1月1日時点)で、相続税や贈与税を計算する基準となる。国土交通省が毎年3月に公表する公示地価(同)の8割を目安に、売買価格や不動産鑑定士の意見などを参考に国税庁が定める。