目次 › 2014年6月30日放送の18時台の特集/バックナンバー
同じ仕事なのに…「待遇差別」を問う
同じ会社に勤め、同じ内容の仕事をしているAさんとBさん。
しかし、Aさんの方が賃金が高く、Bさんには各種手当ても支払われません。
その理由は、Aさんが正社員でBさんが非正規社員だから、というものでした。
このような雇用の形による「労働条件の不合理な差別」を禁じるのが、去年施行された労働契約法20条です。
賃金だけでなく、手当てや福利厚生での差別も禁止されていて、非正規社員の待遇を改善するための「切り札」として注目されています。
檞恵之(くぬぎよしゆき)さん。日本郵便の期間雇用社員です。
アルバイトとして働き始め、契約更新を繰り返し、配達業務一筋、16年のベテランです。
【日本郵便 期間雇用社員・檞恵之さん】
「配達先のお客さんからのありがとうが心地よくて、ずっとこの仕事をしています」
檞さんの時給は1530円。
配達の仕事は管理職の指揮のもと、正社員も期間雇用社員も仕事に区別はないといいます。
しかし期間雇用社員は、正社員に支給されるさまざまな手当てがなかったり、減額されたりしています。
年末年始手当や外務業務手当、住宅手当などが支給されません。
ボーナスも1か月の平均賃金の3割に抑えられています。
早朝や深夜勤務手当も減額されています。
【檞恵之さん】
「特筆すべきは年末年始手当。年末1日プラス4000円、年明けプラス5000円がつく。年末年始、郵便屋は書き入れ時。かなり忙しい。皆さん、死に物狂いで働いています。その差はどこから来るのか、私にもわからない」
こうした待遇の違いが、労働契約法20条が禁じた「不合理な差別」に当たるとして、裁判に訴えることにしました。
2年分の各種手当の差額187万円を請求します。
この裁判を、ともに働く正社員の労働組合員が積極的に支援しています。
【郵政産業労働者ユニオン・松岡副委員長】
「社員も非正規も同じ仕事を毎日やっている。職務の違いって、まずない。雇用形態が違うんだから労働条件の違いは仕方ないというのが主流だった。しかし労働契約法の考え方は雇用形態の違いによって格差・差別は認められるということでなくて、不合理か合理か、それぞれ判断していこうという法律」
日本郵便の正社員は20万人、期間雇用社員は19万人です。
当時の亀井静香郵政改革担当大臣が「非正規10万人を正規登用する」との考えを示しましたが、1万5000人にとどまっています。
【郵政産業労働者ユニオン・松岡副委員長】
「非正規比率がこれだけ高いとこれ以上期間社員拡大できない。そうすると次に手をつけてきたのは正社員の二分化。郵政版地域限定社員、そういうのをつくって正社員で年収がぐっと低いのを作った。格差を放っておくと正社員の労働条件もどんどん悪くなっていくということなので、こういう流れを断ち切るということでこの裁判の意義は大きい」
同様に労働契約法20条を使って、差別待遇の是正を求める女性たちがいます。
地下鉄・東京メトロの売店で働く契約社員です。
早番と遅番の2交代制で、ひとりで売店を取り仕切る販売員。
商品の発注から陳列、接客と神経を使う重労働です。
正社員も契約社員も業務と責任の重さは同じだと訴えます。
【メトロコマース 契約社員・後呂良子さん】
「ひとりで全部ですよ。ものすごい責任感があるわけですよ。予想外のことが起こりますから。生身の人間相手ですから。予想外のことがあって、それを全部ひとりで引き受けてひとりで処理しないといけないわけですから、ほんと緊張しますよ」
契約社員の時給は1000円前後。
月曜から土曜まで週40時間のフルタイム勤務でも、手取りは12〜14万円です。
【後呂良子さん】
「ギリギリですよ。生活保護ギリギリ。節約するところはない。私たち贅沢したいなんて思ったこともないんですね。贅沢したいわけじゃない、だけどもせめて1か月安心できる給料にしてくれと。毎回言う、団体交渉で。でもだんまり。黙ってますよね」
売店を運営する東京メトロの子会社メトロコマースは「正社員と契約社員で担当する売店が異なり、業務量・業務密度・責任は全く異なる」と主張します。
一方、原告たちは早番と遅番を契約社員同士が組むことも、正社員と契約社員が組むこともあり、業務は同じだと訴えます。
契約社員の処遇は不合理な差別にあたるとして、過去3年分の正社員との賃金の差額900万円以上をそれぞれ請求しています。
【後呂良子さん】
「もう我慢も限界。我慢もしますけど、してきましたけど、限界なんです。生理的にね、限界です。そういう差別を続けることが人間のそういうものを、いかに人格を壊し、尊厳を奪い、みんなの問題だと思います」
労働契約法20条ができる前から、正社員と非正規社員の不合理な賃金差別を「公序良俗に反する」として賠償を命じた判例があります。
長野県の自動車部品工場「丸子警報器」の非正規社員が賃金差別を訴えた裁判で、長野地裁上田支部は「使用者の裁量は認めなければならないが、同じ仕事をする正社員の賃金の8割以下なら違法」との判断を示しました。
【丸子警報器裁判を担当した今野久子弁護士】
「パートで差別を禁止する規定、それもなかったんです、当時。でも裁判官は現場に来てくれて、仕事を見て、全く同じ仕事をしていると確認をして、人はその労働に対し等しく報われなければならないと、同じ仕事をしてたら同じように報酬もらわなくちゃいけないんだと。全国の労働者が闘いを見えないところで繋いできているということを今思っています」
6月30日、檞さんたち日本郵便の期間雇用社員9人が提訴しました。
全国の非正規社員は1970万人、37.9%に及びます。
【日本郵便 期間雇用社員・檞恵之さん】
「社員あっての企業なので、ひとりひとりがどうやって誇りを持てるか、そこだと思う。そのためにも今回、闘いに立ち上がらさせていただいた」
【日本郵便 期間雇用社員・岡崎徹さん】
「世の中がこの提起を見て見ぬふりをするのか、未来に向かっての根深い問題として社会が関心を持ってくれるのか。こういう提起がどんどん増えていってもらいたい」
日本郵便は「訴状が届いたら対応を検討する」とコメントしています。
しかし、Aさんの方が賃金が高く、Bさんには各種手当ても支払われません。
その理由は、Aさんが正社員でBさんが非正規社員だから、というものでした。
このような雇用の形による「労働条件の不合理な差別」を禁じるのが、去年施行された労働契約法20条です。
賃金だけでなく、手当てや福利厚生での差別も禁止されていて、非正規社員の待遇を改善するための「切り札」として注目されています。
檞恵之(くぬぎよしゆき)さん。日本郵便の期間雇用社員です。
アルバイトとして働き始め、契約更新を繰り返し、配達業務一筋、16年のベテランです。
【日本郵便 期間雇用社員・檞恵之さん】
「配達先のお客さんからのありがとうが心地よくて、ずっとこの仕事をしています」
檞さんの時給は1530円。
配達の仕事は管理職の指揮のもと、正社員も期間雇用社員も仕事に区別はないといいます。
しかし期間雇用社員は、正社員に支給されるさまざまな手当てがなかったり、減額されたりしています。
年末年始手当や外務業務手当、住宅手当などが支給されません。
ボーナスも1か月の平均賃金の3割に抑えられています。
早朝や深夜勤務手当も減額されています。
【檞恵之さん】
「特筆すべきは年末年始手当。年末1日プラス4000円、年明けプラス5000円がつく。年末年始、郵便屋は書き入れ時。かなり忙しい。皆さん、死に物狂いで働いています。その差はどこから来るのか、私にもわからない」
こうした待遇の違いが、労働契約法20条が禁じた「不合理な差別」に当たるとして、裁判に訴えることにしました。
2年分の各種手当の差額187万円を請求します。
この裁判を、ともに働く正社員の労働組合員が積極的に支援しています。
【郵政産業労働者ユニオン・松岡副委員長】
「社員も非正規も同じ仕事を毎日やっている。職務の違いって、まずない。雇用形態が違うんだから労働条件の違いは仕方ないというのが主流だった。しかし労働契約法の考え方は雇用形態の違いによって格差・差別は認められるということでなくて、不合理か合理か、それぞれ判断していこうという法律」
日本郵便の正社員は20万人、期間雇用社員は19万人です。
当時の亀井静香郵政改革担当大臣が「非正規10万人を正規登用する」との考えを示しましたが、1万5000人にとどまっています。
【郵政産業労働者ユニオン・松岡副委員長】
「非正規比率がこれだけ高いとこれ以上期間社員拡大できない。そうすると次に手をつけてきたのは正社員の二分化。郵政版地域限定社員、そういうのをつくって正社員で年収がぐっと低いのを作った。格差を放っておくと正社員の労働条件もどんどん悪くなっていくということなので、こういう流れを断ち切るということでこの裁判の意義は大きい」
同様に労働契約法20条を使って、差別待遇の是正を求める女性たちがいます。
地下鉄・東京メトロの売店で働く契約社員です。
早番と遅番の2交代制で、ひとりで売店を取り仕切る販売員。
商品の発注から陳列、接客と神経を使う重労働です。
正社員も契約社員も業務と責任の重さは同じだと訴えます。
【メトロコマース 契約社員・後呂良子さん】
「ひとりで全部ですよ。ものすごい責任感があるわけですよ。予想外のことが起こりますから。生身の人間相手ですから。予想外のことがあって、それを全部ひとりで引き受けてひとりで処理しないといけないわけですから、ほんと緊張しますよ」
契約社員の時給は1000円前後。
月曜から土曜まで週40時間のフルタイム勤務でも、手取りは12〜14万円です。
【後呂良子さん】
「ギリギリですよ。生活保護ギリギリ。節約するところはない。私たち贅沢したいなんて思ったこともないんですね。贅沢したいわけじゃない、だけどもせめて1か月安心できる給料にしてくれと。毎回言う、団体交渉で。でもだんまり。黙ってますよね」
売店を運営する東京メトロの子会社メトロコマースは「正社員と契約社員で担当する売店が異なり、業務量・業務密度・責任は全く異なる」と主張します。
一方、原告たちは早番と遅番を契約社員同士が組むことも、正社員と契約社員が組むこともあり、業務は同じだと訴えます。
契約社員の処遇は不合理な差別にあたるとして、過去3年分の正社員との賃金の差額900万円以上をそれぞれ請求しています。
【後呂良子さん】
「もう我慢も限界。我慢もしますけど、してきましたけど、限界なんです。生理的にね、限界です。そういう差別を続けることが人間のそういうものを、いかに人格を壊し、尊厳を奪い、みんなの問題だと思います」
労働契約法20条ができる前から、正社員と非正規社員の不合理な賃金差別を「公序良俗に反する」として賠償を命じた判例があります。
長野県の自動車部品工場「丸子警報器」の非正規社員が賃金差別を訴えた裁判で、長野地裁上田支部は「使用者の裁量は認めなければならないが、同じ仕事をする正社員の賃金の8割以下なら違法」との判断を示しました。
【丸子警報器裁判を担当した今野久子弁護士】
「パートで差別を禁止する規定、それもなかったんです、当時。でも裁判官は現場に来てくれて、仕事を見て、全く同じ仕事をしていると確認をして、人はその労働に対し等しく報われなければならないと、同じ仕事をしてたら同じように報酬もらわなくちゃいけないんだと。全国の労働者が闘いを見えないところで繋いできているということを今思っています」
6月30日、檞さんたち日本郵便の期間雇用社員9人が提訴しました。
全国の非正規社員は1970万人、37.9%に及びます。
【日本郵便 期間雇用社員・檞恵之さん】
「社員あっての企業なので、ひとりひとりがどうやって誇りを持てるか、そこだと思う。そのためにも今回、闘いに立ち上がらさせていただいた」
【日本郵便 期間雇用社員・岡崎徹さん】
「世の中がこの提起を見て見ぬふりをするのか、未来に向かっての根深い問題として社会が関心を持ってくれるのか。こういう提起がどんどん増えていってもらいたい」
日本郵便は「訴状が届いたら対応を検討する」とコメントしています。
2014年6月30日放送