宇宙は誕生初期に急膨張したとする「インフレーション理論」を観測で裏付ける研究が注目されている。太古の時空のゆがみを伝える「原始重力波」をとらえれば証拠となり、ノーベル賞級の大発見。米国などの研究チームが証拠を見つけたと発表し物理学界は一時沸いたが、確証を得るにはさらに高精度の観測が必要だ。(黒田悠希)
宇宙は138億年前の誕生直後、超高温で超高密度の火の玉のような状態になり、爆発的に膨張する「ビッグバン」が起きた。その後は冷えて膨張も緩やかになり、現在の姿になった。
ビッグバンがなぜ起きたのかを説明したのがインフレーション理論だ。佐藤勝彦東大名誉教授と米マサチューセッツ工科大のアラン・グース教授が1980年代初めに、それぞれ独自に提唱した。
理論によると、生まれたばかりの宇宙は原子よりも微小だったが、誕生からおよそ10の36乗分の1秒後、微生物が瞬時に銀河の大きさになるほどの急膨張が起きた。空間が超光速で拡大するとてつもない膨張で、物価の上昇を指す経済用語から「インフレーション」と名付けられた。
この急膨張で空間の性質が大きく変わり、潜んでいた熱が放出されてビッグバンが起きたとされる。インフレーションはビッグバン理論の矛盾点を解決し、宇宙の標準理論になっているが、光が届かない暗黒時代の原始宇宙で起きたため、観測できないことが大きな課題だった。
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