快進撃という言葉がふさわしい。サッカーW杯で、コスタリカがきのう、ギリシャを破って初の8強入りを決めた。優勝経験のある強豪を堅守でしのぎ、1次リーグを1位で突破した勢いが続く▼前評判は高くなかった。日本代表は大会前の強化試合で3―1で勝っていた。日本がもしギリシャの代わりに決勝トーナメントに進んでいたら、と無駄な夢想をした▼この中米の小国は安定した民主主義国であり、なにより憲法によって常備軍を持たない「非武装中立」を保ってきたことで知られる。9条を擁する日本との近しさを感じる人もおられよう。この国で大きな役割を果たしていると思われるのが、最高裁のなかにある憲法法廷だ▼国の隅々にまで目を注ぐ。たとえば、学校近くの川にゴミがたくさん捨てられていると子どもが訴えた。法廷は権利の侵害と判断し、町にゴミの整理を命じた。手続きが簡単で、多くの争いが持ち込まれる▼11年前に参院憲法調査会が視察した時、「法廷長」がそんな説明をしている。米国のイラク侵攻に政府が支持を表明した際には、この法廷が違憲の判決を出して大いに注目された。行政の仕事に司法がたがをはめる。三権の相互抑制がきいている▼翻って日本政治の現状は、権力分立など眼中にないかのようだ。国会も無視したまま、しゃにむに集団的自衛権をめぐる憲法解釈をひっくり返そうとしている。日本のたがを勝手にはずしておいて、この政権がしっぺ返しを食わないとは思えない。