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【社会】

司法取引の導入明記 法制審部会最終案 通信傍受拡大も

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 捜査と公判を見直す法制審議会の「新時代の刑事司法制度特別部会」が三十日開かれ、法務省が最終案を示した。取り調べの録音・録画(可視化)を義務付ける範囲を裁判員裁判対象事件と検察の独自捜査事件に限る一方、司法取引の導入や通信傍受の拡大など新たな捜査手法を明記。異論は一部にとどまり、刑事司法の姿を大きく変える制度の導入が確実となった。

 法制審は最終案を基に法相に答申し、法務省は来年の通常国会で刑事訴訟法などの改正案提出を目指す。

 最終案が録音・録画の義務付け対象にしたのは全起訴事件の約3%にとどまる。これ以外の事件については「運用で可能な限り幅広く録音・録画されることを期待する」と付帯事項に記載した。

 冤罪(えんざい)被害に遭った厚生労働次官の村木厚子委員は、対象が狭いことにあらためて懸念を表明しつつ「『期待』でなく制度として盛り込まれれば」と条件付きで賛同した。

 容疑を認めるまで保釈せず、冤罪の温床とされる「人質司法」の解消策として、居住先の指定など条件を課す代わりに、身柄拘束せずに捜査をする「中間処分」の創設も検討したが見送った。

 新導入される見通しの司法取引のうち「協議・合意制度」は、他人の犯罪で捜査協力した容疑者や被告に、検察が起訴の見送りなどの見返りを与える仕組み。殺人事件などは対象から外し、汚職や脱税、談合などの経済犯罪、銃器・薬物犯罪などに限定した。

 検察官が刑事責任を追及しないと約束し、法廷で他人の犯罪を証言させる「刑事免責制度」も盛り込まれた。自分の犯罪の重要事実を明かした被告の刑を軽くする制度は、反対論が強く外れた。

 法務省が四月に示した試案で殺人や放火、窃盗、詐欺など十罪種を新たに加えるとした通信傍受の拡大は、最終案では出資法を外し九罪種とした。NTTなど通信事業者の立ち会いは不要とした。

 <新時代の刑事司法制度特別部会> 村木厚子さんの冤罪事件をきっかけに、当時の江田五月法相が2011年5月、供述調書に依存した捜査や公判を見直し、取り調べの録音・録画の法制化を検討するよう法制審議会に諮問し、翌月に設置された。裁判所、日弁連、検察、警察の代表者、有識者ら約40人の委員、幹事が、3年にわたり録音・録画の対象事件や司法取引などを議論してきた。

 

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