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【コラム】

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 政治や権力を風刺する種類の「お笑い」は最近、お目にかからぬ。戦後間もなくのラジオ番組「日曜娯楽版」。三木鶏郎(とりろう)さんの風刺コントは鋭い▼一九四七年から五年間、NHKで放送され大人気だったという。五〇年に警察予備隊、五二年に保安隊が発足。戦争放棄から再軍備に「逆コース」する時代をさんざんからかっている▼A大臣「A大臣から答弁します。B君が軍隊ではないというから軍隊ではありません」B大臣「B大臣から答弁します。C君が軍隊ではないというから軍隊ではない」C大臣「C大臣から答弁、A君が軍隊でないというから…」−。政治家の無責任さをちゃかす▼妻「あなたとうとう来ましたよ」夫「えっ来たか、いよいよ、トホホホ…。おいなんだ、これは税務署の督促状じゃないか」妻「ええ、そうですよ」夫「ヤレヤレ、おれはまた召集令状かと思った」−。戦争の記憶が残る当時、このギャグは生々しく聞こえたに違いない▼A「再軍備は陸軍三十万、飛行機一千五百」B「となると将来は、うんと忙しくなるぞ」A「軍需工場で」B「いいえ、尋ね人の係りです」−。こうなると、もはや笑えなかったかもしれない▼集団的自衛権の行使容認が一日閣議決定される。一連のコントが六十年後にもしっくりくるとは三木さんも思わなかっただろう。今でも笑える。もちろん引きつった笑いだが。

 

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