「宇宙開発の新潮流」

ロシア、宇宙で「脱ウクライナ」目指す

純国産基幹ロケット「アンガラ」初号機打ち上げへ

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2014年7月1日(火)

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 脱ウクライナ依存成るか――ロシア宇宙局(ロスコスモス)が、ロシア国内のプレセツク宇宙基地からの次世代基幹ロケット「アンガラ」初号機打ち上げに挑んでいる。当初予定では6月27日に打ち上げるはずだったが、打ち上げ直前に大きなトラブル(詳細は非公開)が発生。機体は整備棟に戻り、打ち上げは無期限延期となった。

 アンガラは現行の「プロトン」に代わる新世代の衛星打ち上げ用ロケット。モジュール構成を採用し、中核となる第1段やブースター、2段から上の上段を柔軟に組み替えることで、地球低軌道に2トン〜40.5トンまでの幅広い打ち上げ需要に対応する能力を持つ。

プレセツク宇宙基地の発射台に据え付けられるアンガラロケット(ロシア国防省)

 アンガラの開発はロシアにとって、旧ソ連時代の遺産を一掃するという大きな意味がある。1991年にソ連が崩壊した時、ソ連航空宇宙産業の一部はウクライナに分割された。しかし、ロシアはその後も旧ソ連時代に開発されたハードウエアを使い続けたため、ウクライナ製の部品もそのまま使われてきた。

 ロシアは、旧ソ連崩壊後、なんとかしてロシア一国で宇宙活動を展開できる体制を作ろうとして、20年をかけて徐々にウクライナ製部品への依存を減らしてきた。そしてついにロシア製の部品のみで構成されたロケットの開発に漕ぎ着けたのがアンガラなのだ。ロシアとウクライナの関係が緊迫する今、アンガラの成否は今後のロシア宇宙開発の帰趨に直結する重大事である。

小さな第1段を束ねて柔軟な打ち上げ能力を獲得

 アンガラは、「ユニバーサル・ロケット・モジュール(URM)」という比較的小型の第1段兼ブースターを必要に応じて1〜7本束ねるモジュール構成を採用している。第2段も必要に応じて能力の高いものに交換可能で、第3段を追加することもできる。

 モジュール化された各段を必要に応じて組み替えることで、単一の設計で幅広い打ち上げ能力を実現するわけだ。このやり方は米ボーイング社の「デルタ4」、ロッキード・マーチン社の「アトラスV」、中国が開発中の「長征5型」などの最新ロケットや、米スペースXも採用している。スペースXでは、現在「ファルコン9」ロケットの第1段を3基束ねる大型ロケット「ファルコン・ヘビー」を開発中だ。

アンガラの各種バージョン。左が最小構成のアンガラ1。第2段も小型の1.1という構成。この他第2段を大型化した1.2という構成もある。中央がURMを3基使用するアンガラ3、右が5基使用のアンガラ5(ROSCOSMOS)

 アンガラのURMはロケットエンジンとして、「RD-170」から派生した「RD-191」を使用する。RD-170は本来はソ連末期に開発された巨大ロケット「エネルギヤ」のブースター向けの、4つの燃焼室とノズルを持つ推力806tfもある強力かつ高性能なエンジンだ。

 ちなみに、このRD-170からはまず、燃焼室を2つに減らした推力400tf級のエンジン「RD-180」が派生し、アメリカの「アトラスV」ロケット第1段に使われた。ウクライナで“困った”。米ロの宇宙での共依存(2014年5月26日)で解説したように、RD-180はウクライナ危機を巡る米ロ関係の悪化に伴い、今後ともアメリカが使用し続けることができるか微妙な情勢になっている。


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