(2014年6月30日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
オーストラリアのトニー・アボット首相は、就任以来、支持率の急落と敵対的な上院のせいで祝うべきことがほとんどなかった。だが今週、昨年9月の総選挙で当選した上院議員がようやく席に着くことになり、首相は主要選挙公約の1つである炭素税廃止を実現することが確実視されている。
「もういい加減、オーストラリアの家庭がこの有毒な課税から解放されてもいい頃だ」。アボット首相は最近、月額6万オーストラリアドルの炭素税を支払っている冷凍庫メーカーを視察した際にこう宣言した。
環境保護より経済成長を優先
昨年9月に就任したトニー・アボット首相〔AFPBB News〕
アボット首相率いる自由党・国民党の連立政権は、炭素税が電力料金を引き上げ、600億オーストラリアドル規模の同国石炭産業を危険にさらしていると非難している。環境保護よりも経済成長を優先するというアボット首相の公約は、幻滅した国民の共感を呼んだ。
今週まで野党の労働党と緑の党が優勢だった上院は、これまで炭素税廃止法案を阻止してきた。
だが、鉱業界の大物のクライブ・パーマー氏――同氏の率いるパーマー・ユナイテッド党(PUP)が上院でキャスチングボートを握っている――との交渉を受け、炭素税は早ければ7月7日に実施される再採決で廃止される見通しになった。
先週下院で議員らが炭素税廃止法案を可決した際、政府の主要閣僚らは喜びを隠せず、互いに抱き合い、ハイタッチを交わした。だが、この軽率な振る舞いは、気候変動の脅威から温室効果ガス排出削減のための新たな措置への合意に意見がシフトしつつある主要20カ国・地域(G20)のパートナー諸国には共有されなかった。
バラク・オバマ米大統領は先月、発電所から出る二酸化炭素(CO2)排出量を2030年までに2005年比で30%削減することを提案した。世界最大のCO2排出国である中国は炭素排出権取引制度の実験に乗り出し、来年パリで開かれる国連気候変動会議でグローバルな排出量削減の促進の動きに加わるかもしれない兆しを見せている。
G20議長国としてすべきことは・・・
シドニー大学のティム・スティーブンス准教授(法律学)は「オーストラリアは炭素税廃止によって、自国の排出量を削減できると他国に示すことができなくなるため、将来の気候変動交渉で孤立する危険を冒している」と語った。
アボット首相を批判する向きは、オーストラリアはG20の議長国として、気候変動に関する議論を主導しようと努めるべきだと主張する。彼らいわく、折しも他国が独自の炭素税を導入しようとしている時に、オーストラリアが採決で廃止しようとしているのだという。