いわゆる広告代理店的な会社に入社して、新卒研修後の配属で、営業部に配属された女子が上からかわいい順だったのをみて、社会とはそのようにできている、というのを知って以来、どんなときも下からかわいくない順の私は、自分は容姿や人柄でお客さんに好かれるタイプではない、ただ実績あるのみ、と思ってやってきた。お客さんに頼まれたことを、誰よりも迅速に、正確に、完璧にやりとげる。私はそれができるし、そういうやり方をしていれば、いずれ認めてもらえるはずだ、と思ってた。頑固で無口な職人が、ただ完成したモノで自分を語るみたいな。
このやり方でいく場合、自分のミスでお客さんに迷惑をかけることが非常におそろしい。モノを完成できなかったり、なにか不具合があったりしたら、それで終わりだ。逆に、お客さんの注文通りに完璧に仕上げたモノに文句を言われたりした場合には、いえ、私は完璧なモノをつくりました、と開き直ったりしてた。で、そのモノに対する対価を得る。それが仕事だとおもってた。この場合重要なのは、ミスをしないように日ごろからきちんとフローを組み立てることや、注文どおりであることのウラを確実にとっておくことだ。
で、そのやり方というか考え方が、逆だなーと気づいたのが、最近。
要は私は、私が完璧だとおもうなにかを、作り上げたいわけではないのだ。私は孤高の芸術家でも人間国宝の職人でもない。それを受け取った人に、喜んでほしいのである。
と気づいた私は、もうひとつ、考え方を変えた。
日常生活から会社の業務まで、TO DOのすべてを「やりたいこと」と「やりたくないこと」に分けるのではなく、「自分にできること」と「自分にはできないこと」に分けた。
これはすごく有効だった。やりたいことと、やりたくないことに分けてるときは、一番やりたくないことをなるべくやらなくていいように、というふうに考えてた。失敗したときにお客さんに謝りに行ったりとか、緊急対応したりとか、考えただけで胃が痛い。やりたくない。だから、ミスしないように。ウラをとるように。リスク管理、リスク管理。
でも、「できること」と「できないこと」に分けたらすごくすっきりする。失敗したときにお客さんに謝りに行く。できる。緊急対応する。これ、いまだとフローがごちゃごちゃしててできない。直す。そしたらできる。そうやって、できることをどんどん増やしていく。それが仕事。楽しい。
自分のやりたい仕事だけをやって、計画どおりに自分が素晴らしいと思うなにかを作り上げて、それを誰かにみせて、評価されたり評価されなかったりする、やりたいことだけやる人生。
誰かとコミュニケーションをとって、自分にできることをして、当初の計画どおりだったり予定とはちがったりするなにかを作り上げて、受け取って喜んでもらう、できることがどんどん増えていく人生。
どっちがやりたいか。
いまの私には自明である。