2. (3) 現行の休眠預金口座の扱い
英国においては上述のとおり、休眠預金の扱いを変更する画期的な見直しが行われているところであるが、参考までに同国における現行の休眠預金口座の扱いをみると、以下のとおりである6。
① 取引のない状態が一定期間(通常は少なくとも1年以上)継続すると、銀行は最後に登録された住所(既に未着で返却された場合を除く)に対して、口座維持の意思を問う手紙を送付する。
――25ポンド未満の小額預金の場合、同プロセスを省略する銀行もある。
② 預金者から口座維持を希望する旨の返信を受けた場合、銀行は当該口座を維持する。
③ 預金者から一定期間(通常は6週間から3ヶ月間)を経ても反応が無い場合、銀行は当該預金口座を休眠預金とみなし通常の預金口座と異なる扱いをする。これには以下の理由がある。
――旧住所への銀行通知や小切手帳の送付を停止することで、他人による当該預金口座の不正利用につながる事態を防止出来る。
――すでに本来の預金者が住んでいない住所への口座関連情報の送付を停止することで、預金者の個人情報を保護出来る。
④ 休眠預金とみなされた場合でも、銀行は当該口座に関する記録を維持しつづける。
⑤ 口座の預金は預金者の財産であることに変わりはなく、預金者が有効な請求を行えば、当該預金は預金利息とともに(付利預金の場合)預金者に全額返還される。
⑥ こうした請求は、銀行の店頭や英国銀行協会のHPから入手出来る用紙に必要事項を記入し、郵便あるいは電子的に送信することにより行う。
⑦ 請求先は、休眠預金の預入れ銀行が判明している場合は当該銀行であるが、休眠預金の預入れ銀行が不明な場合は英国銀行協会となる。
――請求先に請求用紙が届いてから遅くとも3ヶ月以内に、請求者に対して請求内容の有効性についての通知が行われる。
⑧ 銀行に直接請求書を送付し、これが有効請求であるとみなされた場合は、銀行から、(ⅰ)預金残高、(ⅱ)利息金額、(ⅲ)預金口座の利用方法が知らされる。
⑨ 英国銀行協会に請求書を送付した場合は、銀行協会は預金者のために全金融機関に請求書を送付し、全体の連絡窓口として機能し、請求書に対する各金融機関の反応を総合した結果を請求者に通知する。また、有効な請求とみなされた場合には、どの銀行に如何に連絡を取るべきかにつき請求者に通知する。
⑩ 銀行が請求の有効性を認めず、請求者がこの判定に不服である場合、請求者は当該銀行内部の苦情処理プロセスに訴えることが出来る。また、同件を金融オンブズマンに持ち込むことも可能である。
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英国銀行協会HPより抜粋。 |