売買狂、アニマルスピリッツ、合併熱--。呼び方はともかく、それは戻ってきた。2014年1~6月期の世界のM&A(合併・買収)は前年同期比75%増の1兆7500億ドルに達し、07年以来の最高を記録した。
M&Aの増加は米欧アジアでの意識の変化を浮き彫りにしている。成長は築くよりも買う方が簡単だという考え方が復活し、金融危機後に重視されたリスク回避や自律的成長は脇に押しやられつつある。
手元資金の豊富な企業が積極的に動いているため、1~6月の米欧アジアのM&Aは急増した。
米国の1~6月の発表ベースでの金額は7485億ドルで、前年同期比4分の3近く増えた。アジア太平洋では85%増の3278億ドルで、トムソン・ロイターが1980年に統計を開始して以来過去最高となった。欧州でも勢いよく回復し、前年同期の倍以上の5090億ドルに達した。
シティグループのグローバルM&A部門共同責任者のピーター・テーグ氏は、企業が「今の不安定な世界がニューノーマル(新たな常識)であることを受け入れ始めている。いつどこでイラク(のような事態)や債務不安が発生してもおかしくない。企業はこうした環境で、コスト削減や自前の活動だけでは維持できない成すべき成長を果たさなくてはならないと腹を固めつつある。このため、M&Aの先行きはかなり明るいと感じている」と語った。
規制強化で買収意欲が抑えられている金融以外のほとんどの部門で、M&Aは回復している。ゴールドマン・サックスの欧州・中東・アフリカM&A部門トップのジルベルト・ポッジ氏は「M&Aが増えているのは融資が受けられるようになり、資金調達コストも低いからだが、戦略的な理由がなおけん引役だ」と指摘する。
■ヘルスケアの伸長が顕著
M&Aの多くを占めているのはヘルスケア部門で、1~6月の金額は3174億ドルに上る。これは通年ベースで過去最高だった07年の2750億ドルを15%上回っている。米医療機器大手メドトロニックによるアイルランドの同業コヴィディエンの480億ドルでの買収や、カナダの医薬品大手バリアントの米同業アラガンに対する625億ドルの買収提案など、100億ドル以上の案件が相次いでいる。米医薬品大手ファイザーの英同業アストラゼネカへの買収提案が合意に達していれば、さらに際立っていただろう。
ドイツ銀行の投資銀行・証券部門共同責任者、ロバート・ランキン氏は「企業幹部が先行きに自信を深めているため、大型案件が浮上している」と話す。「多くは長い間検討されていたが、実行に移す度胸はここ12カ月で戻ってきたところだ」と同氏は述べた。
By Ed Hammond and Arash Massoudi
(2014年6月30日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
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