走る九州勢 酷暑に自信 ブラジルW杯 猛練習が下地 大久保「厳しさ望むところ」
9大会ぶりに南米で開催されるサッカーのワールドカップ(W杯)ブラジル大会は、特有の暑さや高い湿度への対策も不可欠となる。米国から現地入りする日本代表も過酷な条件での試合が予想され、体力や運動量に優れる九州関連選手のプレーが注目される。たくましさの原点には、九州の「サッカー風土」がある。
5月末、日本代表は気温25度を超える暑さが続いた鹿児島県指宿市で合宿を張った。ハードな体力強化メニューが続く中、大久保嘉人選手(31)=福岡県苅田町出身=は「俺は国見高出身だから、こういう(厳しい)状況で力を発揮できる」と笑顔で話した。その言葉通り、6日に米国フロリダ州で行われたザンビアとの強化試合では後半ロスタイムに決勝点を挙げた。
長崎・国見高は1980年代後半から全国高校選手権で6度優勝。当時の小嶺忠敏監督(現長崎総合科学大付高総監督)は「サッカー界のご三家」といわれた埼玉、静岡、広島勢を倒すため、厳しい練習で体力を強化。技術に優れた相手を運動量で圧倒した。
大久保選手も全国総体、国体、同選手権の「高校3冠」を達成。31歳の現在も「国見で走りまくったことが、今の自分の基礎」と感謝する。鹿児島実高で同選手権4強の伊野波雅彦選手(28)=宮崎市出身=も「高校時代は嫌になるほど走った」。両校の活躍などに刺激を受けた九州勢は、多くの大会で躍進を続けた。
5歳まで熊本県苓北町で育った日本サッカー協会(JFA)の田嶋幸三副会長(56)は「情熱的な指導と猛練習に耐える精神力から九州の走り勝つサッカーが生まれた」と指摘する。自身は関東の埼玉・浦和南高や古河電工でプレーしたが、九州勢のたくましさに驚くことも多かったという。
日本代表が1次リーグ初戦を戦うレシフェは、赤道に比較的近く高温多湿の気候。ザッケローニ監督は選考基準に「ブラジルの暑さに耐えられるアスリート」を挙げており、過去最多の8人が選出された九州関連選手への期待は大きい。
田嶋副会長は「九州はご三家が強かった日本サッカー界に風穴をあけ、現在は代表を支えている」と話す。過去最高の16強を上回る成績を目指す大会。世界のサッカー界に風穴をあけるかもしれない。
=2014/06/08付 西日本新聞朝刊=