「脱法ハーブ」は英語でなんと言うのか?
問題は、「脱法ハーブ」は英語でなんと言うのか、ということだ。なんと言うのだろう?
仮に分けて考えてみると。「脱法」はなんと言うのか、そして「ハーブ」はなんというのか、その二要素を組み合わせると、「脱法ハーブ」が英語で表現できるのか。とりあえず、そう考えてみよう。
「脱法」って英語でなんて言うのか? ちょっと思い浮かばない。こういうときは、反対語を思うといい。脱法の反対は「合法」である。「合法」は"legal"または"legitimate"かな。すると、その反対は、"illegal"または"illegitimate"か。おっと。それは「非合法」だよ。
というあたりで、「脱法」は「非合法」とどう違うのか。ここで気がつくのは、「脱法ハーブ」は「非合法ハーブ」ではないこと。「合法」なんだけど、なんだかよくない、ということで、「脱法」とか呼んでいるわけな。あるいは、過去形で、呼んでいた。
そういうのを表す英語はなんなのか?
それには「法」というのを「なんとか逃れる分野」を想像する。あれだ。「脱税」。それは"evasion of taxes"あるいは"tax evasion"。
でもこの場合、"evasion"は「回避」ということ。
それって「脱法ハーブ」に使えるのか? "herb evasion"? 無理。
他に似たような「脱」ってなんかあるか?
「脱原発」!
そういえば、「脱原発」って英語でなんと言うのか?
フランス語だと"Sortir du nucléaire"(参照)って言うのだけど、英語ではどうなんでしょ。話が逸れていくなあ。
というわけで、「脱法ハーブ」の「脱法」がよくわからない。
そこで意味から考える。と、脱法できるのは「法の不備」なんだ、が、"defectiveness(不備)"なわけはない。
「法の抜け穴」と考えると、"loophole"なる。このあたりで手を打ってみて、"loophole"と"herb"で検索すると、あった。毎日新聞だ(参照)。
According to police, Nagura has admitted the allegations against him. He was quoted as telling investigators he drove into the pedestrians shortly after smoking a so-called "loophole" hallucinatory herb. Police searched Nagura's car, as he said he had kept the substance there.
というわけで、「脱法ハーブ」は"loophole hallucinatory herb"ということかな。
実はこの記事にもっと簡単な表現がある。
A driver suspected to have been under the influence of a quasi-legal drug veered onto a crowded sidewalk in Tokyo's Ikebukuro district on June 24, hitting and killing one woman and leaving seven others injured, police said.
つまり、"quasi-legal drug"。"quasi-"は「疑似の」ということで、ようするに、「疑似合法麻薬」ということ。
共同もこの訳語を採っている(参照)。
A man under the influence of quasi-legal herbs slammed his car into pedestrians Tuesday evening in Tokyo’s bustling Ikebukuro district, injuring seven people, police said.
とはいえ、日本語の表現としては、「ハーブ」と「麻薬」の差の微妙さを「脱法」で表現していたわけで、「疑似合法麻薬」と言われると、ちょっと違うなあという感じはする。
そのたり、毎日新聞の記事で、"loophole hallucinatory herb"という表現をしたのは、"herb"の語感を残したかったからだろう。
先の共同だと、おもむろな表現もある。
Police quoted the man as telling investigators that he had inhaled “dappo herbs,” or quasi-legal herbs containing cannabis-like ingredients.
ちょっと話がずれるが、「脱法ハーブ」って成分なんだか報道ではよくわかんないが、ようするに「cannabis-like ingredients」ということで、「大麻に似た成分」ということ。
すると、「大麻」は、いずれ米国では合法化されるしかないくらいなものだから、さほど危険な薬物ではない。なので、むしろ、大麻より「大麻に似た成分」が危険だということなんだろうか。とか考えると、なんとなく、脱法ハーブの報道って、大麻規制で警察が焦点化しただけなんじゃないのという印象も生まれるが……。
実は、「脱法ハーブ」は実体的には、大麻の「有効」成分「テトラヒドロカンナビノール(Tetrahydrocannabinol)を似せて合成したものが多いらしい。なので、こうした合成薬の毒性は大麻よりわかっていない。
ウィキペディアなんかだと、「脱法ハーブ」をあっさり、"synthetic cannabis"としている。つまり、「ハーブ」っていうなんか自然のイメージとは別に、たいていは薬学が生み出した合成品なわけな。
言葉の問題に戻ると、ジャパンタイムスの記事(参照)だと、写真のキャプションには" quasi-legal herbsがあるが、本文は"dappo herbs"で通しているんで、まあ、「脱法ハーブ」の英語は"dappo herb"でいいんじゃないか。
ついでにジャパンタイムスの記事だとこうもある。
It was not until last April that the Pharmaceutical Affairs Law was finally revised to make possession and use illegal.
法が変わったから、合成カンナビノイドが規制されたということなんでしょう。そこを警察としては、ちょっと危険をもって演出しているかなという印象はある。
ほいで、「脱法ハーブ」という言葉のネタは以上でおしまい。
なんだが、ついでなんで、ここでもう一つ。
"Herb"の発音できますか?
"Herb"なんだから、「ハーブ」だろ?
まあ、そうでもあるんだけど、ちょっとそういうことでもない。
解答から言うと、英国英語だと「ハーブ」なんだけど、米国英語だと"h"の音が抜けて「アーブ」です。というか、米国人、これは、"hour"や"honest"なんかと同じタイプのフランス語の外来語だと思っているようだ。
日本の英語教育だと、英国英語と米国英語の差は、なんとなく適当にごまかすから、米人が「アーブ」って、hを落としているのを知らない人も多い。
これで、おしまい。
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