ウォール街困惑の債券の謎、メンフィスの金融機関が解明
6月30日(ブルームバーグ):ニューヨークのウォール街から約1600キロ離れたテネシー州メンフィス。ここを本拠とするFTNファイナンシャルを訪れれば債券市場に関する最良級のアドバイスを共有できる。
FTNの金利戦略責任者ジム・ボーゲル氏とチーフエコノミストのクリス・ロー氏は、今年の債券相場急落は不可避との市場コンセンサスを無視するよう投資家に適切に助言できた少数派の一角だ。両氏は少なくとも2011年以降、コンセンサスとは逆に利回り低下を予想して的中させてきた。
弱気派はインフレが芽生える兆しや米量的緩和の縮小を債券離れの理由に挙げるものの、FTNは厳しい雇用情勢を踏まえ、米国債が危機前の水準に戻るのは数年先になると予想している。
ロー氏(49)は24日の電話インタビューで、「金利が前回のサイクルの水準に戻ると予想しないということは基本的に、今のサイクルには非常に異なる何かがあるという意味だ」と述べ、「成長は依然として弱く数十万人が労働力人口から脱落しながら年が過ぎていく状況を踏まえれば、それはもっと簡単に説明できる」と語った。
FTNはブルームバーグ・ニュースが67社を対象に1月に実施した調査で、10年物米国債利回りが6月末までに3%を割り込むと予想した12社うちの1社だった。FTNの予想の2.6%に対し、27日時点の利回りは2.53%。
エコノミストやストラテジストは予想を誤ったわけではなく、早まっただけだと言う。今月6-11日に実施した調査では、年末予想の中央値は3.07%。これに対しボーゲル氏とロー氏は2.55%と予想している。
まだら模様の回復労働省が6日発表した5月の雇用統計によると、全雇用者数は前回リセッション(景気後退)入り翌月の2008年1月を上回る水準となった。それから約2週間後に発表された5月の消費者物価指数は前年同月比2.1%上昇と、12年以来最大の伸びとなった。
他のデータはまだら模様の景気回復を示している。生産年齢人口に占める労働人口の割合を示す労働参加率は5月に62.8%で横ばいとなり、1978年3月以来の最低水準に並んだ。賃金や給料はリセッション以降平均して前年に比べ2.5%増加しているが、前回の景気拡大局面では4.3%伸びていた。
ボーゲル氏(58)は23日の電話インタビューで、利回り上昇を見込む多くの予想は「古い分析」から導かれた教えを反映していると述べ、3年余りにわたる雇用増加でもまだ賃金上昇が伴わない経済情勢にこうした教えは応用しにくくなっていると指摘した。
記事に関する記者への問い合わせ先:ニューヨーク Daniel Kruger dkruger1@bloomberg.net
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更新日時: 2014/06/30 15:10 JST