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どこまでが合法でどこからが違法? 日本における賭博の位置づけを整理してみる

MONEYzine 6月30日(月)8時0分配信

■現金はダメだが、天丼ならセーフ!? 

 まずは前提として「賭博とはなにを指すのか? 」について、認識あわせをしておきます。賭博とは「偶然の勝敗により財物・財産上の利益の得喪(とくそう)を争うこと」。未来が予見できない出来事に対して、自らの価値あるものを賭けあって争い、その結果として「得」か「損」の結果がもたらされる、といった行為を指します。

 では、この賭博を行うと、どうなのるのか? 刑法第185条および186条で、賭博を(常習)すること、開帳することについての刑罰が規定されており、その罰を受けます。ただし、賭博が何でもかんでも刑罰の対象になるわけでななく、「一時の娯楽に供する物を賭けたにとどまるときは、この限りでない」とされています。

 この一文の解釈について、法律家の間でも意見が分かれるところなのですが、判例にはその場で消費される天丼やたばこといったものはシロ、金銭を賭けた場合は1円でもクロ、というものがあります(なお予備知識として、これらの判例は戦前のものだということを付け加えておきます)。

 以上が、日本における賭博についての基礎知識です。

■合法とグレーが入り乱れている状態

 さて日本の法律上、賭博が犯罪であることを整理してきましたが、実生活において私たちは多くの賭博をすることができます。ここからは、この矛盾について見ていきます。

 日本には、一般的な社会生活の範囲で行える賭博が以下の5系統あります。

1.競馬、競艇、競輪、オートレース
2.宝くじ、toto
3.パチンコ、パチスロ
4.麻雀
5.オンライン賭博

 これらは思い立ったらすぐにでも行うことができるわけですが、結論からいってしまえば1,2のみ合法、3,4,5は合法ではない(違法でもないグレーな存在)というのが実際のところ。グレーな賭博が、日常生活と隣り合わせに存在しているわけです。そして問題なのは3,4,5に参加する人たちが、これらの法的位置づけを気にかけることなく、賭博に熱中していることだといえます。

 以降では、この“異常事態”ついて考えるために、それぞれの賭博をめぐる環境について整理していきます。

■競馬や宝くじは公営賭博

 競馬などの競技、宝くじなどの籤(くじ)は、実質的には賭博です。しかし、それぞれに特別法を持たせることで、合法化しています。これら公営競技、公営くじは、その目的および収益の使途を「公益性」と「地方財政の健全化」にあると定義。賭博ではあるものの、「公」の利益に資する施策だ、というロジックの上に成り立っています。

 というのも、これらの多くは終戦から間もなく定められたもので(競馬、富くじは戦前もあり)、戦災復興、その他の公共事業の資金調達を目的としていました。また、競馬は畜産業、競艇は船舶事業、競輪やオートレースは機械工業や体育事業をといったように、それぞれ結びつきの強い事業の振興を支援。ある意味、特殊な時代背景の中で制度化され、戦後日本の成長に貢献し、そして現在まで続いている存在なのです。

 このことからも分かるように、日本における賭博を考えるためには、戦後70年経ち平和で豊かになった今の時代だけを切り取り、その価値観のみで判断してはいけません。戦後の歩みとともに確かな実績を残し、日常生活になじんできたという実像を評価した上で、未来志向の議論をしようというわけです。

■換金問題がグレーなパチンコ、パチスロ

 まず、パチンコ・パチスロは公営賭博のように特別法をもって合法化されているものではありません。パチンコ店は、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)の管轄。その風営法は、国家公安委員会が規則を、警察庁が解釈運用基準を策定するものです。

 さて、パチンコは社会通念上、賭博そのものです。しかし、なぜ警察が取り締まらないのか? それは、風営法の定めるルールの範囲内で健全に運営されており、あくまでも“遊技”であると解釈しているからです。

 パチンコは明らかに換金行為を伴うものですが、「三店方式」というロジックを用いることで、パチンコ店と換金の関係性を切り離し、ひいては賭博にはあたらないということにしています。なんだその屁理屈はと問題提起する人も多いのですが、これが警察によって違法ではないと“黙認”され続けているのが現状なのです。

 とはいえ、このパチンコに関しても、戦後の時代背景を考慮する必要があります。当時は賞品買い取りに暴力団の介入があり、それを防ごうとして生み出されたのが三店方式(オリジナルは大阪方式)なのです。

 このように苦肉の策として生み出された方式は、パチンコの質が変わらなければ良法だったでしょう。しかし、パチンコは最先端の技術を盛り込みながらその姿を変え、巨大な産業へと成長しました。庶民の娯楽と呼べるレベルはとうの昔に過ぎ去り、今では1日に40万円勝つことも可能なほどの別物に変貌を遂げてしまっているです。

 そうしたパチンコの変化に対して、警察や風営法は、抜本的な改善を試みることはありませんでした。「ルールの範囲内で健全に運営されている」という一言で、問題を先送りしてきた、ともいえます。

 国民のほとんどがパチンコは換金行為の伴う賭博であるという認識を持っているのに、それを監督する警察が、違法ではないという立場を変えない。このおかしな構図が、パチンコの抱える大きな問題だといえます。

■賭け麻雀はいくら低額でもクロ

 麻雀店もパチンコ店と同じ風営法の対象で、警察の管理監督を受けます。近年ではノーレート麻雀というジャンルに一定の需要があるとはいえ、麻雀はお金を賭けてプレイするのが一般的だといえるでしょう。

 しかし、すでに述べたように、1円でも賭けたらそれは賭博罪にあたります。仲間内のセット打ちであれ、一人客同士のフリー打ちであれ、それは変わりません。とはいえ、プレイヤーはその罪を知ってか知らでか、麻雀を楽しんでいるというのが現状です。

 法律的には罪になるが、公然性がないため取り締まりようがない。そして実社会では文化の一つとして成り立っている。これは監督する側にとっても、難しい問題だといえるでしょう。それゆえ警察は麻雀店に対して、いわゆるお目こぼしを与える状況となっています。実質的にはクロであるけれどグレーという位置づけとし、節度ある営業を指導しているというのが実情です。

 なお風営法の対象ということで、フリー打ちに関しては三店方式を採用してはどうかという考えも浮かびますが、それはダメ。なぜならば、麻雀店の場合は賞品を提供してはいけないという条件が加えられているからです。

■世界中で拡大する最新ギャンブル

 インターネット技術が発達した2000年前後から、海外ではオンライン賭博という分野が成長の一途をたどっています。日本人の感覚としてはうさんくさいものに感じられますが、カジノ文化の根付いたユーロ圏では、上場企業が運営しているほどの産業です。

 他方、アメリカではオンライン賭博およびその周辺を巡る法改正が活発です。規制、禁止、解禁が目まぐるしく切り替わっていたのですが、2013年にネバダ州で合法化したのを皮切りに、他州も続こうとするトレンドが生まれています。このように潜在顧客の多いアメリカをも巻き込んだオンライン賭博の市場は、アメリカのリアルカジノ市場に比肩するまでに成長(約3兆円)。そして抜き去ろうとしています。

 さて、そのオンライン賭博に、日本からアクセスして参加するのは合法か、否か? 法律家によって意見の分かれるところなのですが、はっきりしているのは明確に罪の根拠とする法律自体が存在しないということです。よって合法だとはいえず、グレーだと判断するしかないのが現状だといえます。技術やゲームの進化に法律が対応していかないと、やはり不具合が生じるものだということが、この例からも分かります。

■時代によって賭博観は変わるもの

 以上で見てきたように、日本における賭博の問題はさまざまあり、そして根が深いものだといえます。簡単にはメスが入れられない。だからこそ先送りにされてきたわけですが。

 しかし、いまカジノ議論が起ころうとしているこのタイミングに、賭博を見つめ直し、整備していくことが求められるのではないでしょうか。これ以上、問題を先送りにし、未来の子供たちへバトンタッチするというのは、あまりに無責任だといえます。

 歴史を振り返ると、賭博は時代の節目にその存在意義を変えています。現代の賭博に対する嫌悪感は、明治維新に伴って醸成された価値観。しかしそこで悪者になった賭博が、終戦後の復興に貢献する役割を果たしました。それでもなお嫌われ者の賭博ですが、それを中核としたIRが経済成長の手段となり得ることを、シンガポールが証明しました。このIRという新しい価値が生まれたことは、時代に一つの区切りをつけるような新しい出来事だといえるのではないでしょうか。

■カジノレースに正式に参戦表明する大企業も

 今回取りあげた賭博というテーマだけをとってみても、これから起こるカジノ議論は、“炎上”が必至で、今後より激化していくことが予想されます。そんな業界ですから、関連銘柄として話題には上がりながらも、様子見をしている企業が多いのですが、早くも参入表明してニュースをにぎわせる企業が現れています。

 5月28日、コナミがカジノ施設への投資を目的とした子会社の設立を検討していると発表しました。同社はすでにラスベガスをはじめ全世界で365のライセンスを取得し、カジノ機器やマネジメントシステムの製造・販売等を行っている経歴があります。そのコナミが日本のカジノ解禁をにらんで、いの一番に手を挙げたわけで、この動きの速さは様子見勢にとっては驚きのものだったでしょう。

 これまでは官主導で、あまり目立つことなく進んできたIR議論。これに民が加わることで、議論の質やスケールが向上していく流れとなりそうです。

最終更新:6月30日(月)11時40分

MONEYzine

 

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