学校法人:源泉徴収漏れ6割超、納税は勉強不足 専門家「認識甘い」
毎日新聞 2013年07月27日 大阪夕刊
学校法人の源泉徴収漏れが目立っている。近畿ではこの5年間、国税局に税務調査を受けた学校法人の6割以上が徴収漏れを指摘された。企業を含めた全体の徴収漏れは2割台で、学校法人の比率が突出する。背景は不明だが、一部の法人では、不透明な経理処理の問題も浮かび上がる。【林田七恵】
源泉徴収は、事業主が役員や従業員の給与から、あらかじめ所得税などを差し引き、個人に代わって納税する仕組み。経費として従業員に支給したものが国税局に給与と認定されると、その分の所得税の徴収漏れとなり、追徴課税される。
大阪国税局によると、2012年6月までの5年間、近畿の373学校法人を税務調査し、64%の237法人で所得税の徴収漏れを指摘した。追徴税額は5億5000万円を超えるという。
徴収漏れを指摘した学校法人の割合は、最も多い08事務年度(08年7月〜09年6月)で73・2%。最少の10事務年度でも54・5%だった。これに対し、一般企業を含めた全体では25〜27%程度で推移している。
学校法人は、授業料など教育のための収入は非課税だが、役員、教職員の給与への課税は一般企業と同じだ。なぜ、学校法人の徴収漏れが多いのか。
元国税調査官の大村大次郎さんは「学校法人は収益事業以外は法人税を課されず、税務調査の機会も少ない。税金に対する認識が甘くなる傾向があるのかもしれない」。永橋利志(さとし)・近畿税理士会広報部長は「国税局の指摘で、学校法人も経理に対する認識を改めている過渡期かもしれない」と指摘する。
◇タワーマンション家賃、黒塗りタクシーで送迎 経費で丸抱えも
都心部にそびえるタワーマンション上層階の一室が、関西の学校法人理事長の自宅だった。数十万円の家賃を払っていたのは学校法人だ。理事長は電車通勤を拒み、毎日、黒塗りのタクシーを自宅に迎えに来させた。携帯電話を含め、その費用は法人側が負担した。
法人側は家賃などを全額経費として計上し税務処理していたという。しかしこうした費用は理事長の給与に当たる可能性が高い。給与であれば、法人側は所得税を源泉徴収して納める必要があり、税務調査で徴収漏れを指摘されかねない。
「家賃や携帯電話料金を前の年からさかのぼって負担する」。ある時、理事長が突然、法人の担当者に切り出した。理事長は法人の帳簿も修正させた。