昨年12月ごろから、広島県廿日市(はつかいち)市にある中国人技能実習生の寮に、携帯電話会社から大量の請求書が届き始めた。だが、実習生らはいずれも帰国して行方は知れず、支払いは結果的に踏み倒された。実は、実習生の間で帰国直前にスマートフォンを分割払いで契約すれば、支払いをせず持ち帰れるという話がひそかに広まっていた。「ただでもらえるのに、何で持って帰らないのか」と伝わっていたという。携帯電話販売店の過当競争を逆手に取った詐欺事件だった。(松前陽子)
今年2月、広島県警外事課や広島中央署などは携帯電話を販売店からだまし取ったとして、有印私文書偽造・同行使、詐欺の疑いで中国籍の夫婦と、夫婦の知人で福井市の大学生の男の3人を逮捕した。
県警によると、3人は共謀し、横浜市の販売店から携帯電話2台(計約18万5000円)をだまし取った疑い。県警はその後も、複数の販売店から携帯電話をだまし取ったとして詐欺容疑などで3人を再逮捕している。
彼らはスマホの販売店を渡り歩き、妻の知り合いの中国人実習生らの名義を使い、分割払いの契約と解約を繰り返すことでスマホを無料で入手。それらを転売するとともに、販売店から契約乗り換え時のサービスであるキャッシュバック(現金還元)を受け、現金を詐取していた。
販売店からの請求書は名義人の実習生らに届くが、銀行口座に残金はなく、在留期間が決まっている実習生らは請求書が大量に届く頃にはすでに帰国しており、結局、携帯会社が損害を被ることになる。夫は千葉県銚子市、妻は広島県廿日市市に住み、連絡を取り合って犯行を繰り返していた。
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