自転車:バスレーン共用の周知強化へ 東京・世田谷区
2014年06月28日
国土交通省は、交通量の多い国道246号で、自転車がバス専用レーンを走りやすくするための改良に乗り出す。パリ市では同様の取り組みで自転車の安全性が高まった。まずは東京都世田谷区三軒茶屋−駒沢間の2キロで始め、様子を見ながら拡大していく方針だ。【馬場直子/デジタル報道センター】
担当する同省東京国道事務所によると、三軒茶屋−駒沢付近は片側3車線で、1日約5万台の自動車が通行する。自転車の事故も多く、1キロ当たりの自転車事故件数は2012年で19.1件と、23区内の直轄国道での発生数の3.4倍に上った。
事故多発の原因の一つは交通量の多さだ。一番左端の車線は通勤通学時間帯(上り午前7〜9時または9時半、下り午後5〜7時)にはバス専用レーンになり、自転車もここを走ることが可能だが、周知が十分でない現状では、自転車は幅2.5メートルの歩道を走ったり、車道と歩道を行き来したりしている。
午前8時ごろ、東急田園都市線三軒茶屋駅付近で様子を見た。通勤自転車が歩道で、歩行者の間を縫うように走っている。車道を走る自転車もいるが、路上駐車の車を避けて真ん中の車線にはみ出したり、突然歩道に「避難」したりする自転車もいた。
同事務所は今年度中に、路面に「バス専用レーン」の表示と併せて自転車のマークや進行方向を示す矢羽根を描き、自転車を車道に誘導する。車にも走行場所を明示して、自転車が走ることをアピールしたいという。
ただし、共用の成功には自転車の協力が欠かせない。NPO法人「自転車活用推進研究会」の小林成基理事長は「最も危ないのが、歩道−車道と移動しながらの走行。停車中のバスが前方にいれば車道側から追い抜き、発車合図を出していたらスピードを緩めてバスに譲るなど、バスと上手に共存する工夫を自転車の利用者に呼び掛けたい」と話す。
小林さんによると、パリ市はバスと自転車の共用を1996年に始め、2012年現在、自転車レーン600キロの7割がバスとの共用だ。同市は公共交通の要であるバスを利用しやすくするためにバス専用レーンを整備する一方で、利用が増えていた自転車も一緒に走らせることになったという。
その結果、乗用車やトラックがバス専用レーンから閉め出され、結果的に自転車の安全性も向上した。小林さんは「今回の取り組みをきっかけにバスの利便性が向上すれば、『車からバスや自転車へ』という方向転換も期待できる」と話している。