日本企業が価格カルテルで海外の当局や裁判所から多額の制裁金や罰金を命じられる事例があとを絶たない。

 目立つのは、自動車部品や自動車の海上輸送サービスでの摘発だ。ビジネスが国際化しても順法意識は「ガラパゴス」のまま、というお寒い構造が日本最強の産業で露呈している。

 米国では企業だけでなく個人の刑事責任も厳しく問われ、米国の刑務所に収監される日本人も相次ぐ。

 「これも仕事の内」という忠誠心や出世への野心からとはいえ、ライバル企業と価格の相談をしたら、外国の刑務所に長ければ2年も入れられる――日本のサラリーマンには由々しき時代ではある。

 摘発が急増しているのは、海外の独占禁止法当局が自国や域内の企業にとって競争上、不利にならないよう、外国企業の不正追及を強化しているためだ。

 通商戦略でも、世界貿易機関(WTO)協定や自由貿易協定(FTA)で競争政策を重視している。これが新興国での独禁法の整備につながり、日本などの企業が欧米以外でも摘発される例が増えている。

 真っ先に不正を通報した企業を免責する制度や、他の不正を明かせば制裁を減免する仕組みが威力を発揮している。

 罰金や課徴金・制裁金を払っても一件落着ではない。責任ある役員に穴埋めさせる株主代表訴訟が起こされる可能性が高いからだ。最近も、住友電工の元経営陣が5億2千万円で和解した。海外では顧客に当たる組み立てメーカーや消費者が民事訴訟を起こす恐れもある。

 カルテルを「必要悪」とする言い分は到底、通用しない。根絶には、企業トップが断固たる態度を現場に示すべきだ。強い立場の買い手が無理な要求をして、売り手を不正に追い込んではいけない。

 そのためにも、日本は厳罰化の世界的な流れにあわせ、課徴金の制裁的な上積みや罰金の高額化、関与者への刑事罰の強化を進める必要がある。

 今後、米国が「有罪」と認定した役職者の引き渡しを日本に求めてくる可能性も取り沙汰される。ただ、米国の言うがままに対応するのでは、カルテルに対する国際的な事件処理をむしろ複雑にしてしまう。

 各国の独禁当局は01年から国際的な協議の場を設けている。そこで厳罰化の水準をそろえたり、課徴金や制裁金を貿易相手国にきちんと分配する仕組みを調整したりしながら、国際カルテルの追放を進めてほしい。