2014年6月30日00時05分
教育が仕事の大学から年間7千コマ以上の授業を請け負う企業がある。通信教育大手ベネッセコーポレーション。手がけるのは、企業で働いた経験があまりない大学教員に代わって、学生たちに「社会人スキル」を教える授業だ。
関東学院大学の金沢八景キャンパス(横浜市)。相手に伝わる話し方と聞き方を学ぶ授業「キャリアデザイン入門」は1年生にとって必修科目だ。「口角を上げて笑顔を絶やさずに」。学生約70人のクラスでベネッセが契約する女性講師が、大きな手ぶりを加えながら助言を飛ばしていた。
ここ数年、こうした授業が増えている。2012年度は、約200人の契約講師を全国の大学に送り込んだ。12年度に受託した計7197コマは、07年度に比べ1500コマ多かった。
関東学院大が、ベネッセへの外部委託を始めたのは2年前。08年のリーマン・ショック後に下がった学生の就職率を上げる狙いがあった。出石稔副学長は「大学の教員に、社会が求めるスキルを教えることはできない。『餅は餅屋』ということで民間企業にお願いした」と話す。
ベネッセには年間約3千万円の契約料を支払う。人件費が年間1千万円以上の教員を雇って大学が自前でカリキュラムを作るより、外注の方が費用対効果が高い。「就職率が上がれば、志願者が増えて、投資を回収できる」という。学生にも好評だ。理工学部1年の和田隆暉さん(18)は「この授業は、話し下手な自分を変えられる」と話す。
外部委託は授業だけにとどまらない。どんなカリキュラムにするか。新しい学部を立ち上げる段階から外部業者を取り入れる大学も現れた。「外国語・国際系学部」の新設構想を5月に発表した近畿大学が提携しているのが、語学学校大手のベルリッツだ。入学後の半年間は、ネーティブスピーカーの講師が英語を集中指導する。1年生に留学を義務づけ、行き先はベルリッツが提携する世界各国の大学を活用する。
「グローバル社会の即戦力となる人物を輩出したい」。近畿大の塩崎均学長は言う。これまでも、遊びながら英語を学ぶ施設や無料講座をつくるなど、英語教育の強化に自前で取り組んできた。しかし、国際的に役立つ人材を育ててこられたのか。塩崎学長にはそんな問題意識もあった。「自分たちだけで難しければ、外部のノウハウを使えばいい」
おすすめコンテンツ
PR比べてお得!