昨日は生地から作るピザを紹介させて頂きましたが、アメリカでピザといえば、昨年話題になった Is pizza a vegetable ピザは野菜か論争 のニュースを目にされた方もいるのではないかと思います。 ピザが野菜?そんなバカな。。もちろん、アメリカ人だってピザが野菜と思っているわけではありません。ピザもビールも、健康な体あってこそのお楽しみ、というわけで、クラフトビールと健康ブームで盛り上がっているアメリカから、ピザは野菜か論争について、ロサンゼルスタイムスの “Is pizza a vegetable?” ” USDA school lunch rules ‘best ever’ – though pizza is still a ‘vegetable’” の二つの記事、その他当時のニュースも含め、説明させていただきます。
昨年(2011年)、アメリカの肥満問題を何とかしようと、アメリカ合衆国農務省が学校給食を改善する法案を議会に提出しました。今までの規定よりも野菜とフルーツを多くし、子供に健康的な給食を提供しよう、という素晴らしい内容だったのですが、その中での1項目が問題になったのです:
a half-cup of tomato paste could be considered a vegetable トマトペーストは半カップで、野菜とみなされる
議会ではこれに反対する議員が続出。そうですよね、トマトペーストが野菜なんて(栄養価はありますが)。アメリカに他の野菜はないのかえ?と言いたいところですが、反対派の議員の言い分は違います:
count two tablespoons of tomato paste as a vegetable 大匙2杯で野菜だっぺ
実は今までずっと、学校給食では大匙2杯のトマトペーストは野菜にカウントされていたのです。もちろん学校給食の規定で、野菜を提供しなくてはならなかったのですが、大匙2杯のトマトペーストは野菜だったので、写真のこのピザを給食に出せば、規定クリア。うちの給食は子供に野菜も与えてますよ、と学校は言えたわけです。
学校給食を改善する法案が議会に提出されるまで、あまり世間に知られていなかったこの 大匙2杯のトマトペーストは野菜 にアメリカ人達は大ウケ。America’s new vegetable (アメリカの新しい野菜)として一気に話題になりました。 “学校給食、体に悪いものばかりだと思ってたけど、そういうことか” “オレは朝からヘルシーな朝食。モーニングピザ食ったよ。” サラダビュッフェにピザが加えられた合成写真の登場など、ネット上でも盛り上がりました。 - これが昨年起きた ピザは野菜か論争 です。
反対派の議員達(トマト産業の州選出や、冷凍食品団体の支援を受けている)の言い分は:
半カップのトマトペーストを使ったピザなんて、不味くて食べられない。(←だからもうピザを給食に出すのは止めましょうよ。。というか農務省の狙いはそこですよね?)
不味いものを提供しても、子供は残すだけ(←体に悪いものを食べさせるよりも、マシなのでは?お腹が空いてそれしか無かったら食べますよ、きっと。)
厳しい規定を作らないことで、学校側がより自由に、広い範囲で子供に与える食べ物を選ぶことができる (←その結果がこの肥満問題でしょうが)
細かく規定を作って学校給食にまで国家が口を出すなんて、アメリカの自由精神を迫害するものだ(←自由自由うるせー!)
(すみません、上記のカッコ内は私の個人的意見です。) 結局結論はどうなったかといいますと、残念ながら、この トマトペーストは大匙2で野菜とする という文章はそのまま残され、ただし “給食のトレイには他の野菜もいっしょに提供されること” という改訂がされることで決着。 今回の新しい規定では、他にも減塩や低脂肪乳の提供などが盛り込まれていたため、トマトペーストばかりにこだわって、否決されるわけにはいかないという政治的取引の結果でしょうか。
残念ながら上記のピザは野菜が入っているとみなされたままですが、今回の件はアメリカ人に学校給食と子供に与える食べ物について考えさせるきっかけとなりました。州や学校によっては独自の規定を作り、学校内で販売される食べ物を制限するところも。
イギリス人の料理人ジェイミーオリバーは、イギリスアメリカの両国で子供の給食を改善しようと働きかけており、自身のサイトFood Revolution! では実際に子供達が食べている給食を写真にとって投稿することが出来ます。この活動はテレビシリーズにもなりました。(リンクを開いて写真が三つ並んでいるうちの右上、worst ratedをクリックすると、評価が低い給食を順に見ることができます。興味のある方はぜひ)
ちなみにアメリカの公立学校では、私の知る限り、学校で提供される給食を食べてもいいし、持参のランチを食べてもいいことになっています。健康に気を使う保護者をもつ子供は、持参のランチを食べますが(学校給食は体に良くないため笑) 保護者が働いていて忙しかったり、金銭的に余裕の無い家庭の子供達は学校給食を食べる、というわけです。(そして太ってしまう)
上記、反対派の議員の子供達は、もちろん学校給食を毎日食べているんですよね?(家では、ピザは大人になってから!なんて言ってたりして。。)
(追記)トマトは野菜か果物か、と議論がいまだに分かれるところですが、アメリカでは農務省が“トマトは野菜”と規定しています。
(追記2) ジェイミーオリバーって、以前日本で キッチンの貴公子 というキャッチフレーズで本を出版したりカフェをプロデュースしたりしてましたよね?ビール業界もそろそろ貴公子の登場でしょうか、ね!王子様!(^_^)
USらしい論争かも…(^_^;)
ただ日本の給食も、予算という足枷の中遣り繰りして頂いているものの、栄養士さんのセンスに任されている部分もあってちぐはぐなメニューを出すところも珍しくなくなっていますね。
Ohmura様 なるほど。日本でも給食での問題、あるんですね。ご飯や麺類、パンもあって、給食の時間がとても楽しみでした。学期末にデザートが付いたりしたのは、子供ながらに、予算の関係かな、なんて思ってたんですよ(笑)