社説:集団的自衛権 無責任極まる与党協議
毎日新聞 2014年06月25日 02時40分
集団的自衛権の行使容認などを巡る与党協議は、多くの問題をうやむやにしたまま合意しようとしている。政府・自民党は9回目となる24日の与党協議で閣議決定案の修正案を示した。自衛権発動の新たな3要件案について、公明党に配慮してより限定的内容に修正したものだ。
他国への攻撃が国民の権利を覆す「おそれ」がある場合に集団的自衛権の行使を容認するとしていたのを、「明白な危険」がある場合に修正した。「他国」も「我が国と密接な関係にある他国」に変えた。
だが公明党の要求で多少、限定的表現になっても、集団的自衛権の行使は政府の判断次第で、歯止めがかからないことに変わりはない。
与党協議にはごまかしが多い。
協議対象となった15の具体的事例のうち自公が明確に合意したのは、グレーゾーン事態と呼ばれる武力攻撃に至らない侵害への対応だけだ。
国連平和維持活動(PKO)に参加している他国部隊や文民要員を救援する駆けつけ警護は、公明党内になお慎重論がある。与党協議では議論が煮詰まらないまま、公明党が目立って異論を唱えなかったことから、事実上、認める方向になった。
集団的自衛権の事例は、行使が必要という自民党と、個別的自衛権や警察権で対応できるという公明党の溝が今も埋まっていない。
例えば、海上交通路での機雷掃海を集団的自衛権で認めるかどうかの議論は決着していない。
それなのに自民党が、国連の集団安全保障としても機雷掃海などの武力行使をできるようにしたいと唐突に提案した。公明党の反発で閣議決定には明記しないことになったが、閣議決定案の修正案は読み方次第で参加の余地を残している。
公明党は当初、事例ごとに個別的自衛権や警察権で対応できないか検討し、できない場合に集団的自衛権の行使容認について検討すると言っていた。だが、首相の意志の固さを見て、行使を一部認めたうえで限定する方針に転換した。事例は結論の出ないまま脇に追いやられた。
与党協議は密室の協議だ。政府はどんな活動が可能になるのかあいまいなまま閣議決定してしまえば、あとは政府の判断で何でもできると考えているようにみえる。政府と与党は15事例について、できるできないをはっきりさせるべきだ。
首相は閣議決定について「期限ありきではない」と語っていたが、その後、態度を変え、豪州訪問に出発する前の7月4日までの閣議決定を目指している。戦後の安全保障政策の大転換を議論するのに、この種の期限を設けるのはおかしい。政府も与党もあまりに無責任だ。