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日本郵便のwebサイトより

郵政株が上場に向けた動きを加速させている。地場証券を主幹事にして、広く個人に購入してもらう予定で、すでに「第二のNTT株」との声もあがる。しかし、NTT株は当時騒がれたにもかかわらず、実は売り出し価格が高値で、現在はそこから見るも無残な価格に落ちている。

日本株全体の株価が「失われた20年」で下落しているので、NTT株だけを責めるのは酷かもしれない。しかし、日経平均は最高値のほぼ4万円から1万5000円だが、NTT株は最高値のほぼ3万円から6000円へと下落率は大きい。あのフィーバーはなんだったのだろうか。

「株とはそう言うもの」といえばそれきりだが、ここで、郵政株をちょっと冷静に見ておこう。

小泉民営化の前、郵政は3事業を行っていた。郵便、郵貯、簡保である。

まず郵便については、インターネットが伸びているのですでにじり貧。一般の人で、連絡手段として郵便を使っている人はほぼいないだろう。営業用のダイレクトも、どんどんとインターネットに置き換わっているというのが現実だ。

次に郵貯は、銀行業務だが、普通の銀行と異なり、貸し出しがほとんどない。ドラマ『半沢直樹』を見てもわかるが、銀行マンの真骨頂は企業融資である。それで銀行が儲かるかどうかが決まるのだが、郵貯は預かったカネを有価証券で運用しているばかり。誰の目にも、銀行経営としては危うい。

簡保の名前は簡易生命保険の略。ただし、簡易保険は、名称こそ保険だが、その実態は保険・保証機能は貧弱で、投資信託を薄皮の保険で包んだような商品である。そうした実態が広く国民に知れるようになれば、一気に魅力がなくなっても不思議ではない。

さらに言えば、郵貯と簡保の「仕事」は基本的に国債の運用。一番利回りの低い国債で運用してまともに儲かるはずがない。それでも、民営化以前に郵貯・簡保がなんとかやってこれたのは、政府の財投システムがあったから。いわゆる「ミルク補給」、端的にいえば会計テクニックで補助金を迂回させてもらっていたのだ。

ところが、'90年代後半からの財投改革で、こうした「ミルク補給」が絶たれた。その結果、専門家の間では3事業は十数年もすると「自ずと破綻する」という見解が主流になった。

そこで、'01年からの小泉政権で郵政民営化が提唱され、財投改革で死亡宣告をされた郵政3事業が生き返るチャンスを与えられたわけだ。この機会を生かせるかどうかは、どのように民営化された郵政をうまく経営するかにかかっていて、郵政民営化の時には、西川善文氏ら数十人の民間人が集められ、郵政の生き残りへの期待が膨らんだ。

しかし、政権交代した民主党はこれらの民間人を郵政から追い出し、代わりに、斎藤次郎元大蔵次官などの天下り官僚を起用した。

安倍政権になって、元役人から民間人経営に再び舵を切ったが、西川氏らの追い出し騒動に懲りて、なかなか人が集まっていない。その結果、元役人が民営化会社を経営するというのが実態である。

小泉民営化の民間人経営なら「買い」だし、民主党政権の天下り官僚経営なら「売り」だろう。今の郵政はどちらに近いのか。形式的には民間人でも、部下にどのくらい民間人を連れてきているのか、それによって、真の民間人経営なのかどうかがわかる。そうした細部まで慎重に精査して、「買い」かどうかは、自己責任で判断してもらいたい。

『週刊現代』2014年7月5日号より

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