中国の習近平国家主席(5月、北京) Xinhua/Associated Press

 中国の習近平国家主席は来月3日から、2日間の日程で韓国を訪問する。中国の国家主席が北朝鮮より先に韓国を訪問するのは今回が初めてで、外交筋は中国政府が北朝鮮にいら立ちを感じていることの表れだとみている。

 中国・韓国両政府が27日に発表した。習氏の訪韓は主席就任後初めて。外交筋や専門家によると、米国政府はこれまで北朝鮮の核開発をめぐって、中国に対して、北朝鮮に強硬な姿勢を取るように求めていたため、習主席が先に韓国を訪問することを歓迎しそうだ。

 しかし、中国は米国からの圧力を受けて訪韓を決めたわけではないようだ。専門家などによると、北朝鮮の金正恩第1書記が同国の同盟国であり、支援者であり、投資家であり、貿易相手国である中国に十分な敬意を払う気がないという印象を与えており、中国側がこれにいら立って、訪韓を優先したと考えられるという。習主席の訪韓には、日本やロシアの国益に関連する地域の外交、戦略、投資、歴史に関するさまざまな問題も関係する。

 北朝鮮は昨年、中国からの警告を無視して3度目の核実験を実施。外交筋などによると、金第1書記は中国訪問にほとんど関心を示しておらず、中国が計画している北朝鮮との通商関係拡大への自身の態度についても曖昧なメッセージを送っている。

 韓国の延世大学の朝鮮問題の専門家ジョン・デルリー氏は「中国政府は金第1書記を懲らしめて、2国間関係で誰がボスなのかを示す必要があると感じている」と話す。

 中国はまた、韓国の朴槿恵大統領と日本の安倍晋三首相の歴史問題をめぐる緊張関係を利用したいと考えている。日韓両国との軍事関係の強化を目指す米国の動きを邪魔するためである。

 韓国は米国の忠実な同盟国であることに変わりはなく、現在、韓国には2万8500人の米兵が駐留している。しかし、韓国は日本との間で軍事協力を緊密化することに慎重で、日本の戦時中の行いをめぐる安倍首相の姿勢を嫌っているという点で中国と共通点がある。

 南北対話も、北朝鮮の核問題をめぐる多国間協議も行き詰まるなか、韓国の政府関係者は中国に対し、北朝鮮に経済的な影響力を行使し、関係を縮小するよう促したい意向だ。

 習主席が韓国訪問を優先した背景には、金第1書記が中国への過度な依存を恐れ、ロシアや日本から支援や投資を引き出そうとしていることも関係している。

 安倍首相は北朝鮮による日本人の拉致という長年の問題を前進させることで国内で支持を得るようと、北朝鮮との関係改善を模索している。

 一方、ロシアはウクライナ問題をめぐって米国との間で緊張が高まっていることもあって、北朝鮮への関与を強めている。今年4月にはロシア議会が旧ソ連時代の北朝鮮の債務約100億ドル(約1兆円)を免除することで合意している。

 韓国の青瓦台(大統領府)が27日に発表した声明によると、習主席と朴大統領は「北朝鮮の核問題を含む朝鮮半島情勢に協力して対処する方法について意見交換を行う」という。

 中国外務省の秦剛報道官は中国が韓国、北朝鮮の双方に対して「公平な精神」を維持していると述べた上で、習主席の訪韓は「中国と韓国の戦略的な協力関係を新たな段階に引き上げる」ことになると述べた。