だから、この事故のときに日本人がどんな反応を示していたのかは私はリアルタイムで知らない。日本人もパニックに陥っていたのか、それとも対岸の火事として見ていたのか、私は歴史の一場面を見損なった。
風化しないチェルノブイリ事故
それからちょうど25年経って、チェルノブイリはもう風化してしまったのかと言えば、その逆にますます人間の歴史の中の重大な事件として不気味な輝きを増している。
この事故で放出された放射能は、広島で落とされた原爆の約600倍だと言われている。被災者は900万人。強制的に移住させられた人々は40万人となる。
当初、ソ連は徹底的な情報隠蔽をしてこれが被害を拡散させたと言われているが、このときに避難が遅れた住民たちは現在そのツケを遺伝子破壊という恐怖の現象で払っている。
放射能は目に見えないし、匂いもしないし、形もない。だから人々は安全だと言われれば安全だと思うしかないのである。
人は見えるものには必死で警戒するが、感じることができないものに関してはまったく警戒することができない。
警戒することができないし、「ただちに影響がない」と言うのであれば、放っておいても大丈夫だろうと自分に言い聞かせるしかないのである。
しかし、その間に人々の健康は確実に蝕まれていく。
チェルノブイリでは小児甲状腺ガンの発生率で、それが如実に現れるようになった。チェルノブイリはウクライナにあったが、被害がもっとも大きかったのは隣国ベラルーシである。
ベラルーシでは放射性ヨウ素が降り積もって女性や子供たちを被曝させたのだが、事故が起きる前の百万人当たりの小児甲状腺ガンの発生率は0.9%だったところ、その5年後1991年には26%に跳ね上がっていたのである。
チェルノブイリ・ハート
しかし、それで終わりではない。この数字は92年も、93年も、94年も、ずっと跳ね上がりっぱなしである。
甚大な原発事故で言えるのは、事故が起きた当初はまだ本当に影響が現れるわけではないということだ。本当の恐怖がやって来るのは、事故後4年から5年経過してからだ。
そのときに、子供たちがいかに甚大な被曝を受けたのかが分かって来るのである。そして、それは10年経っても20年経っても終わりがない。終わるどころかさらに被害が深化していく。
チェルノブイリ・ハートという映画があるようだ。2003年にアカデミー賞短編ドキュメンタリー賞を受賞したものだという。(公式サイト)
「チェルノブイリ・ハート」とは公式サイトの説明ではこう書いている。
穴の開いた心臓。生まれつき重度の疾患をもって産まれてくる子供。ベラルーシでは現在も、新生児の85%が何らかの障害を持っている。
これを読んであなたは感じなければならないことがある。ベラルーシでは85%の子供たちが「障害を持つ」のである。これはまさに絶望的な異常事態だ。
2016年の日本の子供たち
福島の原発事故が起きたとき、さかんに言われていたのは「格納容器が壊れることはない。原子炉は4重に守られており安全です」「メルトダウンすることはありません」「水蒸気爆発することもありません」ということだった。
すべて嘘だった。
格納容器は壊れた。メルトダウンした。水蒸気爆発も起きた。実は、今でも原発内では「小爆発が起きている」と言われている。にも関わらず何の報道もない。
東京は問題ないと言われている。しかし、市民団体「放射能防御プロジェクト」が東京の土壌調査を行ったところ、すでに多くの地区で放射線管理区域以上に放射性物質で汚染されたという結果になっている。(関連記事)
首都圏もチェルノブイリ並みに汚染されている
東京・江戸川区臨海町や、千葉・松戸市の紙敷と松戸、茨城・取手市藤代はそれぞれ「高汚染区域」に相当。埼玉・三郷市早稲田は、2番目の移住レベルに匹敵する値だ。他の地域でも「汚染区域」レベルの土壌が見つかっており、首都圏が広範囲にわたって「まだら模様」に汚染されている実態が分かる。
東京・豊島区巣鴨で採取された道路沿いの土砂から、1キログラム当たり6万超ベクレルという極めて高い値が検出されたのだ。仮に近隣の土壌が同程度に汚染されているとすれば、1平方メートル当たり401万ベクレルとなり、「居住禁止区域」レベルとなる。
福島県の子供たちは恐るべき将来を抱えることになるが、では東京は問題ないのかと言われれば、上記の記事を見ても分かるとおり、事故半年ですでにキエフ並みになっているということだ。では、キエフではどうだったのか。
ほとんどの子が身体が弱くなっていて、病気です
チェルノブイリ原発事故が起きてから、ここ5~6年、呼吸器系や胃腸系の病気に苦しむ子どもの数が急激に増えています。アレルギーや皮膚の病気にかかる子どもはたくさんいます。私は、お医者さんではないので医学的側面から子どもたちの健康状態について判断を述べることはできません。けれど、教育者として次のことを感じています。子どもたちは、一層精神不安になり、またほとんどの子が身体が弱くなっていて、病気です。
これからさらに放射性物質は降り積もり、食べ物からも内部被曝されていく。目に見える影響が出てくるのは2016年からだ。
奇形の子供たち、病気の子供たち、身体の弱った子供たち。それから、奇形の小動物、奇形の植物、奇形の捨て子。
それを目の当たりにして、やっと日本人は実態を知ることになる。恐ろしい事態はこれから始まろうとしている。
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