2014年6月29日01時43分
海外進出に乗り出す社長のようだった。19日、ミャンマーの首都ネピドーの教育省。名古屋大学の浜口道成総長(63)は切り出した。「政府の幹部のみなさんを博士課程に受け入れたい。そのための拠点をつくりたい」。相手の教育大臣は「我が国にも大きな助けになる」とうなずいた。
聴衆に訴えかける名司会者でもある。ヤンゴン大学に名大が設置した日本法律研究センターの1周年記念行事では、軽妙なトークで笑いを誘いながら、名大が誇るノーベル物理学賞受賞者の益川敏英・特別教授との対談を盛り上げた。
がん専門医の浜口総長が医学部長を経て総長に就いたのは2009年。すぐに「世界の名大」をめざす改革を打ち出した。18カ国を訪れ、約100の大学と研究や留学の協定を結んだ。
「産業界はアジアで生きていける人材を求めているのに、大学は欧米を向いてきた。それを変えたかった」。秋には、モンゴル、カンボジア、ベトナムに博士課程の拠点を置き、教員も送り込む。「国内では東大や京大ほど注目されないが、アジアでは違う」
学内では「急に計画が出てきて振り回されている」との声もあるが、調整と説明を重ねながら改革を進める手腕を文部科学省幹部は「戦略的なビジョンを持ち、学内外を巻き込むのがうまい」と評価する。
学長のリーダーシップ強化は、国と財界の悲願だ。少子化や国際競争の時代に「大学力は国力そのもの。変わらなければ、日本も地盤沈下する」(下村博文・文科相)との危機感がある。世界で渡りあえる人材を養成するには、従来のやり方を改める迅速な判断が必要だとして、学長の権限を強める改正学校教育法が20日に成立したばかりだ。
だが学長主導は、時に教員の激しい反発に遭う。
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