石橋美術館のコレクション960点、東京へ 16年秋、財団が運営撤退 [福岡県]
福岡県久留米市の石橋美術館を運営する石橋財団(東京都港区)は28日、同美術館に収蔵する美術品960点を、2016年秋までにブリヂストン美術館(同中央区)に移管する方針を明らかにした。石橋美術館を所有する市と結んだ運営管理の受託契約を16年9月末で解消するため。現在は常設展示している同市出身の洋画家、青木繁の代表作「海の幸」や「わだつみのいろこの宮」などを、市民が鑑賞できる機会は大幅に減ることになりそうだ。
石橋美術館は青木のほか、坂本繁二郎、古賀春江といった久留米ゆかりの画家を中心にした日本の近代美術コレクションで知られ、国宝「禅機図断簡 丹霞焼仏図」など古美術も多く収蔵している。
ブリヂストン創業者の石橋正二郎氏が建設して市に寄贈し、1956年に開館。市は77年から財団に施設を無償で貸与し、運営費は財団が負担してきた。現在は年約1億7千万円に上る。
財団は公益財団法人化に伴って事業内容を見直し、5月下旬、石橋美術館の運営から撤退する意向を市に伝えた。常務理事で石橋美術館の西嶋大二館長は「収蔵品には近代日本を代表する美術作品も多い。久留米市だけに置くのではなく、国民に広く鑑賞の機会を提供する必要がある」と移管の理由を説明。ただ「絵画の貸し出しや展覧会企画など美術館運営の側面支援は続ける」と述べ、期間を限った企画展への貸し出しには協力する考えを示した。
16年10月以降、美術館は市が運営する。具体的な運営体制などは未定だが、橋本政孝副市長は「多くの人に親しまれる美術館の運営を続けるため、郷土出身の画家を中心に作品を借りられるよう財団と協議を続けていく」としている。
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◆「久留米の損失大きい」市民落胆
あまりにも大きな損失だ-。石橋美術館収蔵のコレクション960点が東京に移管されることが明らかになった28日、地元福岡県久留米市では市民や関係者に落胆が広がった。
「久留米の芸術発展に大きく貢献した画家の絵が、身近でなくなるのは寂しい。久留米にとって損失は大きい」。久留米連合文化会副会長で洋画家の江口登さん(73)は、青木繁と坂本繁二郎の代表作が地元で鑑賞できる機会が減ることにショックを隠せない。
「長きにわたって質の高い美術作品に触れられたことに感謝したい」とした上で、「今後は市と市民が一体となって、文化芸術のまちづくりに力を入れる契機にしなければ」と決意を新たにした。
青木が少年時代に暮らした同市荘島町の家は復元整備後に一般公開され、石橋美術館とセットで訪れる人も多い。建物を管理する「青木繁旧居保存会」の荒木康博会長(64)は「旧居の入館者数にも波及しそう。財団には地元画家の作品だけでも貸し出しを優遇してほしい」と要望した。
=2014/06/29付 西日本新聞朝刊=