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FW大久保嘉人のサプライズ召集は失敗だったのか? (前編) の続き。
■ 攻撃の中心に据えるのであれば・・・。結果論ではなくて、W杯の本番でこの使い方をするのであれば、もっと早い段階で日本代表に召集すべきだった。早い段階といっても、2013年7月の東アジアカップか、10月 or 11月の欧州遠征のときか、2014年3月のニュージーランド戦か、2014年4月の日本代表候補の国内合宿のときのいずれかになると思うが、チャンスは何回かあった。にもかかわらず、ぶっつけ本番になった。
一方で、(スタメンではなくて)試合の終盤に切り札的に起用するだけであれば、サプライズで召集しても問題はなかった。むしろ、「サプライズ感」を演出することで生まれるプラスの要素はたくさんある。「途中で考え方が変わるケースがある。」とは言っても、攻撃の中心の1人として起用する選手をサプライズで召集するのはW杯に向けたチーム作りとしては「問題あり」である。
ずっと召集してきたMF清武、ここ最近は継続して召集してきたFW大迫とFW柿谷、何度か召集してきたMF齋藤学の状態が話にならないくらい悪かったのであれば、連携等には目をつぶってサプライズ召集のFW大久保に大車輪の活躍を期待するしかないが、4人の状態はそこまで酷くなかったと思う。最後の最後でザッケローニ監督がギャンブルに走ってしまった感は否めない。
■ 普段通りのことをしなかったこともう1つ解せないのはW杯のピッチでは川崎Fのときに見せている冷静でクレバーなプレーができなかったことである。FW大久保はジーコジャパンのときから定期的に日本代表に召集されており、南アフリカW杯ではベスト16入りに大きく貢献したが、日本代表のユニフォームを着て、日の丸を背負ってプレーするときはプレッシャーがかかるのか、本来のプレーができなくなる傾向にある。
決定機に力んで枠を大きく外すシーンはセレッソ大阪のとき、岡田ジャパンのとき、ヴィッセル神戸のときは珍しくなかったが、川崎Fではそういうシーンはめっきり少なくなった。それが2013年のJ1得点王という偉業につながったが、ブラジルのピッチでプレーしたのは昔のFW大久保であり、川崎FのFW大久保ではなかった。その理由はどこにあるのか、何故なのか。不思議に思う。
ブラジルW杯の日本代表を振り返るとき、モヤモヤ感が残るのは、「普段通りのことができなかったこと」と「普段通りのことをしなかったこと」の2つが主な理由だと思うが、攻撃に関しては後者である。相手の力が自分たちよりも上だったので「普段通りのことができなかった。」というのであれば現状を受け入れるしかないが、「普段通りのことをしなかった。」となると悔いは残る。
精一杯ポジティブに表現すると、「マイナス面があることを承知の上でプラスの効果が生まれることを期待して本大会ではFW大久保を攻撃の中心に据えた。」と言える。ザックジャパンらしく「リスク覚悟で攻めに出た。」と言えるが、リスキー過ぎた。「日本のパスサッカーは世界に通用するのか?」という点が何となく曖昧なままでブラジルを去ることになったのは非常に残念である。
■ 格好のオモチャちょっとネガティブな話になってしまったが、周囲と噛み合わなかったとしても、ボールの流れを止めてしまったとしても、1つのゴールや1つの勝利によって負の部分がかき消されるのがサッカーである。結果さえ出てしまえば「オールOK」とされる世界である。仮にFW大久保がギリシャ戦の決定機で決めていたら、大ヒーローになったはずで、召集の是非について議論する必要もなかった。
一時期のFW佐藤寿もそうだったが、「Jリーグで結果を残しているにも関わらず、日本代表に召集されない選手の代表例」として、ザッケローニ監督を批判することで飯を食っている人たちの格好のオモチャにされてしまったところはある。必要以上に期待感が高まってしまって、必要以上にプレッシャーを感じてしまって、本来の力を出し切れなかったとしたら、非常に不幸な話である。
「Jリーグで結果を出す。」というのは大事なことである。それが選手を評価するときの重要な基準であるのは確かだが、待望論を出すときはプレースタイルが今の日本代表に合うのか?日本代表でどういう仕事ができるのか?いきなり合流してフィットするのか?などなど複合的に判断する必要がある。「監督が召集していない理由」や「召集しなかった理由」は真面目に考える必要がある。
■ 大久保嘉人のサプライズ召集は失敗だったのか?「Jリーグを観ていないから。」、「その選手のことを知らないから。」、「(監督が)無能だから。」といったものを理由に挙げる人もいるが、議論するときに出される意見としては極めて低レベルで、不真面目である。また、ゴール数やアシスト数や失点数といった試合を見なくても分かる要素だけで待望論を流すのもNGである。これからの4年間でサッカーを語るときの質を上げていく必要がある。
話が横にそれてしまったが、今回のFW大久保のサプライズ召集というのは、それだけいろいろなことを考えさせられるトピックスだった。何十年か後にブラジルW杯を振り返ったとき、「大久保嘉人のサプライズ召集は失敗だったのか?」と未来の人に質問されたとき、何と答えるのが適切なのか?ブラジルW杯が続いている今の段階で正確に答えるのは非常に難しいと言える。
期待感がMax付近まで高まっていた反動もあって、ギリシャ戦とコロンビア戦で決定機を逃したFW大久保に対して批判的な声が増えていると聞くが、2・3回程度の決定機をゴールに結び付けられないことは良くある話である。それでもって批判される必要はないが、サプライズ召集の是非についてはきちんと議論されるべきで、先のとおり、簡単には結論が出ない話である。
FW大久保という選手は1トップのレギュラー候補のFW大迫やFW柿谷と比べても遜色ない実力を持ったストライカーで、昨シーズンと今シーズンは文句の付けようのない成績を残している。これは間違いない。ただ、結局のところは、最後の最後にサプライズで召集するには、思った以上に万能で、思った以上に有能で、周囲に与える影響力があまりにも強すぎたと言えるのではないかと思う。
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