音声通話定額を巡っての携帯業界横並びの美談
山本 一郎 | 個人投資家
山本一郎です。音声通話が多いほうです。
携帯電話の音声通話定額サービスを巡りドコモとソフトバンクがいち早く施策を打ち出した後、最後に残されたKDDIは一体どう対抗するのかと見守っていたわですが、あまり面白い展開になることもなく再び事実上の三者横並びという結果に終わりました。
KDDIも国内通話定額プラン導入、3社2700円で横並び(ロイター 14/6/25)
今回のKDDIの発表については、IT系ニュースサイトなどが概ね事実のみをなぞる報道に徹しているのに対して、ロイターはしっかりと「協調的寡占」といった言葉を使うなど業界のあり方に対して批判的な切り込みを見せたのはなかなか痛快です。
まあ、仰るとおりですわね奥様。
ロイターはさらに楽天リサーチの調査結果を引き合いにして通話に対するニーズが年々低下している現状を指摘した上で以下のような論考を記しています。
ここでは記事の流れからKDDI(au)1社のデータを取り上げていますが、音声ARPUの下落に歯止めをかけたいと思っているのは当然ながら携帯キャリア全社の思惑でもありましょう。
時間が前後しますが、音声通話定額制に基づく新料金プランを実施済みだったドコモの株主総会では、やはり事実上の値上げを狙った施策なのではないかという質問も出ていたようです。
ドコモ株主が質した「音声定額」への疑問(東洋経済 14/6/19)
ものは言い様という感じがありありとしますね。もちろん言いたいことはよく理解できますが。複雑になるのを避けてシンプルに値上げしたということでしょうか。
で、このような現状に対して、当のKDDI社長である田中氏は発表説明会の質疑応答の場で「通話定額の料金、2700円はあまり通話しない人にとっては高いのでは?」という問いかけに対して以下のように回答されたようです。
いや、この人は本当に天然なんでしょうね。もしこれが冷徹に計算しての言動だとすするとすごく恐ろしいわけですが……。ちなみに「プロ」というのはネット民界隈でよく使われる田中社長の愛称です。
いずれにしても、中の人にとっても「少し高い」通話料金設定が今後ユーザー動向にどう影響するのかは気になるところです。
で、こうした大手3社横並びなんですが、他にもどうやら横並び施策が開始されるようです。
ドコモがスマホ画像を圧縮する「通信の最適化」を導入へ、その狙いは?(日経トレンディネット 14/6/25)
「通信の最適化」という話については、しばらく前に拙ブログでも取り上げたばかりの話題です。
ソフトバンクモバイルを中心に、業界界隈における「通信の最適化」問題が再燃したようです(14/6/6)
そのときはソフトバンクの話でしたが、日経トレンディネットの記事を信用するならドコモも同じ方向へ向かっている可能性があるようです。で、こうした状況から以下のようなことが考察されます。
携帯3社仲良く揃って、今度は通信の最適化を巡ってのオプション料金競争みたいなものが起きる可能性は十分にありそうです。で、またきっと蓋を開けてみたら事実上の横並びになって、ユーザーからすればどこを選んでも単なる値上げというオチが待っているのかもしれません。仲良きことは美しきかなという武者小路実篤の言葉を思い出してしまいました。まさに美しい国であります。
ここで美しい協調の世界に漬物石を投げ込むべくmixiあたりが通信業界に参入してですね、