お酒をこよなく愛する「Wired」の編集者、アダム・ロジャースの仕事術

2014.06.28 21:00

アダム・ロジャース


敏腕クリエイターやビジネスマンに学ぶ仕事術「HOW I WORK」シリーズ第73回。Adafruit でウェアラブルガジェットを次々に生み出すベッキー・スターンさんに続く今回は、昼は「Wired」マガジンの編集者であり、夜は別の顔を持つアダム・ロジャース(Adam Rogers)氏にインタビュー。

アダム・ロジャース氏は、2つの顔を持つ男。昼は「Wired」マガジンの編集者として、科学と雑学に関するオタク記事を作り、夜はお酒を飲んでいます。いえ、お酒に関する文章を執筆しています。

ロジャース氏は、新著『Proof: The Science of Booze』において、人類とお酒の長い関係や、我々をお酒に向かわせる複雑な科学について解説しています。でも、それは夜の部の話。今回のインタビューでは、昼の部の仕事術を聞きました。

氏名:アダム・ロジャース(Adam Rogers)
居住地:米カリフォルニア州サンフランシスコ、バークレー
現在の職業:Wiredの編集者、『Proof: The Science of Booze』著者
現在のコンピュータ:13インチMacBookAir(自宅用)、13インチMacBookPro(職場用)
現在のモバイル端末:iPhone 5、iPad2、Kindle Touch
仕事スタイル: 散発的に

           


── 「これがないと生きられない」というアプリ・ソフト・ツールは?


「Evernote」「Mendeley」「Dropbox」「Feedly」です。

かつては、紙のフォルダに雑誌の切り抜きをため込み、今後のネタとして追跡したいものはファイルに整理していました。今では、そのほとんどをクラウド上で行っています。重要度の差はあれど、フォローしているRSSフィードは数百件。だから、Google Readerを失ったのは、仕事においても人生においても大打撃でした。それに代わるもっともマシなサービスは、「Feedly」だと思います。メモや引用を書き留めていた日誌の代わりになっているのは「Evernote」。紙の日誌には革のカバーを買っていましたが、今では7×9マスのモレスキンを愛用しています。Evernoteには、私が興味を持った地図や履歴が蓄積されています。これは、紙のノートや日誌にはなかったもの。紙のフォルダーのタグ付きバージョンとでもいいましょうか。それらは、そのまんま「story ideas」という名前のフォルダーに保存されています。

同じ目的で、「DevonThink」を使っている同僚もいます。でも、使い方がよくわからないし、使い方を調べると言いながら、先延ばしにしている自分がいます。正直、人工知能の類はあまり信用していないんです。コンピュータに関係性が作れるなら、コンピュータに小説を書いてもらえばいい。

科学関係の記事も扱っているので、論文検索もよくします。そのためのアプリはたくさんありますが、私が好きなのは「Mendeley」。なぜなら、さまざまなガジェットで使えるクラウドだからです。それに、出始めのころから使っているので、愛着もありますね。EvernoteとMendeleyのおかげで私の本が実現できたし、Dropboxのおかげで、失う心配をせずにいつでも自分のメモにアクセスできています。

電話インタビューに関しては、早打ちが得意なので、コンピュータでメモを取っています。でも、面と向かってのインタビューの場合、紙のノートです。特に、バーモント州リッチモンドにあるStationers, Inc.の「Reporter's Note Book」801番を愛用しています。私の知る限り、同社はウェブサイトを持っていません。注文は、電話でする必要があります(とてもフレンドリーに対応してくれます)。上着のポケットにぴったりな4インチ×8インチのサイズに赤い罫線、厚紙のカバーはしっかりしていて、下敷きとしても使えます。それに、再生紙じゃないのもいいですね。ペンは、グリップの感触と線の細さが気に入って、使い捨ての「Uniball Micro」を使っているのですが、これが水性インクなので、リサイクル紙だと滲みやすいんです。

書き物はもっぱら「Word」ですが、「Scrivener」も魅力的ですね。

ヘッドフォンは2つ持っています。1つは「Klipsch」の耳に入れる小型のタイプで、飛行機に乗るときに使っています。もう1つは、装着型の「Koss」です。


── 仕事場はどんな感じですか?


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職場では、スプリットキーボードとトラックマンホイールを使っています。トラックマンホイールは子どものころの積み木を使って、ボール部が横ではなく上に来るようにセットしています。こうしないと、ひじの痛みがひどくて。でも、見た目が間抜けですよね。

モニターとコンピュータを並べて置いています。モニターは、メール、チャット、Twitterなどのコミュニケーション用、メインウインドウは仕事用です。

家にもデスクがありますが、ひどい状態です。バークレーのコワーキングスペースにもデスクを借りていて、そこにはほぼ何も置いてません。そこに行くときは、ラップトップとトラックマン、ラップトップの画面を高く持ち上げられる折り畳み式のコンピュータスタンド、そしてBluetoothキーボードを持って行きます。


── お気に入りの時間節約術は何ですか?


何かを見つけなくては、と思っています。


── 愛用中のToDoリストマネジャーは何ですか?


ToDoリストを作ることはめったになくて、作るのはやることが盛りだくさんなのに短時間でやらなければならないときだけですね。コワーキングスペースの使用料の支払いやコーヒーメーカーのフィルター交換など、繰り返しのものにはスマホのリマインダーを使います。でも、それ以外では裏紙やノートに書くことが多いです。


── 携帯電話と PC 以外で「これは必須」のガジェットはありますか?


キーホルダーに小さなLED懐中電灯を付けています。これ、正直な話、今まで所有したモノの中でいちばん便利です。玄関の電気が消えているときに鍵穴を見つけたり、ソファの下に入ってしまったLEGOを見つけたり、飲み屋を出るときに忘れ物がないか確認したり...。

それから、Good Gripsの小さな計量カップも持っています。横からではなく上から目盛りを読めるのでとっても便利。3/4オンスの目盛りがなかったので自分で書きましたが、今ではお酒を混ぜるときの主力として、ジガーの代わりを担っています(ジガーも趣があって好きですが)。


── 日常のことで「これは他の人よりうまい」ということは何ですか?


ものすごい速読家です。


── 仕事中、どんな音楽を聴いていますか?


何よりも静寂を好みますが、いつでもそれが実現できるわけではありません。特に、カフェで仕事をするときはなおさら。そんなときこそ、ヘッドフォンの出番です。非常に長いプレイリストを作っています。歌詞がないもの限定ですが、ジャズやクラシックはあまりピンときません。だから、基本はEDMかテクノです。それ系の音楽は、コンピュータがコンピュータのために作ったものだと思います。

仕事をしていないときは、「Thrilling Adventure Hour」「99% Invisible」「KEXP Music that Matters」「KCRW Morning Becomes Eclectic」「Roderick on the Line」「Nerdist」「Nerdist Writers Panel」などのポッドキャストを聴いています。


── 現在、どんな本を読んでいますか?


ちょうど、Helene Weckerの『The Golem and the Jinni』とAnn Leckieの『Ancillary Justice』を読み終えたところです。どちらもSFの秀作です。次は、James P. Carseの『Finite and Infinite Games』を読もうと思っています。雑誌は大量に一気読みします。『Chemical and Engineering』『News』『Aviation Week』『Nature』『Science』『IEEE Spectrum』『Popular Science』など。自分の中でいま流行っているのが、Greg Ruckaのマンガ『Lazarus』と、Brian K. Vaughanの『Saga』。このところはまっているウェブサイトは『Punch』。新しいお酒のレビューだけでなく、お酒についてスマートに考えるサイトです。『Deadline』も気に入ってます。


── あなたは外向的ですか、内向的ですか?


内向的です。でも、長い間外向的なふりをしてきたので、今ではそれが染みついています。


── 睡眠習慣はどのような感じですか?


子どもがいるので、睡眠習慣は自分だけのものではありません。個人的には、午前2時に寝て、11時か正午ぐらいに起きてダラダラして、23時ぐらいから書き物を始めるという生活が理想なのですが......それはできませんね。仕方ないので、23時には寝ることにしています。息子たちに起こされなければ、目覚まし時計に起こされます。


── あなたが受けたものと同じ質問をしてみたい相手はいますか?


Thrilling Adventure Hour』のライター、Ben BlackerとBen Ackerです。


── これまでにもらったアドバイスの中でベストなものを教えてください


映画『シェーン』を見たあとに、父親にこう言われたことがあります。

「いいか、いつだって早撃ちが得意な奴はいる。それに勝つには、精度を上げるしかないんだ」


もう1つ、友人のMatt Baiからの書籍執筆についてのアドバイス。「売れる本などない。君の本も売れない。だから、誰かに売れる本の書き方を教えてもらおうなんて思うな。なぜなら、誰もそんな方法を知らないから。売れなくても、自分の本棚にはそれがあるのなら、こう言ってみてはどうだろうか。"少なくとも自分は、自分が欲しいと思える本を書いたのだ"と。さもないとこう思ってしまうだろうから。"もし自分の欲しいと思えるような本を書いていたら、売れていたかもしれない"と」


── そのほかに読者に伝えたいことがあればどうぞ


私は、ものすごい大量のアルコールを購入します。だから、友人と私は、ビンに家を乗っ取られないために、キャップ付きの350ml(ハーフボトル)を買うことにしています。それと、あまり使わないミキサーや、1回に0.5オンスも使わないようなお酒は、2人で共有して、スペースをセーブしています。

それから、もしアルコールに関する本を書くなら、書きながらそれを飲みたくなってしまうかもしれません。でも、それはうまく行かないので要注意。


Andy Orin(原文/訳:堀込泰三)

  • WIRED VOL.12 (GQ JAPAN.2014年7月号増刊)
  • コンデナスト・ジャパン
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