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「情熱を追いかけろ」は、キャリアガイダンスでよく言われることです。しかし、本当にこれは良いアドバイスでしょうか？　成功は、あなたがすでに持っているスキルを磨くことでも得られます。

情熱を追いかけることが成功につながるという考え方は、70年代に登場し、数十年の間に誰もが信じるようになりました。ただ、その「情熱」は、仕事や学位と関係がない場合がほとんどでした。つまり、スキー、ダンス、読書に情熱を燃やす人々は問題を抱えることになったのです。情熱を意志による錬金術で現実的なキャリアに変換しろとささやく文化に浸った労働者の多くは、終わりなき転職の連鎖や、専門性の欠如に苦しむようになりました。

カル・ニューポート氏は、その著書『So Good They Can't Ignore You（誰もが無視できなくなるまでスキルを高めよ）』の中で、「情熱の罠」について語っています。また、情熱を追いかけずに満たされるためのアドバイスもしています。以下の4つのコツが、あなたをプロフェッショナルとしての充足感へと導いてくれるでしょう。

好きなことをするな、していることを好きになれ

キャリアに満足するもっとも重要な要素は「経験」です。（一般的に、反復作業的で退屈だと思われている）大学事務職員の満足度調査を行ったところ、回答者の3分の1が、自分の仕事を「ジョブ」、つまり単なるお金を稼ぐ手段だと考えていました。別の3分の1は、「キャリア」もしくは、より良き仕事を得るための過程だと考えていました。ところが、残りの3分の1は、同じ仕事を「天職」とか、自分の人生やアイデンティティに関わる重要な仕事だとみなしていたのです。

職人マインドを持つ

情熱マインドを持つ人々は「あなたは本当は何がしたいの？」と尋ねます。この質問は、今の仕事は本当に「正しい」のかという強迫観念を生み出します。彼らはいつでも仕事の不満点を見つけます。そんなことをしていれば、仕事に対する満足感や幸福感は消えてしまいます。反対に、職人マインドを持つ人にとっては、どんな分野であれ、成功とはつねに品質のことです。その仕事が「正しい」かどうかでなく、仕事の品質にフォーカスすれば、やるべきことはひとつです。さらなる改善のために必要なことをするのです。

今している仕事の質を上げる。それを最優先事項としてください。

ハードに実践し、コンフォートゾーンから出る

では、どうすれば職人になれるのでしょうか？　実践がカギです。

チェスプレイヤーはマスターになるためにおよそ1万時間を費やします。また、本当のプロたちはそのレベルに到達しても、さらに磨きをかけるために実践を続けます。彼らは真剣に勉強し、ニューポート氏が言う「考え抜かれた実践」に取り組みます。チェスプレイヤーにおける「考え抜かれた実践」とは、慣れ親しんだコンフォートゾーンから出て、難易度の高いチェスの理論を研究することを意味します。

「考え抜かれた実践」をするなら、大変な苦労が待っています。不快な気持ちを味わうかもしれません。しかし、それこそが真に熟達する唯一の道なのです。

希少で価値のあるスキルを身につける

職人マインドを持てば、特別なスキルを獲得し、自分に磨きがかかります。希少なスキルを持つ人は、創造的で自主性の高い仕事につけます。こうした「キャリア資本」とも呼ばれるスキルが、あなたを他の人々から際立たせることになります。

例えば、新進のアプリ開発企業が2人のプロダクトデザイナーを雇ったとします。ネッドはデジタル初心者ですが、イラストと印刷物デザインの経験があります。彼はセンスの良さが功を奏し雇われました。一方、ダンは、アプリデザインを真剣に勉強し、その道のプロとなるべく研鑽を積んできました。もし企業が財務的事情で、どちらかを解雇するとしたら？　ネッドが解雇されるでしょう。なぜか？　ダンは希少で価値のあるスキルを持っているからです。

情熱を追いかけることは、現代における理想です。しかし多くの場合、情熱はあなたを欲求不満にします。情熱を追いかけるかわりに、職人マインドを持って、希少で価値のあるスキルの獲得にフォーカスし、今している仕事の質を高めてください。そうすれば、キャリアが積み上がるだけでなく、責任感、スキルの熟練、自信に基づいた「情熱」が育まれることでしょう。

The Secrets to Career Contentment: Don't Follow Your Passion｜Fast Company

Sebastian Klein（原文／訳：伊藤貴之）
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