安倍晋三首相は昨年1月にインドネシアを訪問した際、首脳会談で憲法改正の趣旨について説明した。スシロ・バンバン・ユドヨノ大統領は「日本が憲法を改正し、国防軍を保有することは、アジアの平和と安全に寄与するだろう」と積極的に歓迎する意向を表明した。インドネシアだけでなく、かつて日本の侵略を受けたた東南アジア諸国が日本の再軍備を歓迎する理由は何か。
それは、日本の政府開発援助(ODA)にある。日本は戦後、侵略国のイメージをぬぐい去るため、東南アジアに巨額のODAをばらまいた。インドネシア向けODAは420億ドル(現在のレートで約4兆2600億円)に達する。インドネシアの鉄道・橋梁・道路・工業団地・学校の多くが日本のODAで作られた。フィリピン、ベトナム、マレーシアも同様だ。1990年代、日本のODA支援額は世界第1位だった。
日本は今回、東南アジア諸国との軍事的協力の強化にODAを活用すると決めた。安倍首相は「ODAで外国軍隊の支援はできない」という原則を年内に改正する方針だという。27日付朝日新聞が報じた。災害分野で外国軍を支援したいというのが、日本が掲げる名目だ。災害救助のため、ODAで軍用車両・輸送用船舶・航空機などを支援したいというわけだ。自衛隊を現地に派遣し、東南アジア諸国の軍隊に関連装備の運用技術を伝えることも計画している。
「軍事分野解禁」はODAを利用した武器輸出も含んでいる。日本は最近、武器輸出禁止措置を解除した。朝日新聞は「武器輸出許容、集団的自衛権行使、ODAの軍事分野活用は、安倍首相の『安全保障三点セット』」と評価した。領土などをめぐって中国と対立している東南アジア諸国に対して軍事的支援を強化し、長期的には集団的自衛権を活用した軍事同盟の拡大まで狙っているという分析もある。既に日本は、ODAを利用してベトナムとフィリピンに巡視船の提供を決めた。
日本のこうした動きは、開発途上国の貧困対策というODAの趣旨そのものを薄めてしまう、という批判も出ている。日本は2000年代に入って、不景気を理由にODA関連予算を大幅に削減した。97年は1兆1687億円あった関連予算が、昨年は5502億円まで減った。支援額の規模でも、日本は米国、英国、ドイツ、フランスに次ぐ世界第5位へと後退した。また安倍首相は、ODAの支援対象を開発途上国以外の国にも拡大する方針だ。高速鉄道や原子力発電所の輸出にもODAを積極的に活用したいというわけだ。
日本の市民団体は「ただでさえ減っている開発途上国支援予算を安全保障や輸出に活用したら、ODAが骨抜きになりかねない」と批判した。