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地震予測情報 『SensorNeT ver.1.0』について

【東日本大震災には前兆現象が観測されていた?】

 

 

 

 2011年3月10日。東日本大震災の1日前、米航空宇宙局(NASA)ゴダード宇宙科学研究所のディミター・ウズノフ上席研究員(当時)がモニターしている衛星データを解析画像には、東北沖に突如現れた巨大な熱源の存在が捉えられていました。

 

 

 その熱エネルギーは大型台風並み。真冬の東北沖に台風が発生するわけはありませんから、そのエネルギーは「気象現象」とは異なる理由で発生したとしか考えられません。

【犯人はラドン? ウズノフ氏のラドン仮説】

 

 ウズノフ氏は、この原因を巨大地震の前に地中から大気中に放出された放射性の「ラドン」ガスだと考えています。

 

 巨大地震が発生する前には、震源周辺で細かい地層のひび割れが発生し、その隙間から地下に蓄えられていたラドンが大気中に放出されます。

 

 そして、大気中に放出されたラドンは周囲の水蒸気を吸い付け、それによって「潜熱」が発生します。それが気象衛星で確認できる熱エネルギーの塊なのだという仮説です。

 ウズノフ氏は、この「ラドン仮説」に基づき、地震短期予測の技術を実現させようと各国の研究者と共同して2007年に衛星温度異常監システムのプロトタイプを開発し、新潟中越沖地震(2007年7月16日)の2日前や、中国の四川大地震(2008年5月12日)発生の6日前にも、同じような熱源の検知に成功しました。

 

 

【統合的観測システム「Sensor NeT」の構築】

 

 

 2010年、このシステムはさらに進化し、衛星からの熱源観測だけでなく、地震の前兆現象として電離層における電子数の変化などを観測する「電磁気学的アプローチによる地震短期予測」など、他の予測(観測)手法を複合的に組合せ、岩石圏・大気圏・電離圏における前兆現象をキャッチする統合的観測システムの構築へ向けた試みがスタートします。

 

 

 2012年からは、このシステムに「Sensor NeT ver.1.0」(米国特許出願中)という名前が付けられ、いくつかの国・地域でマグニチュード5.5以上の地震に対する予測期間1日~30日の試験的な短期地震予測研究が行なわれるようになりました。

【Sensor NeT ver.2.0の実現に向けて】

 そして2014年。ウズノフ氏は日本を舞台に、より高度な観測システム「Sensor NeT ver.2.0」の構築を計画しています。

 

「Sensor NeT ver2.0」では、よりさまざまな観測要素を盛り込むとともに、衛星からの「熱源探知」だけでなく、地上にラドン観測拠点を設置し、実際のラドン放出量を計測します。

 

 このため「ハザードラボ」では、今後半年から1年以内に、国内数カ所に設置されるラドン観測設備をSensor NeTに提供し、早期の「Sensor NeT ver.2.0」完成に協力することとし、まず日本国内における「Sensor NeT ver.1.0」(現行バージョン)による地震予測情報を公開していくことにしました。

 

 現段階=「Sensor NeT ver.1.0」のおける地震予測の空間的誤差は半径約200キロ、時間的誤差は1日~30日ですが、ウズノフ氏は「Sensor NeT Ver.2.0」に移行することで、この信頼度を空間的誤差が半径50キロ、時間的誤差を5日以内にまで向上させることが可能と考えています。

 

 ハザードラボでは、この「Sensor NeT」が「減災への歩み」を加速させる、真に有用な地震予測技術に発展することを願い、新たな公開・検証の対象技術として採用し、支援していくことを決定したものです。

【ウズノフ氏について】

ディミター・ウズノフ博士 (Dimitar Ouzounov)
チャップマン大学 准教授/研究院
シュミット・カレッジ 地球環境科学研究科
科学技術物理学、計算科学と工学 専門

 

学歴
聖イヴァンリルスキー(鉱業地質大学)大学で学士号
ソフィア工科大学で地球物理学の科学研究修士課程
ロシア科学アカデミー(ロシアの最高学術機関)博士号

 

略歴
地球物理学、衛星地球観測、およびジオプセッシングの研究実績を20年以上もつ科学者。 地球ダイナミクスの大気圏内観測の研究を主に行っています。 地震のプロセスに関連した「大気電離圏結合の新たな地球物理学理論の検証」に貢献した。 地球の電磁環境を調査することによって、自然と人的災害に関連した大気環境の高度な診断方法を考案した。 地震ハザードのリスク評価のために、地上観測データの利用に関する国際基準作りに取り組んでいます。また、複数の米航空宇宙局(NASA)の助成金を獲得し、150以上の論文を発表し国際的に評価が高い研究者である。 現在は、チャップマン大学で自然災害における衛星利用を研究している。 これらに関して、数多くの国際会議で基調講演の実績もある。

 

ディミター・ウズノフ氏について(チャップマン大学HP)

 

 

【地震予測情報の取り扱いについて】

 『ハザードラボ』で公開する「地震予測情報」につきましては、あくまでリスクに備えるための「参考情報」として提供しているものです。この「地震予測情報」は、予報でもなく、注意報や警報でもありません。予測精度について保証するものではありません。

 

 「地震予測情報」を公開する目的は、ハザードラボをご覧になった皆様が、精度も含めて受け取った情報を自分なりに解釈し、ご自身の安全を守るための選択肢として活用いただくためです。

 

 気象予測も長い年月をかけて受け取る側のリテラシーが成熟し、現在のように日常生活に違和感のないサービスになりました。同じように「地震予測」も、いつの日か(今の予測方法とは違うものかもしれませんが)日常生活で「当たり前」のサービスになる日がくるとわれわれは信じています。

 

 そんな未来に向けて、まず「地震予測情報というものに慣れる」こと、そしてその情報をどう解釈し、どう日常の行動につなげていくか?それを考えて頂く、きっかけになれば幸いです。

 

株式会社アース・サイエンティフィック
ハザードラボ運営事務局一同

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