【スピーカー】
Trunk Club Founder and CEO Brian Spaly(ブライアン・スパリー) 氏
Boxed.com CEO Chieh Huang(チー・フアン) 氏
【インタビュアー】
TheWave 湯川鶴章 氏
めんどうくさがりのメンズ向けファッションECサービス「Trunk」
湯川鶴章氏(以下、湯川):自己紹介をお願いします。
ブライアン・スパリー氏(以下、スパリー):Trunk Clubという会社のCEOをやっています。シカゴを拠点にした、男性向けのスタイリングサービスです。
チー・フアン氏(以下、フアン):私はBoxed.comという会社の共同創業者兼CEOをやっています。モバイル端末専用のホールセールクラブをしています。
湯川:スパレーさん、御社のサービスを詳しくお聞かせいただけますか?
スパリー:買い物嫌いの男性がかっこよくなるための、シンプルなサービスです。会員に、衣類の詰まった箱を送ります。「トランク(Trunk)」と呼んでいるのですが、普通の郵便で送って、だいたい10アイテムくらい入っている箱です。ジーンズ、シャツ、セーター、靴、それに高級品の部類に入るメンズのファッショングッズが入っています。
受け取ったお客さんは、気に入ったらそのまま持っていていいし、気に入らなかったら送り返してもいいんです。何度でも使えるサービスで、シカゴオフィスにいるスタイリストと直接やりとりします。我が社の基本的な方針は、「面倒くさがりでお店に行きたくない男性の方が、かっこ良くなるのを願っています」というところです。
湯川:いろんなタイプの男性がいるなかで、洋服をどうやって選ぶのですか?
スパリー:会話です。メール、電話、時にはスカイプなどを使って彼らと実際に話すんです。職場、年齢、どんなスタイルに憧れているのか、何が必要なのか。
そういったことを確認してから、必要なものをお送りします。こういうサービスだから、私たちのスタイリストはフルタイムで働いています。毎日、一日中、男性陣のスタイリングを助けているから、サイズ感や洋服の相性などすべてに長けているんです。
会話とアルゴリズムで最適なファッションを
湯川:顧客の写真とか動画を使ったりするんですか?
スパリー:使いますね。彼らが好むスタイルを表現するためにいろいろな方法を駆使しています。スタイリストのためのウェブサイトもありますし、トレーニングもしています。
お客様にはお見せしていませんが、スタイリストがきちんとお客様に見合ったものを送れるようにするためのテクノロジーやアルゴリズムなんかもあるんです。アルゴリズムはお客様の身長、体重、ブランドなどによって変わってきます。
湯川:カスタマーの生活スタイルについてはどう考えていますか?
スパリー:とても大切です。ただ、何が必要なのか教えていただく必要があります。例えば、あなたがウォールストリートの銀行員だったとして、ゴルフをするための洋服を探している。銀行員だからといってスーツとネクタイを送るわけではありません。
私たちはあなたに電話をして、何が欲しいのか訊ねます。一番よくあるリクエストは、奥様とのデートで着ていく服ですね。アメリカで最近起こっている現象ですが、昔は単純にスーツとネクタイを着ていけばよかったものが、今ではブレザーやジーンズなんかも着るようになって、オシャレになってきていますし、人々はファッションにより気をつけるようになっています。
複雑になってきているんです。だから、ファッションアドバイザーの存在はとても役に立つのではないでしょうか。
ファッションに考える時間をアウトソース
湯川:自己流にするのは難しそうですね?
スパリー:そうですね。男性はよりファッションに気を遣うようになってきたと思います。そして彼らは往々にして、ショッピングに興じる時間をもっていない。だからそこをアウトソースしたらいいと思ったんです。
湯川:何人くらいのスタイリストがいらっしゃるんですか?
スパリー:フルタイムで150人います。
湯川:顧客の数は?
スパリー:だいたい75,000人です。
湯川:どうやって収入を得ているんですか?
スパリー:卸売りで買って、小売りとして売るんです。大型デパートと同じビジネスモデルですね。
湯川:店舗と比べて価格は競争的なのですか?
スパリー:価格は基本的に同じです。そしてサービス自体は無料です。サービスの売上はないんです。
湯川:いつ起業されたんですか?
スパリー:2009年の12月にシカゴで立ち上げしました。
湯川:今どんな感じですか?
スパリー:とてもうまくいっていますよ。この夏には黒字化しましたし、300人以上の社員がいます。来年は売上高1億ドル(約100億円)を目指しています。
湯川:海外進出は?
スパリー:考えています。アジア市場、特に日本と中国をみています。
湯川:なぜ日本と中国?
スパリー:とても興味深い国ですし、男性がアメリカの男性と同様の問題を抱えていると思うからです。よく働いていて、家に帰れば家族との時間があって買い物なんて行く時間がないのです。
めんどうくさがりな人のために
湯川:ありがとうございます。フアンさんはどうですか?
フアン:そうですね、私たちはコストコ、BJ、サムズクラブなどのホールセール市場をターゲットにしています。私たちは時間がなかったりめんどくさかったりして、地域のホールセールクラブ(卸売り営業をしている会員制の倉庫型店舗)に行けない人のためのホールセールクラブです。
近くにあるけど、午後まるまる使って行くのは無駄だなぁと思っている人や、例えばマンハッタンに住んでいて車を持ってなくて、大きな商品などをアパートまで運べないなんていう人が対象です。便利なホールセールクラブなんです。
湯川:まとめ買いに特化してますよね? なぜですか?
フアン:私自身がマンハッタンに住んでいるときに感じていた問題だったんです。私はニュージャージーで育ち、週末は両親とコストコによく買い物に行っていました。それでマンハッタンに引っ越したときに、なんだか全てのものに無駄に払いすぎているように思っていたんです。
掃除道具だったり、トイレットペーパーだったり、朝ごはんのアイテムだったりといったものは、毎日使うものですよね。Duanereade(アメリカの大手ドラッグストアのチェーン店)とか近くのお店に行って何かを買うときでも、常に多く払いすぎているような気がしていた。
私はニューヨークに住んでいた頃は車も持っていなかったですし、単純に午後をまるまる使って最寄りのホールセールクラブに行く時間もなかった。だからこうやって、今やってるビジネスでこの問題を再確認したときに、これまで誰も問題を解決しなかったということに気づいて、とてもショックを受けました。私と同じような問題を抱えている人が何百万人といるのに、です。
どの小売業者よりも先を行きたかった
スパリー:一つ気になるのは、ニューヨークに住んでいたときに私のアパートにはまとめ買いの量で配送された荷物を置くスペースがなかったんだけど、そんな問題はあるの?
フアン:それは課題ですね。ちゃんとしたサイズを見つけなくちゃいけない。中には90オンスの容器で運んでいるものもある。特に都会に住んでいる人にとってはよくないんです。でも同時に、レギュラーサイズのアイテムをマルチパックで運んだりもしています。いろいろな種類の形式のものを調整、確認していくこと、それに尽きますね。
湯川:同じことをやっている競合がいないというのはちょっと想像し難いんですが、どうでしょう?
フアン:当初、私も全く同じことを感じました。私自身が抱えていた課題でしたしね。マンハッタンに何年住んでも、代わりになるものは何も見つからなかった。ウェアハウスクラブはすごく革新的な産業というわけではないんですよ。ここ20年で入ってきた新参者というところでしょうか。
湯川:モバイル分野を選んだのはなぜですか?
フアン:私はこの前にモバイルゲームの会社をやっていたんです。そこでものすごい成長を見たんですよね。プラットフォームの成長です。最初に私たちがモバイルゲームに参入したときには、ほとんど誰もモバイル端末でゲームなんてしていなかったんですよ。
早送りして3年、そうすると今度はほとんどの人がモバイル端末でゲームをしている。そのシフトには気付いていました。波が打ち返そうとしている、だから私たちは他のどの小売業者よりも先を行きたかった。よく知っている分野ですしね。
私たちにとって、モバイル専用にすることはとても自然なことでしたし、消費者にとっても意味のあることでした。多くの方が家でソファに座って、テレビを見ながら買い物をします。ユーザー体験が鍵だというのがわかります。それは仕事から帰って、ウェアハウスにもどこにも行きたくないという人たちのためのものなんです。彼らは、家のソファでリラックスしながら買い物ができるんです。
- 1
- 2