001.終わりの始まり
遥か大昔、人類は絶滅の危機を迎えていた。
当時最新鋭のスーパーコンピューターの並列計算が、数百年後に確実に超巨大隕石が衝突すると予測を出したのだ。
直径30㎞前後にも及ぶ超巨大質量が空から落下した衝撃とその破壊は地球に、人類にどれだけの影響が及ぶかなど、考えるまでも無かった。
絶滅。
これだけが人々の頭をよぎった。
さらに計算を進めると運の悪い事にユーラシア大陸のどこかに着弾するとの予測結果もはじき出された。海では無く、陸。海であっても超巨大津波が発生して、人類やその他多くの生き物は飲み込まれるのは明らかだったので、どちらでも良いという意見もあったが。
兎にも角にも人類対応策を練り始めた。
真っ先に上がり且つ実行されたのは、爆弾による隕石の破壊である。
そうこの手は実行された。
しかし計算上これでは隕石が散り散りになっても、大気圏では燃え尽きず、そのまま地面に落下するという計算結果だった。しかしそのまま落下するよりは遥かにマシだったので、宇宙空間へロケットでの迎撃作戦が開始される。
ユーラシア大陸の国々、いや全世界の国が協力をして、大絶滅へのシナリオを回避しようと躍起になった。この時になり人類はようやく戦争を終わらせるという皮肉だった。
兎に角世代間を越えた一大プロジェクトが、この時に始まり、隕石が落下する数百年後に向かって前進したのである。
するする、するすると時は流れ、その流れに従い人類の英知はより発展する。
高威力爆弾の製造はもちろんの事、地面の掘削技術も発展。
当初の指摘に人類はどこで生き永らえるのか?、という問題が立ちはだかっていた。
隕石の落下により土やほこりが、上空に積乱雲の様にうず高く広がる事が予想された。これにより日の光が遮られ気温が急降下。恐竜が絶滅したときの如く氷河期が訪れ、人類は対応できないとされた。
地上が無理なら地下。
という事で人は地下に新しい世界を求め、掘削を繰り返した。ドリルの進化は日進月歩。硬い岩盤にぶち当たればそれを破るために新しい素材を開発すること、数千回。数万回だろうか。
各国が全国民を収容できるような段階になり、次はどうやって氷河期をやり過ごすかという事になった。
過去の氷河期は一年やそこらで終わるような物ではない。ならばこそ、食糧事情が大変な事になる。地上に出る事が叶わないのに、どうやって食料を手に入れるのか。それ以前に地上に生物・植物は居なくなっているだろう。まぁ、全部が絶滅しているとは言わないが。
人は生きるために基礎代謝分のエネルギーは摂取しておきたいだろう。すぐにこの案が出た。
寝る。
冬眠だ。
擬似的に冬眠を誘発して、長い時間をやり過ごす。これはすごい!、という事になったが問題が出た。
だれが栄養を供給するのか?、という問題が発生した。これには困った。寝るのにも栄養が要る。寝ながらにして栄養を摂取させる機構が必要だ。
という事で当時最先端を行っていた、日本のゲーム技術とロボット工学に目が向けられる事になった。
冬眠中はゲーム世界に潜り込み、現実世界ではロボットが眠っている全人類の世話をする。もちろん排泄行動や生殖行為もだ。
一人一機にゲーム台『ノア』が供給され、これにあらゆる機能がつけられた。
もちろんの事ゲーム、これは現実世界の代替品であるため、徹底してリアリィティが求められた。完璧に世界を再現して、現地の情景と変わらないようにしている。それに加え、『ノア』には排泄と栄養摂取の機構。
この『ノア』から供給される栄養は日本のロボットたちが地下でも作れる植物から作る。その辺りは世界中で昔から研究が進んでいたので、滞りなく進んだ。
排泄も『ノア』がすでにトイレのような形をしているため、いつでも排泄可能だ。
人類の数を増やしたり維持したりするためにも、生殖行為は必須となる。これは『ノア』の電脳世界でそう言う行為を営んだ男の精子を採取し、勝手に女の子宮の中に入れるというかなりギリギリの物になっている。
当然の如く反発が出たが、それなら愛する人とだけやれという事になり、ぐぅの音も出せない。これで問題は解決かと言えばそうでもない。
あとは『ノア』にマッサージのような機能を付けて、できるだけ運動をさせて筋肉を凝り固まらせないようにした。要介護者に行うようなストレッチだ。これだけやれば大体の寿命が得られるだろう。
『ノア』のサーバーは各国に送られその国独自に管理される事になる。ただし時間や情報は現実世界と同等にするため、経済のような物はある。サーバー間戦争を経済で行うようなものだ。ほとんど現実である。危機的状況に追い込まれた人類はそれを可能にした。
そしてそんな人間をサポートするロボットたちには、かの有名なロボット3原則を搭載している。
•第一条 ロボットは人間に危害を加えてはならない。また、その危険を看過することによって、人間に危害を及ぼしてはならない。
•第二条 ロボットは人間にあたえられた命令に服従しなければならない。ただし、あたえられた命令が
、第一条に反する場合は、この限りでない。
•第三条 ロボットは、前掲第一条および第二条に反するおそれのないかぎり、自己をまもらなければならない。
完璧な法則を搭載する事で、現実にロボットは人類の奉仕者となり、人間を助けるべく登場したのだ。
そうしてロボットたちも地下世界に送り込み、これから眠るであろう人間のための準備を開始した。
人類は移動を開始して、『ノア』へと続々と乗り込んでいった。ヘッドセットをかけて、背もたれに腰掛け、椅子はほとんど様式の便座。下半身は丸出しというかなり恥ずかしい格好だ。
それでも新しい世界へと旅立つ人類は悲壮では無く、期待が込められていた。もはや隕石など無かったかのようだ。
その後隕石はやってきた。
地上からでも確認できるような巨大物体が地球に降ってきた。
世界各国が同時にミサイルを着弾できるように、事前に何回もシミュレーションして自動制御となったミサイルが隕石に直撃する。
1000発を超える爆弾が次々に隕石の表面を砕き、それが地球へと散弾銃となって降り注いだ。当初一つの塊だった隕石は粉々となり、大気圏では燃え尽きる事無く、地面へと激突していく。
すでに遅い退避をしていた自然界の動物は衝撃波に殺され、そのまま隕石に押しつぶされたりと悲惨な最期を遂げる。
1分もしないうちに全てがユーラシア大陸に落ちてきた。ロシアや中国、インドや果てはヨーロッパや極東まで隕石の破片は広がっていた。
それでも人類の掘削技術の前では、隕石の侵略は人類を絶滅させるさせるには足らなかった。
より深い所に逃げた人類は隕石の魔の手を逃れ、電脳世界へと没入する。
何年が過ぎたのだろうか。
ロボットたちは途方もない年月の間、修繕や新規のロボットを生産しながら、人間たちを生き永らえさせていた。
ロボットたちは勝手に人間を守るために色々バージョンアップを繰り返していた。地中に居た外敵から人間を守るために、武器等も作った。ただ火薬は手に入れる事が出来ない。仮に手に入れられても、人間が眠る場所で、危険行為をする事が出来ない。
ロボット3原則がそれを阻んでいた。
外もそろそろ暖かくなる頃だろう。
本家本元の『ノア』は人間たちを解放しようとした。
そこで気づいてしまったのだ。
致命的な欠陥に。
人類の安寧は終わった。
最後まで読んで頂いてありがとうございました。
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