牧野 洋の「メディア批評」
2014年06月27日(金) 牧野 洋

「吉田調書」スクープに相次ぐ疑義---説明責任を放棄して法的措置ちらつかせる朝日

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朝日新聞デジタル版の特設ページ「吉田調書

朝日新聞による「吉田調書」スクープは誤報だったのか? ノンフィクション作家の門田隆将氏が5月31日にブログ上で疑義を投げかけて以降、週刊誌を巻き込んで議論が広がっている。

吉田調書の土台になっているのは、東京電力・福島第一原発所長で事故対応の責任者だった故吉田昌郎(まさお)氏の証言だ。その意味で、調書を分析するとしたら門田氏はうってつけの専門家だ。何しろ、生前の吉田氏に長時間インタビューしたほか、90人以上の第一原発現場関係者に取材して『死の淵を見た男』(PHP)という本にまとめているのである(朝日は門田氏に取材していない)。

門田氏の問題提起をきっかけに吉田調書スクープに改めて注目が集まるなか、朝日は自らの紙面上では静観を決め込んでいる。本来なら、議論の中心に同紙がいなければならないはずなのに・・・。

命令に違反したのか、それとも従ったのか

5月20日付朝刊の第一報以降、朝日はデジタル版も活用しながら連日1面で続報を放ち、異例の力の入れようだった。

それもそのはず、「原発 命令違反し9割撤退」という見出しが示すように衝撃的な内容を含んでいたからだ。東日本大震災から4日後の3月15日、福島第一原発にいた所員の9割が待機命令に違反し、10キロ南の福島第二原発へ撤退していたというのだ。

日本ばかりか世界でも注目された。韓国では、船長が真っ先に逃げ出したセウォル号沈没事故が連想され、「日本版セウォル号」と報じられた。吉田調書スクープは埋もれていた重大ニュースを掘り起こしたと見なせたからこそ、5月23日付の当コラムでもお手本とすべき調査報道として紹介したのである。

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