社内の人間で固めがちだった日本企業の取締役会が変わってきた。

 きょうピークを迎えた企業の株主総会で、今年は社外取締役を選ぶ動きが目立つ。東証1部上場企業では、社外取締役を選任する企業が74%と、昨年より12ポイント増えた。

 先の通常国会で成立した改正会社法は社外取締役の導入を強く促し、導入しない企業は「社外取締役を置くことが相当でない理由」を株主総会で説明しなければならないと定めた。

 法改正の過程で検討された社外取締役選任の義務化は、経団連などの反対で見送られた。しかし経団連の主要企業でも、キヤノン、新日鉄住金、東レなどが今年になって社外取締役を選んでいる。時代の流れだ。

 問題は、社外取締役がお飾りに終わらず、役割をきちんと果たすかどうかである。

 ほとんどの日本企業では、大半の取締役が社内で出世した結果として選ばれており、社長に「ノー」と言いづらい。それに対し、株主や社会の代表として発言できるのが社外取締役だ。社内の論理と異なる視点から社長の提案にも異論を投げかけ、結果によっては経営責任を追及することが期待される。

 ただ、社内出身の取締役に比べ、会社についての情報量は少ない。きちんと機能するためには、最新の経営情報を常に提供するなど、会社側の環境づくりが欠かせない。

 もとより人選は大切だ。社外取締役の多くは他の会社で経営経験がある人だが、弁護士や公認会計士、学者も多い。経済産業省や財務省、法務・検察など官僚OBの就任も目に付く。6社も7社も社外取締役や監査役を兼任している人もいる。

 なぜ今、その人を選ぶのか、どんな働きを期待するのか。会社が置かれた環境や戦略との関係で、具体的な狙いを説明できないような人選では困る。

 経営に外部の声を届ける点では、株主、中でも機関投資家の役割は大きい。政府は今年、機関投資家に企業との対話や議決権の行使を通じて成長を促すよう求める「日本版スチュワードシップ・コード」を策定した。社会のなかで企業が立ち位置を誤らぬよう、社外取締役とともに監視してほしい。

 飲料大手のサントリーホールディングスが、コンビニ大手ローソンの新浪剛史会長を社長に招くように、日本企業でも、経営トップをも外部から選ぶことが選択肢になり始めた。

 外部の視点を経営にどう生かすか。そこが問われている。