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悩めるビギナーをスパッと診断
ハイスコアを目指し試行錯誤を繰り返すビギナーの方は多いはず。そんな方々の質問や疑問に、(社)日本ボウリング協会のマスターインストラクター宮田氏がお答えします。
カウンセラー 宮田哲郎
ライセンスNo.140のプロ6期生。(社)日本プロボウリング協会マスターインストラクター。プロボウラーやセンター社員の教育、指導を専門とする。ビギナーにもわかりやすい指導を1冊にまとめた『スポーツ・ボウリング』(ベースボール・マガジン社)ほか著書多数。
第4回
強いボールを生み出すよいリリースとはどんなものですか?
【質問】
強いボールが生まれる、よいリリースとはどういうものですか? 自分の場合、指が痛くなったりせず、親指も抜けていると思うのですが、よく5番ピンが残ります?

【回答】
 私の著書を長年愛読しておられるそうで、本物のマニアですね。
 ボウラーなら誰でも望む強いボール。それを生むのは、たしかにリリースです。マニアに敬意を表して今回は、リリースについてしっかりお話しましょう。
 よいリリースの源は、よいタイミングです。よいリリースであるかどうかは、強くて威力のある球質になるか、逆に弱々しいかです。
 きれに投げたのに、ちっとも威力のないボールになるのは、結局、わるいリリースといわざるをえません。どうして弱いボールになるのでしょうか? その原因には、およそ次のことがあげられます。番号は、克服すべき条件の優先順位です。

(1)17.5枚目を外している。
(2)ボールの入射角度が足りないか、オーバーしている。
(3)スピード不足か、スピードがありすぎる。
(4)回転不足か回転オーバー
(5)ボールが軽すぎる(12ポンド以下が目安)

 さらに、いくら投げても疲れないとか、指をけがしない、体のどこかが故障しないといった条件も加わりますが、中上級者の場合、指の故障は、そのほとんどがメジャーリング(ドリル)に起因します。
 よりリリースとは、バランス」のよいフォームと無理のない流れのタイミングに支えられますが、かといって、よいフォームだけでハイスコアを打てるものではありません。


リリースの3大要素
理想のリリース
理想のリリース
親指の方向(矢印)がまったく変わっていない。上級者はボールを横から「抱えて」いるので、きれいな横回転が生まれてフックする。

 リリースを分解すると、3つの要素があります。これを「当てる」「押す」「振り切る」といいます。
 まず「当てる」とは、親指の方向を意味します。リリースのとき、親指が何時の方向にあるか、ということです。「押す」は、手首をまっすぐにするか、回すか。そして「振り切る」はフォロースルーのことで「払う」ともいいます。
 以上は入門教室の基本ですが、アベ190なら「当てる」つまり、リリース時の手のひらと、ボールの位置関係がチェックポイントです。つまり、ボールを上からつかんでいるのか、それともすくっているかです。
 ここが200を目指す人の鍵でもあります。リスタイをすれば簡単に解決できる人と、それでもだめな人があるからです。お手紙にはストライク数が少ないとありましたが、速度もコントロールもそこそこよいのですから、本当の原因は手のひらとボールの位置関係にあると見ます。
 体力面からみた、よいリリースを生む基礎条件は、握力(手首の強さ)、ボールを振り切る腕力、ロングゲームに耐えられる体力が必要です。一般に、女性やシニアボウラーは、ボールを保持する手首が弱く、握力も不足しています。ここで力が不足していると、ボールを真上からつかんで投げるようになり、十分な回転が与えられません。
 さて、よいリリースを高速度カメラで追ってみますと、およそ3つの条件を満たしています。それは第一に手首の形、次がボールとの位置関係、最後が振り切り方です。
 よい回転は、ボールの側面からやや上のあたりか、極端にいうと底辺からすくい上げるような感じでリリースしています。手首を巻き込んだ感じのリリースが男子プロに見られますが、これがすくい上げるリリースの典型です。
 リスタイを使用している人は、ここでは本当の練習になりませんので外してください。5番ピンがよく残る直接の原因は、17.5枚目よりも右の薄めをヒットしているか、入射角度が不足していることが考えられます。
 スピードオーバーの場合もありますが、あなたの場合は該当しないように思われます。


ボールに命を吹き込む

 よいボールは、まるで生命でも宿っているように、際立ってリアクションします。ピンのそばで急に勢いを増し、フックしながら1−3ポケットへ切り込んでいくように見えるからです。
 7キロ前後もの質量を持つ物体が、18メートルもある距離を滑走したあと、急に加速するほどリリース時の回転があるとは信じがたいのですが、プロのボールを観察すれば、実際そのように見えますね。
 でもリリースにかかる時間は、1秒間の数十分の1しかありません。インパクトの瞬間、ボールに命を吹き込むのは「当てる」「押す」「振り切る」動作の結果です。

リリースを分解する
リリースを分解する

当てる
親指がまだボールの指穴に入っているか、抜けかかる瞬間。ここで親指の方向が10時だったらナチュラルフック、12時だったら強制フック

押す
親指が抜ける瞬間。ここで親指が10時方向の場合はそのまま振り抜くが、12時方向の場合は手首を反時計回りに10時方向へ回す。この強制フックの方が回転数は増える

振り切る
中指と薬指でボールを前に押し出す。スイングを追い越すくらい早くやるのがコツ。親指の抜けるタイミングがよければ、中指か薬指にボールの引っかかる感触が残るはず

 細かく考えますと「当てる」はボールを保持する手首の形であり、「押す」とは肩の真下のスイング最下点で親指が抜ける瞬間、よく腰を入れてボールを前方へ押し出すアクションとなります。
 最後の「振り切る」は、ボールに回転を与える最後の仕上げで、まさに命を吹き込む瞬間です。親指(サム)が抜け出たあと、中指・薬指(フィンガー)がボールの端を払う一瞬の動作(リストアップ)です。実はこのあと、スパットミスをするかどうか、またボールの回転方向もここで決まりますが、このフォロースルーがどのような形になるかまで、コーチは目を光らせたいところです。
 ここで多い間違いは、スイングの最下点になるかならないかのところで、性急にリフトアップしてしまうことです。十分な押しが不足すると、早めにロール(回転)が出てしまい、よいボールとはなりにくいのです。ここはしっかりと前後に開脚して、十分に腰を入れ、ボールを前へ押し込むポイントを忘れないでください。
 振り切りは、簡単にいいますと「スイングを追い越す」感じで、スピードを高めるのがコツです。ここは前の動作「押し」の続きですから、うっかりすると漫然と成り行きまかせになりそうです。いつも同じイメージのフォロースルーにつながるように、力強く最後の仕上げをしましょう。
 大昔、現役時代にPBAプロに教わったとき「フォロースルーをしっかり、ひじが下がらないように!」と、いつもいつもいわれることに驚いたものです。それも当然、投球の総仕上げですからね。
 さて、ストレートリリースから練習をやり直したいとのことですが、強制フックをマスターする手前の段階としての意味はあるでしょうが、完全なストレートリリースがよいボールを生むことはありません。

強制フック ナチュラルフック
強制フック
親指を12時の方向にセットして、抜ける瞬間に10時方向へ回す
ナチュラルフック
親指を10時の方向にセットして、そのまま振り切る

 そもそも曲がるボールのリストアクションには、初心者向きのナチュラルフックと200アベボウラーの強制フックの2種類がありますが、このナチュラルから強制フックへいつ、どうやって移行するかが大きな問題です。
 私の持論は、いま述べたような押したり払ったりをやっているうちに、いつのまにか強制フックに変わっていた…というのが理想だと思います。実際、形だけ真似て手首を回しても、よい結果は得られません。どうか「当てる」「押す」「振り切る」の3大要素をじっくりと覚えてください。
 40〜50歳代は、ボウリングの黄金期を謳歌するときです。どうかいつまでも、このすばらしいスポーツを楽しんでください。

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