よいボールは、まるで生命でも宿っているように、際立ってリアクションします。ピンのそばで急に勢いを増し、フックしながら1−3ポケットへ切り込んでいくように見えるからです。 7キロ前後もの質量を持つ物体が、18メートルもある距離を滑走したあと、急に加速するほどリリース時の回転があるとは信じがたいのですが、プロのボールを観察すれば、実際そのように見えますね。 でもリリースにかかる時間は、1秒間の数十分の1しかありません。インパクトの瞬間、ボールに命を吹き込むのは「当てる」「押す」「振り切る」動作の結果です。
リリースを分解する |
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 当てる 親指がまだボールの指穴に入っているか、抜けかかる瞬間。ここで親指の方向が10時だったらナチュラルフック、12時だったら強制フック |
 押す 親指が抜ける瞬間。ここで親指が10時方向の場合はそのまま振り抜くが、12時方向の場合は手首を反時計回りに10時方向へ回す。この強制フックの方が回転数は増える |
 振り切る 中指と薬指でボールを前に押し出す。スイングを追い越すくらい早くやるのがコツ。親指の抜けるタイミングがよければ、中指か薬指にボールの引っかかる感触が残るはず |
細かく考えますと「当てる」はボールを保持する手首の形であり、「押す」とは肩の真下のスイング最下点で親指が抜ける瞬間、よく腰を入れてボールを前方へ押し出すアクションとなります。 最後の「振り切る」は、ボールに回転を与える最後の仕上げで、まさに命を吹き込む瞬間です。親指(サム)が抜け出たあと、中指・薬指(フィンガー)がボールの端を払う一瞬の動作(リストアップ)です。実はこのあと、スパットミスをするかどうか、またボールの回転方向もここで決まりますが、このフォロースルーがどのような形になるかまで、コーチは目を光らせたいところです。 ここで多い間違いは、スイングの最下点になるかならないかのところで、性急にリフトアップしてしまうことです。十分な押しが不足すると、早めにロール(回転)が出てしまい、よいボールとはなりにくいのです。ここはしっかりと前後に開脚して、十分に腰を入れ、ボールを前へ押し込むポイントを忘れないでください。 振り切りは、簡単にいいますと「スイングを追い越す」感じで、スピードを高めるのがコツです。ここは前の動作「押し」の続きですから、うっかりすると漫然と成り行きまかせになりそうです。いつも同じイメージのフォロースルーにつながるように、力強く最後の仕上げをしましょう。 大昔、現役時代にPBAプロに教わったとき「フォロースルーをしっかり、ひじが下がらないように!」と、いつもいつもいわれることに驚いたものです。それも当然、投球の総仕上げですからね。 さて、ストレートリリースから練習をやり直したいとのことですが、強制フックをマスターする手前の段階としての意味はあるでしょうが、完全なストレートリリースがよいボールを生むことはありません。
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強制フック 親指を12時の方向にセットして、抜ける瞬間に10時方向へ回す |
ナチュラルフック 親指を10時の方向にセットして、そのまま振り切る |
そもそも曲がるボールのリストアクションには、初心者向きのナチュラルフックと200アベボウラーの強制フックの2種類がありますが、このナチュラルから強制フックへいつ、どうやって移行するかが大きな問題です。 私の持論は、いま述べたような押したり払ったりをやっているうちに、いつのまにか強制フックに変わっていた…というのが理想だと思います。実際、形だけ真似て手首を回しても、よい結果は得られません。どうか「当てる」「押す」「振り切る」の3大要素をじっくりと覚えてください。 40〜50歳代は、ボウリングの黄金期を謳歌するときです。どうかいつまでも、このすばらしいスポーツを楽しんでください。 |