2014年6月23日
大阪市交通局のデザイナー募集で月給約11万について思うこと
引用:大阪市交通局がIllustratorやPhotoshopを使えるプロのデザイナーを月額112,600円で募集しTwitterで炎上中 - ライブドアニュース : http://news.livedoor.com/article/detail/8930385/
実は炎上していた当時から思っていたことなんですが、一度冷静に考えるため時間を置いてこの記事を投稿してみます。
事の発端は、大阪市市交通局が公布した「大阪市交通局非常勤嘱託職員募集要項」(現在はリンクが切れている)の応募要件に
・Illustrator、Photoshopの広告デザイン実務経験があること
・Excel、Wordが使えること
・1日6時間で週5回(つまり平日)勤務
・給与 112,600円
・昇級・昇格なし
という内容。
Twitter等で炎上になったようです。 要するに「これだけのスキルがある人に11万だと!?うちらの業種を安く見るな!」という主張が相次いだように思えます。
最近、クライアントと直接やり取りしていく中で思う事があるので、ちょっと目線を変えながら意見を書いておきます。
世間から見た私たちデザイナーの評価とは所詮その程度のもの
最初に思う事を言っておくと、所詮そんなもんです。。
私たちがスキルを磨き、オペレーションを効率よく行うための日々の努力...
実は、これらは発注者にとっては見えなく理解しにくい(どうでもいい)ものかもしれません。
チラシをつくるけれど、その制作費をかけないで済むならそれにこした事ないと考える人もいます。
なぜならデザイナーにお願いする段階ではお金が生まれないわけです。
さらに、依頼した後にどれだけの利益が得られるのかわかりません。
つまりグラフィックツールを使ってポスターをつくり、Excelなどで書類をつくり、電話対応なども行えるくらいのスキルの人に11万円という給与は、私たちの想いとは別に、彼ら大阪市交通局の方にとっては妥当という認識があったのかもしれません。
だとしたら私たちデザイナーの価値はどうなる?そうだ、給料を上げてもらえるだけの仕事をする必要がある。
給料が上がるという仕組みは何か?
やはり自分がいなくては誰かが困る状況であり、この人と一緒に仕事をしたいと思われる状況。
じゃあ、その人がいないと困る状況とは何か?ということになるわけで。
ここが問題なんです。
依頼と受動
私は、大学や専門学校で10代〜30代の方にデザインの授業を担当しています。
Illustratorなどの授業中にこのような事を生徒の前で言ったことがありました。
「今君たちが勉強しているのはデザインそのものではない、作業、つまりオペレーションだから」と。
依頼者の悩みやその背景にある問題点を、デザインというユーザーに一番近い位置から、私たちデザイナーが解決できるか、向き合い、試行錯誤し、相談もできて提案もできる。
「いやー提案してはみましたけど、モックで動かしてみて微妙でした、、、」
とか言えるだけの器量があるか。
もう、IllustratorやPhotoshopが使えるだけ、という人口は20年前と比較にならないほど増えています。
これだけ人が増えると、正直、スキルだけではその人の価値につながりにくいんです。
だから、アプリケーションスキルが高いだけでは給料という評価に結びつけるのが難しい時代だということに気づくべきでしょう。
問題を解決する難しさ
最近のお仕事で何度か、GUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェース)の改善依頼を請けるのに、いつの間にかVI(ビジュアルアイデンティティ)の意見を出したりするウチに、ロゴマークの追加依頼に発展したりします。
発注者が気づかない問題点をデザイナーが指摘したもんだから、デザインよりもサービスのコンセプトについて相談されるようになることがあります。
でもそれは当然な気がします、なぜなら、デザイナーはユーザーの目に触れる繊細な部分とサービスのコンセプトと連携させて視覚化できる唯一の職業だと思います。
「この人なら相談できる」と思われると、もっと深いコンセプトデザインを相談させられ、発言も受け入れられやすくなることがあるでしょう。
やはり生き方は自分で決めるもの
言われた通りのことだけを忠実にやるのであれば、残念ながら他に替わりはいるという認識は社会の実情と言えるかもしれません。
言われた指示通りの事だけ行う人に価値がないとは思えませんが、発注者ができないことをやれる職業なんだから、もっと指示を疑ってみて「本当にこの指示が正しいのか」を考えてみるとよいでしょう。
発注者が正しい答えを持っているわけでなく、また、私たちも正しい答えを持っている根拠はないと思います。
たとえ完璧ではなくても、正しさの精度を上げようと試行錯誤ができる人であれば自ずと「11万だと請けられません」と言ったらいいと思います。
そして、こうも思います。
大阪市交通局に怒りの声を上げて、「デザイナーという職業が安く見られる社会を是正したい」なんて自分にはおこがましいと考えています。
生き方なんて自分で決めるんです、11万でももらえるだけ幸せと思っている人を否定することにもなり、おかしいと思います。
大阪市交通局が11万しか出さない、それはそれでいいじゃないでしょうか。
イヤなら行かなければいい。
不満なのであれば違う道を生きるために、個々のデザイナーが何に貢献すればお金をもらえるのか?について考える。
それだけな気がします。
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