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愛知県設置のウミガメ孵化場「マイナスの恐れ」の声

2009年5月17日8時45分

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写真設置された孵化場=愛知県豊橋市の表浜海岸

 国内有数のアカウミガメの上陸・産卵地である愛知県豊橋市の表浜海岸で、県などが今春設けた孵化(ふか)場をめぐり、地元保護団体などから「マイナスの恐れが強い」と異論が示されている。10年に名古屋市で開かれる生物多様性条約第10回締約国会議(COP10)に向け、地元の目玉事業として位置づけられているもの。だが異論を踏まえ、県は保護団体などの意見を聴き始めており、運用のあり方を検討することになりそうだ。

 表浜海岸の一画。大きな鳥かごのような構造物がある。アルミ製で幅、奥行き各4メートル、高さ2メートル。上に防鳥ネットが張られている。小島、西七根、高塚町の3地域の砂浜に一つずつ置かれた。卵をこの3カ所の孵化場へ移す。高波や動物から守る趣旨だ。ウミガメの上陸・産卵は5月ごろから秋ごろまで続くため先だって設けた。

 設置主体は、愛知県や豊橋市、地元NPOでつくる「東三河自然環境ネット」。環境省の補助を受け約400万円をかけた。県や市は「砂浜が細り卵の流出が増えているうえ、鳥などによる食害も多い」と説明。かえった子ガメが自力で海に帰ることができるよう、海側に面したすき間は広くしてあると言う。市がウミガメ調査を委嘱している市民らから、設置を求める声が出ていたという。

 しかし、地元で保護に取り組んでいるNPO「表浜ネットワーク」の田中雄二代表は「ウミガメは、卵の時期に過ごす温度環境によって性別が決まる。産み落とされた場所から移すことで温度などの環境が変わり、性だけでなく、その後の成長に与える影響が懸念される」と指摘する。

 こうした異論は、国内の代表的NPO「日本ウミガメ協議会」(大阪府枚方市)も示している。市の担当者も「効果や弊害がどの程度あるかは、やってみないと分からない」と本音を漏らす。

 市や県は4月28日、田中さんや、逆に孵化場設置を求めてきた保護団体などを招き、話し合った。田中さんたちは「孵化場への移植を最小限にするための指針が必要」。県も「(台風など)どうしようもない時に孵化場を使う方法もある」とし、今後も話し合いを進めることになった。(山本晃一)

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