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NATROMさん 「ニセ医学」に騙されないために [新刊情報]


「ニセ医学」に騙されないために   危険な反医療論や治療法、健康法から身を守る!

「ニセ医学」に騙されないために 危険な反医療論や治療法、健康法から身を守る!



NATROMさんの発想がわかる本

彼のブログ「NATROMの日記」に掲載されているので、早速買ってみました。
なるほど、彼と議論する前に読んでおけば…というのが正直な感想です。[わーい(嬉しい顔)]
NATROMさんの論理や発想が、極めてわかりやすく書かれています。


簡単にまとめると、
1. 標準医療は無条件で正しい(もはや信仰に近いと言ってもいいでしょう)
従って、
2. 標準医療に対する批判は受け付けない(または無視する)
ということになります。

私は医者ではないので、標準医療は尊重しますが、現在の標準医療が全部正しいはずがありません。治療法のような技術的なことは、これからもどんどん変わるでしょうし、そうでないと医療の進歩もないはずです。

例えば、最近話題の「低糖質ダイエット」には、日本の糖尿病の権威はまともな反論はしていません(すくとも私にはそう感じられます)。では、この本にはどう書いてあるのかなぁ、と興味津々で読んでも全く何もない。
同じく、日本のがん治療では、グローバルスタンダードの標準治療は行われていない、と主張する近藤誠氏への批判も全くない。
これだけ(日本の)標準医療が正しいと主張しているだから、全く何のコメントないのはおかしい、というしかありません。
となると、低糖質ダイエットや近藤誠氏は「正しい」から批判できないので無視する(?)と考えるしかないでしょう。
では、一般の人が興味を持ちそうな、これらの話題は、なぜ取り上げないのでしょうか?
その理由として一番可能性がありそうなのは、標準医療の信頼性を損なう、ということでしょう。
彼の論理では、

1. 低糖質ダイエットや近藤誠氏は「正しい」可能性が高い
2. しかし、これらが「正しい」とすると、標準医療の信頼性を損なう可能性がある
3. これらの話題を取り上げることは、標準医療の信頼性を損なって医療全体の質が低下するリスクに比べれば大した問題ではない
4. 従って、これらの話題は取り上げるべきではない

ということだと思われます(違うのかな?)。

ただ、私のような部外者からみると、この論理は明らかに「非科学的」というしかありません。まさに、勝間和代さんの著書「専門家はウソをつく」どおりです。
私のような、素朴な科学信者が違和感を覚えるのは、まさにここなのですね。

もっとも、過去の標準治療が間違っているのが悪い、というのはおかしいでしょうし、標準医療に対する信仰があるのも悪くはないでしょう。そういう人もいないと、良質な医療が提供できないということもあるかもしれませんから…。

ところで、彼の態度は、血液型と性格でも同じようです。

165ページに血液型と性格に対する文章がありますが、まさに上のとおりとなっています。だいたい、このページの文章は論理的でもないし、科学的でもありません。

「O型は大雑把な性格」や「B型はマイペース」など、血液型と性格に強い関連があるという血液型性格診断は日本ではポピュラーである。最近では血液型性格診断には科学的根拠が乏しいことも知られてきたのか、メディアで血液型と性格についての話題を扱う際には「科学的根拠はないとされているが」といった言いわけがついていることも多い。
韓国や台湾といった例外を除き、海外では血液型と性格についての迷信はほとんど信じられてはいない。
さらっと読める文章ですが、ちょっ考えると、この文章は意味不明です。

1. 血液型と性格に強い関連があるという血液型性格診断
2. 血液型と性格についての話題
3. 血液型と性格についての迷信

の3つが同じものかどうかは微妙です。ひょっとして1.と3.は同じものかもしれません。しかし、2.には「弱い関係」が含まれるかどうかは不明ですが、素直に読むと、おそらく含まれるのでしょう。ただ、それなら、わざわざ1.で「強い関連」と断る理由もない。初めから、「血液型と性格に関連があるという血液型性格診断」でいいはずです。結局、何を否定したいのかさっぱりわかりません。
定義がはっきりしないのに加えて、「科学的根拠はないとされている」根拠の論文の紹介もありません。また、「科学的根拠はないとされている」から、科学的に間違っているということもありません。科学的に正しくても、その科学的根拠が発見されていないものは、いくらでもありますからね…。

それに、割と最近に公開された、
Donna K. Hobgood, Personality traits of aggression-submissiveness and
perfectionism associate with ABO blood groups through catecholamine activities, Med Hypotheses. 2011 Aug;77(2):294-300.
という、血液型と性格に肯定的な論文[本]もあります。
ですので、「海外では血液型と性格についての迷信はほとんど信じられてはいない」とは必ずしも言えません。

つまり、

1. 血液型と性格に弱い関連がある可能性は高い
2. しかし、これらが「正しい」とすると、疑似科学批判の信頼性を損なう可能性がある
3. これらの話題を取り上げることは、疑似科学批判の信頼性を損なって科学全体の質が低下するリスクに比べれば大した問題ではない
4. 従って、これらの話題は取り上げるべきではない

ということだと思われます(違うのかな?)。
極論すれば、NATROMさんの疑似科学批判は「信念」の問題であって、科学的に正しいかどうかとは別物です。上のこの論理は明らかに「非科学的」というしかありません。
私のような、素朴な科学信者がいわゆる疑似科学批判に違和感を覚えるのは、まさにここなのです!

もう少し早く理解していれば、彼との議論に別の展開があったかもしれませんね。

10年前の私の質問、

>>> 「統計データがあればメカニズムは無視してもいい」と考えます。
>>> …私が問題にしているのは、メカニズムの不在ではなく、統計データが不十分であることです。

に彼から返事がないのは、上の論理なら実にうまく説明することができます。
つまり、統計的な(弱い)関連はあることを認めることはできない、ということです。
なるほどねぇ。[ひらめき]


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