滋賀県彦根市の彦根地方気象台で今年4月、「トノサマガエルの初見」が観測された。この観測が記録されたのは、実に10年ぶりのことだ。全国各地の気象台は、「ソメイヨシノの開花」や「ウグイスの初鳴き」など、四季折々に応じて動植物の観測も行っている。しかし、トノサマガエルは環境省のレッドリストに「準絶滅危惧種」に指定されるまでに減少しており、すでに観測対象から除外している気象台や測候所もある。彦根では久々の“再会”にわきあがったが、トノサマガエルはすっかり「身近な生き物」ではなくなっている。(桑波田仰太)
彦根地方気象台がトノサマガエルの初見を記録したのは、今年4月30日。男性職員が、気象台から約2キロ離れた水田脇を歩いていたところ、用水路の水面を“ピョン”と跳ねたカエルを発見した。職員が追いかけて水の中に目をやると、胴体の黒い斑点などからトノサマガエルと確認された。
トノサマガエルの初見を観測したのは、平成16年5月6日以来、10年ぶり。久々の出来事に、同気象台の森岡伸夫調査官(51)は「以前は、気象台の敷地内でも苦労することなくトノサマガエルの姿をみることができたのに…」と振り返る。
同気象台は、昭和28(1953)年からトノサマガエルの初見を観測している。平成16年までは昭和51(1976)年を除いて毎年3月下旬から5月上旬にかけて、トノサマガエルの初見が記録されている。
しかし、最近は気象台周辺でも、宅地開発で水田が減ったり、用水路もコンクリートで固められたりするなどして、明らかに生息数が激減しているという。実際に、トノサマガエルの減少は全国的な問題になっており、平成24年度には環境省のレッドリストに「準絶滅危惧種」として新たに記載されたほどだ。
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