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日本 1次リーグ敗退のなぜ?

6月25日 19時10分

田代翔子記者

サッカーワールドカップブラジル大会で、日本代表は、日本時間の25日に行われた1次リーグ最後の第3戦でコロンビアに1対4で敗れ、1次リーグ敗退が決まりました。
ザッケローニ監督のもと、過去最高のベスト8以上を目指しましたが、磨いてきた「攻撃的なサッカー」が実らず、1勝もできずにブラジルを去ることになったのはなぜか。
スポーツニュース部の田代翔子記者が解説します。

“奇跡”を信じて

日本は、1次リーグ2試合を終えて、1敗1引き分け。
コロンビア戦に勝利しても同時に行われるギリシャ対コートジボワールの試合の結果によっては、決勝トーナメントに進むことができない厳しい状況に追い込まれていました。
コロンビア戦を前に、ザッケローニ監督は、これまでの2試合を踏まえ「チームとして戦っていく。選手たちは絶対にやってくれるだろうと信じている」と期待を込めたうえで、「この4年間、目指してきたサッカーを変えるつもりはない」と改めて攻撃的なサッカーを貫く考えを示しました。
また本田圭佑選手は「目の前の試合に勝つこと。そして奇跡が起きることを信じることしか、自分にはできない」と話し、大逆転での1次リーグ突破へ、強い決意をにじませていました。

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ねらい通りの攻撃

現地午後4時からのコロンビア戦は気温が30度を超える中での試合となりました。
すでに決勝トーナメント進出を決めているコロンビアは前の試合から先発8人を変更。
日本は第2戦の先発から2人を入れ替え、攻撃の最前線、ワントップのポジションには大久保嘉人選手。
守備的ミッドフィールダー、ボランチには前線への縦のパスを得意とする青山敏弘選手を、今大会初めて起用しました。
日本が目指していたのは、コロンビアの弱点と見られていたディフェンスの裏を突く攻撃です。
その狙い通り、日本は序盤から大久保選手に積極的に縦パスを入れ、ディフェンスラインを高く、コンパクトな陣形を保ってボールを支配しました。
前半17分にペナルティーキックで先制されたものの、前線から相手にプレッシャーをかけ続けてチャンスを作り、前半終了間際には本田選手のクロスボールに岡崎慎司選手が頭で合わせて同点に追いつきました。

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敗退決まる

しかし後半流れが変わりました。
司令塔のロドリゲス選手を投入して攻勢に出たコロンビアに主導権を握られ、10分には勝ち越し点を奪われました。
ザッケローニ監督はその後、山口蛍選手や柿谷曜一朗選手などを相次いで投入し、3人の交代枠を使い切って逆転を目指しました。
しかしコロンビアの守りを崩せないまま時間が過ぎ運動量が落ちた終盤には警戒していたカウンター攻撃を防ぎきることができずに失点を重ねました。
主力を温存したコロンビアに大差をつけられ結果は1対4。
1次リーグ敗退が決まりました。

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「目標は優勝」と言い続けこの大会を「集大成」と位置づけてきた本田選手は、試合後、ぼう然と立ち尽くして天を仰ぎました。
長友佑都選手は膝を抱えてピッチに座り込み、立ち上がることができませんでした。
キャプテンの長谷部誠選手は、「自分たちの力不足、それ以上でもそれ以下でもない」とうなだれました。

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この試合のボールの保持率はコロンビアの44%に対し、日本は56%と上回りました。
また、日本は相手の倍近い23本のシュートを打ちましたが枠に飛んだのはおよそ半分。
目指してきた攻撃的なサッカーの一端は見せましたが、大舞台でゴールを決めきる力がありませんでした。

世界との距離 推し量れず

ザッケローニ監督が、就任してからの4年間、日本代表は世界の上位を目指すため攻撃的なサッカーを磨き続けてきました。
なぜ、本番の舞台で力を出し切れなかったのか。

ワールドカップの1年前、日本は、ブラジルで開かれたコンフェデレーションズカップで3戦全敗に終わり、攻守の立て直しを迫られました。
その後、山口選手や柿谷選手など新戦力を加えるなどして強化を進め去年のヨーロッパ遠征では強豪のオランダとベルギーを相手に1勝1引き分けと結果を残しました。

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ところが今年に入ってからは代表として活動できる機会が限られました。
少ない強化試合の機会に、世界ランキング上位の強豪との試合を組むことはできませんでした。
直前の強化試合で戦術を確認することはできたものの世界との力の差を推し量れないままワールドカップ本番を迎えることになり、スピードのあるカウンター攻撃への対応や、引いて守る相手を崩すためのアイデアなど、チームとして攻守のバリエーションを増やすことができませんでした。
特に第2戦のギリシャ戦は、初戦では出せなかった「自分たちのサッカー」にこだわるあまり、引いて守る相手に対してサイドからクロスボールを上げる単調な攻撃を繰り返すことしかできませんでした。

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大舞台での精神的なもろさも目立ちました。
初戦のコートジボワール戦で逆転負けしたショックを引きずり、第2戦に前向きな気持ちで臨むことができなかった選手も多くいたため、「プレッシャーから少しでも解放させたい」とコロンビア戦を3日後に控え練習が急きょ休みになったほどでした。
ザッケローニ監督は大会全体を振り返り、「何かを変えることができるのであれば選手のメンタルの部分だ。技術や戦術ではなく、選手のメンタル面にもっと取り組んでおけばよかったと思う」と反省を口にしました。

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およそ2年ぶりに代表に復帰し2回目のワールドカップとなった32歳の大久保選手は「4年間の強化のしかたとして海外のチームとアウェーで戦ったり、強豪国と戦ったりすることが必要だ。日本で強化試合をするだけでは世界との差は埋まらない」と指摘しました。

「暑さ」対策は万全だったか

コンディションの調整にも課題が残りました。
ブラジルの厳しい暑さを想定し、大会前はアメリカのフロリダ州で事前合宿をしましたが、試合では攻撃的なサッカーの原動力となる運動量を試合の終盤まで保つことができませんでした。
香川真司選手や岡崎選手といった主力の2人は第2戦までシュートゼロとプレーに精彩を欠きました。

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日本サッカー協会の原博実専務理事は、ギリシャ戦のあと「精神面も含め、いろいろな要素で、いいコンディションとのずれがあった」と話し、ベストの状態で試合に臨むことができていなかったことを認めています。

4年後を見据えて

ブラジル大会は、日本代表が初めて、「攻撃的なチーム」として臨んだ大会でした。
海外でプレーする選手がメンバーの半数以上を占めるなどこれまでで最も多くなり、自信を持って臨みましたが、世界との差はまだまだ大きいということを痛感させられる結果となりました。
それでも初めてのワールドカップを終えた若手選手たちは、すでに4年後の大会を見据えています。
山口選手は「勝負どころの強さや相手との駆け引きなど全体的にすべて足りなかった。次に向けて成長しないといけない」と話しました。
清武弘嗣選手は「4年後は僕たちが中心にならないといけない」とさらなる成長を誓いました。

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次のワールドカップはロシアが舞台となります。
日本代表を4年かけてどう強化し、世界との差をどう縮めていくのか。
日本サッカー協会をはじめ報道陣や応援するサポーターも含めサッカーに関わるすべての人がブラジル大会を1勝もできずに終わった原因をしっかりと考え、次の教訓としていく必要があります。