料理

このコーナーで紹介する料理は、古代ローマから17〜18世紀位までの

時代が中心となります。

古代ローマの王侯貴族達の華麗な饗宴については有名です。

そこに使われた材料も多種多様ですし、現在の菓子類の基本となるもの

も見られます。

ハーブやスパイスを多用した料理が多いのですが、最近では比較的容易

に入手できるものが増えましたし、代替え品になるものがある場合は

その旨、表記します。

また、今で言うシビエ料理、野鳥や野生動物を使ったレシピもありますが

これも、身近にある鶏肉、豚肉、牛肉、羊肉、鴨などで代用すると良いと

思います。

 

Special Menu

今回は、クリスマスパーティーを想定したメニューを紹介します。
今年はちょっと変わったクリスマス料理はいかがでしょうか。  

〜MENU〜

マリー・アントワネットの愛したロースト・チキン

ジャンヌ・ダルクの故郷ロレーヌ風キッシュ

生牡蠣の黒パン添え

ノルマンディー風リンゴとサラダ菜のサラダ

胃に良いポタージュ

卵料理2種

クーゲルフップフ(クグロフ)

洋梨のパティーナ

バラ酒

〜RECIPE〜

[マリー・アントワネットの愛したロースト・チキン]

材料

若鶏1羽(内臓を取り除き、水洗いし良く水気を拭き取った後、軽く塩をすり込んでおく。
[詰め物]
ハム150g(賽の目切り)マッシュルーム10個(3ミリ程にスライス)
生しいたけ(適当な大きさに切る)ニンニク1個(軽くつぶしておく)
バター大さじ1
塩、こしょう サラダ油
[飾り用]
クレソン パセリ レモン 適量

作り方

1,まず、中の詰め物を作ります。
  鍋にバター大さじ1を入れて、ニンニクを入れます。
  ニンニクの香りがしてきたら、ハム、マッシュルーム、生しいたけを入れてソテーし
  塩、こしょうで味付けをします。
2,鶏の腹に、ソテーしたものを詰めて、開口部を爪楊枝数本を使って縫うように閉じます。
3,キャセロール(耐熱の深型皿)に鶏を入れて、サラダ油を容器の半分位まで入れて
  オーブンで30分ほど焼きます。
  途中、何度かまわりの油を鶏にかけながら焼き上げます。
4,焼き上がったら取りだし、腹の楊枝を抜き取り、大皿に盛りつけます。
  キャセロールに残った油は忘れずに、鶏にかけましょう。
5,皿にクレソン、パセリを飾って、鶏の腹に半月型にスライスしたレモンを縦に少しずつ
  重ねます。
6,鶏の両足に、正方形の和紙を2つ折にし、2,3ミリ間隔で切れ目を入れた短冊を巻き
  セロテープで止めて切れ目を花のように広げたものを飾ります。
  その上を赤いリボンで結んでも綺麗です。

マリーの夫、ルイ16世の処刑の日のメニューにもロースト・チキンが供されたといわれます。
マリーの大好物のロースト・チキンは、悲しい別れの料理でもあったのです。

[ジャンヌ・ダルクの故郷ロレーヌ風キッシュ]

材料

練り込みパイ生地(市販のパイ生地でも良い)
[小麦粉250g バター125g 卵黄1個 水50cc 塩少々]
ベーコン80g グリュイエールチーズ(なくても良い)
生クリーム200cc 牛乳250cc 卵黄1個 全卵2個
ナツメグ 塩 こしょう

直径22cmのタルト型(8人分)又は、小さな型で一人分ずつ焼いても良い。

作り方

1,練り込みパイ生地を作ります。
  @台の上に小麦粉を広げ、バターを細かく切りながら小麦粉と混ぜます。
  Aぼろぼろの状態になったら、卵黄と塩、水を少しずつ加えて全体を混ぜ合わせ
   表面がなめらかになるまで練り込みます。
  Bひとまとめにして、良く絞った濡れ布巾に包んで、冷蔵庫で30分以上寝かせます。
  C打ち粉をした台の上で、めん棒を使って生地を薄く円形にのばし、タルト型に敷き
   余分な生地は切り取ります。
  D生地の底にフォークで小さな穴をあけます。(生地の浮き上がりを防ぐため)
  Eこの段階で生地だけを軽く色が付かない程度に下焼きしておくと仕上がりが綺麗です。
2,ベーコンを小さな棒状に切り軽く下ゆでして、塩気と燻製の香りをやわらげます。
3,少量のサラダ油でベーコンを炒め、油を切っておきます。
4,ボウルに卵、生クリーム、牛乳を入れて、塩こしょうし良く混ぜ合わせます。
5,パイ生地を敷いた型の中にベーコンと、同じく棒状に切ったチーズを並べて、
  4のクリーム状の生地を静かに注ぎ入れます。
6,180度のオーブンで30分ほど焼きます。
7,黄金色に焼き上がると、表面がスフレのようにふわっと盛り上がってきますので
  温かいうちにテーブルに出します。

百年戦争の悲劇の救世主ジャンヌ・ダルクの故郷ロレーヌ地方は、フランス北東部に
位置し、ドイツとの国境近くのために度々、ドイツ領になったりフランス領になったり
した苦い歴史があります。
その中で人々はドイツの影響を受けながらも、ベーコンに生クリームを合わせるという
アイデアで、この地方を代表する料理を生み出しました。

[生牡蠣の黒パン添え]

材料

新鮮な生食用の牡蠣(殻つき)
レモン
薄く切った黒パン(ライブレッドなど)
好みでバター

作り方

作り方はありません。
生牡蠣にレモンを絞って食べるだけです。
ただ、ローマ時代と同じように、黒パンを添えて食べましょう、ということです。
古代ローマでは牡蠣を食べるさいに、パニスス・オストレアリス(牡蠣用のパン)
と呼ばれるパンと一緒に食べました。
薄く切った黒パンには、バターを塗っても良いです。

[ノルマンディー風リンゴとサラダ菜のサラダ]

材料

リンゴ(種類はお好み)
サラダ菜
生クリーム シードルから作った酢(りんご酢、ワインビネガー、バルサミコなどで代用可)
パセリ 塩 こしょう

作り方

1,サラダ菜は洗って良く水を切り、葉を一枚ずつはがします。
2,リンゴは皮をむき、薄く切ってサラダ菜と混ぜます。
3,シードルから作った酢と生クリームを合わせ、塩こしょうをして刻んだパセリを
  加えてドレッシングにします。
4,食べる直前にドレッシングをかけます。

ノルマンディーは中世において、ノルマンディー公国として栄えました。
この地の人々はヴァイキング(ノルマン人)の血を引いています。
ノルマンディー地方の中心都市ルーアンは、百年戦争でジャンヌ・ダルクが火刑に処せられ
た町として有名です。

[胃に良いポータージュ]

材料

フダンソウ(葉を食用とするアカザ科の一、二年草。根本から卵形の厚くて柔らかい葉を
       密生させる。ほうれん草で代用)
ポロねぎ(デパートや大きなスーパーならあります。日本のネギと違い特有の刺激臭や
      くせがありません)
こしょう クミン 甘口白ワイン

ガルム(これは古代ローマ料理の多くのレシピに登場します。
     はっきりとはわかっていませんが、その製法から魚醤と同じようなものと思われ
     ます。しょっつるや、ナンプラーで代用)

作り方

1,フダンソウは薄切り(ほうれん草はざく切り)にし、ポロねぎは茹でる。
2,1を鍋に入れて、こしょう、クミン、ガルム、甘口白ワイン(少し甘みをつけるため)
  を適量入れる。
3,煮立って沸騰したら出来上がり。
*このレシピに、コンソメスープを加えてみると、かなり飲めるものに近づきます。

実は、これは古代ローマの薬のレシピです。
便通を促すフダンソウと、下痢止めの効果のあるポロねぎが組み合わされていますが
どちらにも良いということでしょうか。
12月は色々と胃腸に負担のかかる事が多いと思いますので、ちょっとメニューに加えて
みました。

[卵料理2種]

A揚げた卵に添えるソース

ガルムにワインを加えたものです。

B半熟卵に添えるソース

こしょう、ラヴィッジ(アジア西南部原産のセリ科の植物。セロリ、パセリで代用)
ひたしておいた松の実をすりつぶし、蜂蜜、酢をふり入れ、ガルムを加えてよく混ぜます。

古代ローマでは食事は卵に始まり、リンゴに終わります。
宴席をケーナと呼びますが、コースの第一のプロムルシスには必ず卵が出されましたし
コースの最後ケーナ・セクンダ、いわばデザートにはリンゴは不可欠でした。
ここから、「初めから終わりまで」という意味で「卵からリンゴまで」という言い方が生まれたのです。
ローマ風にやりたければ、この卵料理からどうぞ。

[クーゲールフップフ(クグロフ)]

材料

強力粉160g+イースト発酵用 ドライイースト 牛乳70cc
砂糖80g バター80g 卵2個 
レモンの皮 レーズン(リンゴを甘く煮たものでもおいしい)
型に塗るためのバター少々 クグロフ型


作り方

1,軽く暖めた牛乳にイーストを振りながら入れて、良く溶かします。
  それに強力粉を加えて良く練り、丸めます。
2,1をオーブンに入れ28度ぐらいで30分ほど熟成させます。
3,ボウルにバター、砂糖、卵を割り入れて泡立て器を使って良く混ぜます。
  ここに、2と強力粉を入れてなめらかになるまで混ぜます。
4,生地に固く絞った濡れ布巾をかけて、発酵して2倍ぐらいになるまで温かい所に
  おきます。(夏はほぼ室温、冬はこたつや湯煎を利用すると良い)
5,4の中にレモンの皮をすりおろしたものと、レーズンを入れます。
6,型(専用の型があります)にバターを塗って、5の生地を入れます。
7,そのまましばらく置いて、2次発酵させふくらんできたら、オーブンで焼き上げます。
8,焼き上がったら、型から出し、粉砂糖をふりかけて出来上がりです。

このお菓子は今ではウィーンの代表的なケーキの一つですが
もとはジャンヌ・ダルクの故郷ロレーヌ地方に近いアルザスのクリスマス菓子です。
焼き型が、昔の僧侶のかぶる僧帽(Gugel)に似ていることから名付けられたと
いわれています。
マリー・アントワネットの好物としても知られています。

[洋梨のパティーナ]

材料

洋梨(水煮にして芯を取り除いたもの)*缶詰でも代用可
A{こしょう クミン 蜂蜜 甘口白ワイン ガルム 油(少量)}

作り方

1,水煮にして芯を取り除いた洋梨に、Aを加えて良くつぶします。
2,そこに卵を加えて、パテ状になるまでさらに混ぜ合わせます。
3,出来上がりに、こしょうをふって供します。

これは現在のパテです。
缶詰を使う場合は蜂蜜の甘みを控えて下さい。

[バラ酒]

材料

バラの花びら 
ワイン 蜂蜜

作り方

1,バラは花びらを摘み、花びらの白い部分は取り除き、じゅずつなぎにする。
  これを出来る限りたくさんワインに入れて、7日間そのままにしておく。
2,7日後にバラを取り出し、同じようにじゅずつなぎにした新しいバラと取り替えて
  また、7日間おく。
3,これを3回繰り返した後に、バラをのぞきワインを濾す。
4,飲むときに蜂蜜を加える。
*同じ方法で。スミレの花を使っても良いです。

古代ローマから中世では、ワインをそのまま飲まずに、蜂蜜やスパイスを入れて
飲んでいました。
保存技術が良くなかったために、ワインは仕込まれてから数週間で飲まれたために
酸味も強く、ドロッとしたものと思われます。
水で割ることも多かったようです。
このバラ酒は古代ローマ時代、市場でも売られていました。