(2014年6月24日付 英フィナンシャル・タイムズ紙)
汚職撲滅を大きな課題に掲げた習近平国家主席〔AFPBB News〕
毛沢東が1966~76年の破壊的な文化大革命に乗り出し、中国の知識人と伝統文化の大部分を一掃してからというもの、学者や中国ウォッチャーは、後々まで尾を引くその時期の影響はどのようなものかと疑問に思ってきた。
国家主席としての1期目が始まって1年余りが経った今、中国の現指導者の習近平氏が答えの最初の部分を提供している。
習氏は文化大革命の騒然とした時代に成人になり、革命を担った自身のエリート一族や自分の知っているものがすべてバラバラに引き裂かれるのを目にした。今度は、習氏が「中国の特徴を持つ社会主義」の時代に地歩を固めた権力と富の馴れ合いのネットワークを破壊する番のように見える。
ここ数週間、習主席の特徴的な政策である公務員の汚職撲滅運動は、より重大なものに発展し、次第に独裁色を強める体制にとって潜在的な波乱要因に波及したように見える。
習氏は汚職撲滅の取り組みの中で、直接自分の配下にない広範囲の個人、一族、派閥、社会的勢力に狙いを定めている。
全面的な政治的粛清の様相
その大半はまだ厳しく統制された中国の国営メディアの行間に隠されているものの、全面的な政治的粛清を暗示する兆候が次々と出てきている。
汚職・腐敗を取り締まる中国当局は先週末、いつものように簡潔な1行の声明の中で、当局が令政策という名前の省の中級役人を「重大な違法行為と共産党規律違反」の疑いで調査していることを明らかにした。
令政策氏が共産党中央統一戦線工作部――非共産党員のエリートに影響を及ぼすよう努めている政府機関――の部長で、かつて胡錦濤前国家主席の右腕だった令計画氏の兄であることを除けば、この発表には何も特別なことはなかった。
このような拘束は偶然ではない。権力構造の中にいる者は誰でも、目に見えない利益供与のつながりがどこにあるのかをはっきり意識しているからだ。特に令計画氏は、一人息子が車に同乗していた2人の裸の女性にも重傷を負わせた2012年のフェラーリ衝突事故で死亡してから、攻撃されやすい立場にあった。