リンパ球

まず、「リンパ」とは
・リンパ(英:lymph)とは、リンパ
 管を流れる液体のことを言い、
 リンパ液と呼ばれることもある。
・一般に淡黄色の漿液性の液
 体であり、性状は血漿に類似
 する。
・成分は血管より漏出した血漿
 成分と、組織の細胞から排出
 された物質を含む。
・リンパ液中の主な細胞成分は
 リンパ球であるが、末梢のリ
 ンパ液にはリンパ球は極め
 て少なく、
リンパ節を経るた
 びにその量は増える。


リンパ管と毛細リンパ管(黄緑色)

血液中(末梢血中)のリンパ球の割合も少ない。
・リンパ球は他の種類の血
 球と同じく、造血幹細胞
 から増殖・分化してくる。
・血液中にある血球の量
 (容積比)は40~45%で
 あるが、その99%以上は
 赤血球である。
・その残りが血小板と白血
 球(リンパ球、単球
 中球、好酸球、好塩基
 )ということになる。
・血液1mm3中の白血球
 の数は3,500~9,000個
 であり、これは状況に応
 じて増減する。
・白血球中に占めるリンパ
 球の割合は30~50%ほ
 どであり、これも状況に
 応じて変化し、健康状態
 が良好であれば35~40
 ぐらいであると言われ
 る。
・新生児~乳児期ではリンパ球の比率は高く、70%程度であるとされる。

末梢血におけるリンパ球と顆粒球の比率は変化する
・自分の体を攻撃してくる癌細胞、細菌などの微生物、ウイルス、あるいはアレルゲンなど、いわゆる
 異物の種類や量に応じて、体はそれらを最も防御しやすいようにリンパ球と顆粒球(好中球、好酸球、
 好塩基球)の比率を変化させる。

リンパ球は、リンパ器官に多量に存在する
・リンパ器官とは、リンパ球の増殖、分化、および機能発現の場となる器官を言う。
・このうち、リンパ球の増殖および分化の場であって抗体産生などの機能発現を行わないものは一次
 リンパ器官と呼ばれ、骨髄が相当する。
 (その他、鳥類には、Bリンパ球の語源でもあるファブリキウス嚢:bursa of Fabricius が存在する。)
・一方、抗原依存性の増殖と抗体産生および免疫反応を行う器官は二次(末梢性)リンパ器官と呼ば
 れ、リンパ節、脾臓、扁桃(舌扁桃、口蓋扁桃、耳管扁桃、咽頭扁桃)、パイエル板(腸管リンパ
 節)、虫垂などが相当する。

リンパ球の概略
・リンパ球(Lymphocyte)は、比較的小さく、直径8~12μmの球形の細胞である。
・大型の丸い核をもち、それに対して細胞質は少ない。
・抗体(免疫グロブリン;後述する)を産生したり、自ら様々な化学物質を出すことによって標的細胞や
 異物を攻撃をするが、特にウイルスなどの小さな異物や腫瘍細胞に対してはこれらのリンパ球が中
 心となって対応する。
・種類としては、Bリンパ球(B細胞)、Tリンパ球(T細胞)、NK細胞などに分けられるが、その外部形
 状から区別することは困難である。
・末梢血中のリンパ球におけるそれぞれの存在割合は、Bリンパ球20~30%Tリンパ球が70~
 80%
を占める。



---<Bリンパ球の各論>--------------------------

骨髄で未熟Bリンパ球、脾臓で成熟Bリンパ球になる
・Bリンパ球は、骨髄中において、造血幹細胞 → リンパ系幹細胞 → プロBリンパ球 → 大型プレBリン
 パ球 → 小型プレBリンパ球 → 未熟Bリンパ球 へと分化する。
・未熟Bリンパ球は血流に乗って脾臓に到達し、そこで成熟Bリンパ球になる。
・細胞表面には、抗原を認識するためのレセプターとして細胞膜結合形のIgMやIgDを装備する。
・このようにしてできあがった成熟Bリンパ球は、血流に乗って二次リンパ器官に到達し、そこで抗原に
 対する反応に備える。
・一部のBリンパ球は、消化管上皮、粘膜組織など、外来抗原との接触頻度の高い組織にも定着する。

Bリンパ球は形質細胞に変化すると、抗体を産生する
・病原体などが体内に侵入した場合、それをマクロファージなどが貪食し、
 抗原(敵であることを識別できる部分)を細胞表面に提示すると、それに
 接触したBリンパ球のうち適合するレセプターを持ったBリンパ球が活性
 化され、形質細胞(プラズマ細胞、plasma cell)へと分化する。
・また、マクロファージなどの抗原提示をヘルパーTリンパ球(ヘルパーT
 細胞 ;(後述する))が受け取ると、ヘルパーTリンパ球は、Bリンパ球を
 刺激するリンフォカインという物質を分泌する。
リンフォカインとはリンパ球が分泌する生理機能を持ったタンパク質の
 総称である。
・リンフォカインによってBリンパ球が活性化されると、その後に同じタイプ
 のものが大量に産生され(クローンの拡大)、それぞれは形質細胞に
 まで分化し、多量の抗体(1細胞あたり1,000万分子以上)を産生して
 放出する。

形質細胞

抗体は血清中にあるから液性免疫
・形質細胞は抗体(免疫グロブリン)を産生するだけの専門性の高い、極度に分化した細胞であり、核
 は少し小さく歪な形になり、そのぶん細胞質が少し多く見える。
・形質細胞は細胞ごとに産生する抗体の種類が決まっており、単一の抗原特異性を示す。
・形質細胞が放出した抗体は血清中にあり、血液や組織液によって運ばれるため、抗体による免疫メ
 カニズムは液性免疫とも呼ばれる。
・抗体とは、特定の分子にとりつく(抗原抗体反応)機能を持った分子であり、その働きによって病原
 体を含む抗原抗体成分は凝集する。また、血液中に存在する補体(免疫反応を媒介する血中タンパ
 ク質の一群で、多くの種類がある)を結合させることによって、オプソニン化(食細胞に貪食されやすく
 なる)、細菌の殺傷(細菌外膜に穴を開ける)、マクロファージ等の化学遊走の誘起などを起こす。
・いったん抗体が産生されると、その情報はメモリーBリンパ球に記憶され、次に同じ抗原が侵入する
 と、すみやかに、それに対応した抗体の産生が開始される。


抗体には、次のような種類がある
IgG
ヒト免疫グロブリンの70~75%を占め、血漿中に
 最も多い抗体
であり、血液、組織液に広く存在
 する。
ウイルス細菌真菌など様々な種類の病原体と
 結合し、血液中に存在する補体を結合させること
 によって、オプソニン化、細菌の殺傷、マクロファー
 ジ等の化学遊走の誘起を起こす。
・また、ヒトの胎盤を通過できる唯一の抗体であり、
 免疫系が確立される生後1週間ぐらいまでの胎児
 を守る。

IgA
ヒト免疫グロブリンの10~15%を占め、血中に2番
 目に多い抗体である。
・血液の他にも、鼻汁、唾液、母乳、腸液などの
 外分泌液に含まれ
ており、粘膜面への微生物
 の侵入を防いでいる。

IgM
ヒト免疫グロブリンの約10%を占める。
・通常は血液中のみに存在し、感染微生物に対して最初に産生される。
・5量体で存在することが多く、補体を結合させる活性も高い。
・赤血球のABO式血液型におけるA抗原やB抗原に対する主な抗体である。
・20週目ほどの胎児が最初に発現する抗体でもある。

IgD
ヒト免疫グロブリンの1%以下である。
・Bリンパ球表面に存在
し、抗原認識、そして抗体産生の誘導に関与する。
・形質細胞になると失われる。

IgE
ヒト免疫グロブリンの0.001%以下と極微量しか存在しないが、アレルギー患者では増加する。
寄生虫に対する免疫反応や、アレルギー、気管支喘息に大きく関与している。
・マスト細胞(肥満細胞)や好塩基球の表面受容体に結合し、そこに更に抗原タンパク質が結合すると、
 細胞内顆粒中に貯蔵されているヒスタミンなど放出する。



---<Tリンパ球の各論>--------------------------

骨髄でTリンパ球前駆細胞(T前駆細胞)、胸腺でTリンパ球になる
・Tリンパ球は、骨髄において、造血幹細胞 →
   リンパ系幹細胞 → Tリンパ球前駆細胞へと分化する。
・Tリンパ球前駆細胞は血流に乗って胸腺に到達し、そこ
 でTリンパ球になる。

・名前の「T」は胸腺 (thymus) に由来する。
・胸腺の皮質には未熟なTリンパ球前駆細胞が多く存在し、
 胸腺の髄質には成熟したTリンパ球が存在する。

適切に働くTリンパ球のみが選ばれる
・骨髄から胸腺に到達したTリンパ球前駆細胞のうち、その
 9割以上は除去されると言われている。
・自分の体を構成している自己成分を認識できなかったり、
 あるいは自己成分に強く反応してしまう細胞が除去され
 る。
・すなわち、自己防衛にとって適切に働くTリンパ球のみが選ばれるわけであり、一般に「Tリンパ
 球の教育」とよばれる。
・この教育は、個体が成熟するまでに完了する。
・ヒトの場合、胸腺の中にTリンパ球が最も多く存在するのは10歳代前半であり、ピーク時の胸腺の重さ
 は30~40gである。
・胸腺を経たTリンパ球はやがて種々のリンパ器官に運ばれていく。
・胸腺はその後は急速に萎縮して脂肪組織に置き換わり、それまでに選ばれたTリンパ球のみが骨髄
 において増産される。
・細胞の表面には、Tリンパ球に特徴的なT細胞受容体(T cell receptor ;TCR)を備えている。
・TCRにはαβ型とγδ型の2種類があり、大部分のTリンパ球はαβ型(=αβT細胞)である。
 (αβ型とは、糖タンパク質でできたα鎖とβ鎖がジスルフィド結合(S-S)によって結合した二量体、
  すなわちαβ鎖をもつ型であり、γδ型とはγ鎖とδ鎖が結合したγδ鎖をもつ型である。これらは
  抗体のL鎖によく似ており、定常部(constant region=C領域)と、抗原に直接結合する可変部
  (variable region=V領域)から成り立っている。本来少ないγδ型Tリンパ球の存在場所は比較
  的限局しており(皮膚、舌の上皮、腸管上皮、子宮など)、胸腺や二次リンパ組織には少数
  しか存在しない。)


Tリンパ球にはいくつかの種類がある
①ヘルパーTリンパ球(ヘルパーT細胞、Th)は
 各種のリンフォカインを放出する

・ヘルパーTリンパ球は、マクロファージなどから抗原提示があると、インターロイキンやインターフェロン
 などの各種のリンフォカインを放出し、主に他のリンパ球にそれぞれの役割を果たすように刺激を与え
 る。(インターロイキン(Interleukin、ILと略される)とは、白血球(leukocyte) から分泌されるもので、
 細胞間(inter-)のコミュニケーションの役割を担う物質の総称である。)
・細胞の表面にCD4と名付けられた分子を持っているので、CD4陽性Tリンパ球とも呼ばれる。
・このCD4陽性Tリンパ球はヒト免疫不全ウイルス(HIV) や、ヒトT細胞白血病ウイルス (HTLV-1) が感染
 する細胞である。
・このヘルパーTリンパ球は、その産生するリンフォカインの種類によって、さらに次のように分類されて
 いる。
 Th1・・・・IL-2(インターロイキン2)、IFN-γ(インターフェロンγ)、TNFα(腫瘍壊死因子)などを産生
      する。これらよって、Tリンパ球の増殖や分化、マクロファージ、NK細胞、細胞傷害性Tリンパ
      球が活性化される。(どちらかというと細胞性免疫を増強、またはコントロールする。)
 Th2・・・・IL-4、IL-5、IL-13などを産生する。これによって、主にBリンパ球の増殖・分化や抗体産生が
      促され、マクロファージからの炎症性サイトカインの産生が促進される。(すなわち、液性免疫
      やアレルギー反応を増強、またはコントロールする。)
 Th17・・・・IL-17などを産生する。これによって、炎症が促進される。また、自己免疫疾患との関わりが
      報告されている。
 (TReg・・・・レギュラトリーTリンパ球 : 後述する)


②細胞傷害性Tリンパ球(キラーT細胞、Tc、あるいはCTL)は
 標的細胞の自滅を誘う

・かつてはキラーT細胞と呼ばれたが、今では細胞傷害性T細胞(cytotoxic T lymphocyte)と呼ばれ、
 略号としてはTc、あるいはCTLが用いられる。
・宿主にとって異物となる細胞(癌細胞、移植細胞、ウイルス感染細胞など)を認識して消滅させる。
・細胞に傷害を与えるメカニズムは次
 のようである。
 a.CTLは、パーフォリン(perforin)、
  およびグランザイム(granzyme)と
  呼ばれるタンパク質を分泌する。
 b.パーフォリンは異物となる細胞の
  細胞膜でリング状の重合体(poly
  perforin)を形成することで、細胞
  膜に孔を開ける。(CTL自身はパ
  ーフォリンが効かないような機構
  を備えている。)
 c.すると、グランザイムがこの孔か
  ら異物細胞内に侵入する。
 d.グランザイムは標的とする細胞に
  アポトーシス(能動的な細胞死、す
  なわち細胞の自殺)を誘起すること
  によって、その細胞を消滅させる。
・細胞の表面にCD8と名付けられた
 分子を持っており、CD8陽性Tリンパ
 球とも呼ばれる。

細胞膜に穴を開けられた標的細胞(上)
と細胞傷害性Tリンパ球(CTL)(下)
・CTLの一部はメモリーTリンパ球となって、異物に対する細胞傷害活性を持ったまま体内に保存され、
 同じ抗原が再び現れた時に短時間で増殖する。

③その他のTリンパ球
・上記の他に、その細胞表面にD4、CD25、およびFoxp3といわれる分子を発現するTリンパ球の存在が
 言われており、これは他のTリンパ球の活性を抑制するというので、レギュラトリーTリンパ球制御
 性T細胞)と呼ばれている。(かつてはサプレッサーTリンパ球と呼ばれた時期があった。)
 レギュラトリーTリンパ球が、例えば癌細胞の周囲を取り囲んでしまうと、細胞傷害性Tリンパ球が攻撃
 できなくなり、癌細胞は増殖を続けるという構図になる。
・その他、CD8陽性T細胞から分化するレギュラトリーTリンパ球、胸腺を介さずに分化成熟する末梢性
 Tリンパ球、NK細胞とTリンパ球の性質を併せ持つNKTリンパ球などの存在が言われている。



---<ナチュラルキラー細胞の各論>-------------------

ナチュラルキラー(NK)細胞は即戦力
・形態的には他のリンパ球と比較すると大形であり、細胞内に顆粒を有し、顆粒の中にはパーフォリン
 やグランザイムなどを含んでいる。
・このような形態は、上記の細胞傷害性Tリ
 ンパ球が活性型になったときに似ており、
 常に細胞傷害活性を持っている。
・しかし、T細胞受容体(TCR)やT細胞普遍
 的マーカーであるCD3を持っていないため
 に、Tリンパ球には分類されない。
・生まれつき(natural)の細胞傷害性細胞
 (killer cell)という意味で名付けられた。
・脾臓や末梢血中に比較的多く存在する。
・特に癌細胞やウイルス感染細胞を除去する
 場合に威力を発揮しており、いわゆる自然
 免疫の主因として機能しているリンパ球で
 ある。
・どのようにして敵か味方かを認識するのか
 については、NK細胞は、特有の糖鎖を表
 面に有する細胞や、細胞表面にMHCクラ
 スI分子を失った細胞を、標的にして傷害
 するとされている(右図参照)。
 (MHC(major histocompatibility complex;
 主要組織適合遺伝子複合体)クラスI分子
 とは、ほとんどすべての有核細胞と血小板
 の細胞表面に存在する糖タンパク質であり、
 内因性抗原を抗原提示する働きをもって
 いる。)

(a):NKは非活性(味方であると判断している場合)
(b):NKは活性化(敵であると判断している場合)

<関連リンク>
 赤球の起源  赤血球  顆粒球(好酸球、好中球、好塩基球)
 単球・マクロファージ  血小板
  2012年11月  stnv基礎医学研究室・清水隆文

stnv基礎医学研究室 stnv.net/med/
stnv.net(ノーフレーム版) stnv.net/jp/(フレーム版)