安倍首相のインタビュー詳報-成長戦略、カジノ、デフレ脱却
6月25日(ブルームバーグ):安倍晋三首相は24日のブルームバーグ・ニュースのインタビューで、成長戦略、カジノを含む特定複合観光施設(IR)、デフレ脱却などについて次のように語った。
-成長戦略の経済的な効果について。
「この1年間でさまざまな大改革が着実に進んでいる。約60年間、独占が続いてきた電力小売り市場の完全自由化を決めた。40年以上続いてきた、いわゆる減反を廃止することを決定した。社外取締役選任等のコーポレートガバナンス強化のための法律は成立した。1兆円規模の設備投資減税や法人実効税率の引き下げについて方向性を決めることができた」
「私の改革には終わりはない。安倍政権は新たなチャレンジに向かって進んでいく」
「60年ぶりの農協改革を行う。患者本位の新たな保険外併用療養制度を創設する。時間ではなく成果で評価される働き方、新たな労働時間制度の創設、さらには外国人材が日本で活躍できる環境の整備などに取り組んでいく」
「安倍政権の成長戦略の特徴は実行とスピード。スピード感を持って次々と実行していく考えだ」
-アベノミクスを生かした高い成長率の達成について。
「人口は減少していくが、女性の力は潜在力として存在している。それを引き出すための政策を今、次々と打ち出していて、その成果として新たな女性の労働力の参加が実現をしている。さらに待機児童を解消していくなどの政策を進めていくことによって、女性の参加が見込まれると思うし、高齢者の方々にも経験や技能を生かしてもらいたい」
「イノベーションをさらに進めていく。その中にはロボットの活用と新たなそうしたイノベーションの分野に力を入れたい。そうした中において成長力を高めていきたい」
-労働市場改革について。
「時間ではなくて成果で評価するようにという新たな仕組みを作っていく。同時にワークライフバランスをより実現していくために女性や、両親の介護が必要になっている方々が働きやすい、そういういわば仕組みも実現をしていきたい」
「本来であれば仕事をあきらめなければいけない人たちがその能力を生かせる、そういう柔軟な仕組みをこれから構築していきたい。同時にこれは海外の外国人材、優秀な方々に日本に来て、その能力を生かしてもらえるような環境を作っていきたい」
-カジノを含む特定複合観光施設(IR)について。
「2020年の東京五輪・パラリンピックを追い風として訪日外国人旅行者数の倍増、2000万人を目指した取り組みを今、進めている」
「いわゆるIR推進法案が昨年、議員立法により国会に提出をされているが、既に審議がスタートした。次の臨時国会で、これは議員立法だが、成立を目指しているところだ」
「私も5月30日にシンガポールにおいてIRが実際に大きな成功を収めている姿を視察した。IRは観光振興や地域振興、産業振興に資することが大いに私は期待されると思った。日本の成長戦略の大きな目玉の一つになり得ると認識をしてる」
「シンガポールにおいてもそうだが、青少年の健全育成、あるいは依存症、犯罪防止等の観点からも対策が練られているが、当然、そうしたこともしっかりと検討を進めていく中において、日本の成長戦略の一つとして考えていきたいと思うし、日本再興戦略の中にもIRについてしっかりと書き込んでいる」
-株価について。
「株価の水準については総理大臣としてお答えをしない方がいいが、経済再生には企業が稼ぐ力をつけていく必要がある。これによって日本経済がデフレ下で失われていた力強さを取り戻していくことができれば、マーケットにも評価されるだろう」
「日本企業の収益性を向上させ、それを賃金の上昇や設備投資、配当につなげていくためにはイノベーションとコーポレートガバナンスが大変重要だ。生産性向上につながる設備投資や、研究開発投資を促すための税制、あるいは電力小売りの完全自由化などの規制改革や産業の新陳代謝とベンチャー創業の加速化、こうしたイノベーションを力強く後押しをしていく考えだ」
「コーポレートガバナンスについては昨年、スチュワードシップコードを策定し、すでにGPIFを含む127の機関投資家等が受け入れを表明している。今後、上場企業向けのコーポレートガバナンスコードも策定する。これによってコーポレートガバナンスを強化し、グローバル競争に勝ち抜いていくための攻めの経営判断を力強く後押しをしていく考えだ」
-この1年半を振り返って一番大きな乗り越えた壁は。
「まずデフレ脱却が安倍政権の大きなテーマであったわけだが、大胆な金融政策、機動的な財政政策と成長戦略によって現在デフレではないという状況に至ることができた」
「4月に財政健全化を進めていくため、消費税を8%に、3%引き上げた。デフレ脱却、そして財政の健全化、この二つを同時に達成していく、この道しかないわけだが、4月を乗り切っていく中においてデフレ脱却に赤信号がともらないようにするということが、大変これは難しい経済運営であったが、それはなんとか乗り越えることができたと思っている」
「2%の物価安定目標を掲げている。その方向に向かってデフレ脱却、そして経済をしっかりと成長させていきたい。その中において財政の健全化も図っていきたい」
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更新日時: 2014/06/25 08:08 JST