スカーレット・ヨハンソンさんが出演したイスラエルの飲料関連メーカーのコマーシャル。
スカーレット・ヨハンソンさん
「私の本当の仕事は世界を救うことです。」
出演直後から、多くの批判が寄せられました。
“世界を救うためには、もっとできることがあっただろう。”
“NGOのメンバーなのにイスラエル企業の広告塔を務めるなんて、偽善だ。”
このメーカーが、イスラエルが占領するヨルダン川西岸で操業しているからでした。
「ボイコット、イスラエル!」
今、イスラエルからの製品、とりわけ占領地で生産された商品を標的にした不買運動・ボイコットがヨーロッパを中心に広がりを見せています。
辻支局長
「イスラエル企業が参加する会議場の前では、イスラエル製品のボイコットを呼びかける運動が行われています。」
ボイコットの動きは、一般市民の間にも広がっています。
パリのスーパーマーケットでは野菜の産地が明記されており、消費者が選択することができます。
市民
「イスラエルの製品は買いません。
イスラエルの人々に問題があるというのではありませんが、政府の占領政策に反対の意志を示すためです。」
背景には、国際社会の批判を無視するイスラエルの占領政策があります。
イスラエルは、第3次中東戦争以降、パレスチナ人が多く住む東エルサレムとヨルダン川西岸、それにガザ地区を占領。
その後、1993年のイスラエルとの合意を受けてパレスチナの暫定自治区ができましたが、その範囲は限られています。
イスラエルは国連安保理で占領政策をやめるよう決議されたにも関わらず、今もヨルダン川西岸などにユダヤ人の移住を促す政策を続け、占領の既成事実化を進めています。
占領政策に反対するボイコットの動きは、占領地に住むユダヤ人に打撃を与えています。
この男性は、政府の支援を得て、ヨルダン川西岸で、ピーマンやパプリカを生産しています。
ところが、去年(2013年)、EU=ヨーロッパ連合は、占領地のヨルダン川西岸で生産された農産物を、イスラエルとの間で決めた税制優遇の対象から外すと決定しました。
男性が生産する農産物はヨーロッパ市場での競争力を失い、売り上げは20%近く減ったと言います。
ユダヤ人の農家
「こんなに打撃を受けると思いませんでした。
このままでは農業を続けていけるかどうかわかりません。」
スカーレット・ヨハンソンさんのコマーシャルで批判を受けた飲料関連メーカーも、ボイコット運動の対象となったことなどで、株価に影響が出ました。
メーカー側は、工場ではパレスチナ人もユダヤ人と同様に雇用しているとして、正当性を主張。
占領地での操業をやめれば、パレスチナ人の雇用が失われるだけだと反論しています。
イスラエルの飲料関連メーカーCEO
「工場を閉鎖してパレスチナ人労働者500人を解雇すれば、彼らは職を失い家族は路頭に迷います。
どうして雇用を与えている場が和平の障害になるというのか。
それどころか雇用によって双方は結びつけられています。」
ボイコット運動が高まる一方で、イスラエル政府は、あくまで占領政策を推し進める姿勢を変えていません。
ヨルダン川西岸で農業を営むパレスチナ人のハッサン・ジャルミさん。
今年(2014年)2月、栽培しているナツメヤシおよそ120本を突然、イスラエル軍のブルドーザーによって引き抜かれました。
イスラエル軍は、理由を「安全保障のため」としか告げず、占領下で暮らすジャルミさんは泣き寝入りするしかありませんでした。
パレスチナ人の農家 ハッサン・ジャルミさん
「息子を育てるように大切に育ててきたんです。
家族を養う大切なナツメヤシでした。
結局イスラエルは我々を追い出すまで占領政策を止めないでしょう。」
国際的な広がりを見せるイスラエルに対するボイコット運動。
占領政策への対抗手段として、どこまで効果を発揮するのか、大きな注目が集まっています。